Nicotto Town


ドリーム・バー 「デスシャドウ」


春谷探偵物語 第1巻「序章~始まりは殺人~」30


 「警部さん、チョットいいですか?」
 二人の話を聞いていた春田が声を掛ける。
 「さっき、太田 陽子が第二発見者だっておっしゃってましたけど、第一発見者は誰なんですか?」
 「第一発見者は、京都市内から来た大学生です。で、彼女らが害者を発見する時、ちょっとしたトラブルがありましてね・・・。」
 「彼女ら? トラブル?」
 春田は突っ込んで聞く。
 「ははは、なかなか鋭いですね・・・・。 実は太田 陽子は一人旅ではなく、友達と一緒だったんです。 ええっと、あったあった。」
 酒井は記録紙をめくりながら話す。
 「ええっと彼女は、東京に在住しているフリーのカメラマンと一緒に旅行してたんですよ。それで、天橋立横にある文殊堂へ参拝に行った所、奥の方から叫び声が聞こえたそうです。で、そこへ向かってみると先程の大学生、つまり第一発見者が倒れていた。彼女を介抱している内に、近くに黒い固まりがあるのに気が付いて、近寄って見た所、害者が倒れていた訳です。」
 「女性は大村さんを見て気絶していた訳ですか・・・。」
 「そうです。」
 「その女性は、大村さん以外に何かを見たんじゃないですか?」
 「ホントに貴方はスルドイ人ですね・・・。 谷本君より、よっぽど探偵の素質がありそうだ・・・。 」
  「いやいや。僕は疑問に思った事を率直に伺っただけですよ。 しかも、彼みたいに取り乱してもいませんし・・・。」
 彼は頭を掻きながら言った。
 「まだ、調査中なんで何とも言いようがありませんが・・・。谷本君の話を聞いてると、天橋立駅に到着した直後に害者は殺害されている様な感じですね。」
 酒井は昼間に話を聞いた太田の記録を確認しながら二人に話す。
 「彼女らが天橋立に到着したのが13時26分だそうですから、尾行して同じ列車に乗っていたとすれば、同一時刻に到着している筈ですね。 で、死亡推定時刻が先程もお話しした通り13時半前後と推測されますから・・・。発見時刻は14時過ぎです。」
 「って事は約6分間の犯行で、発見まで三十分近くもある訳ですか・・・。」
 春田は呟いた。
 「駅から現場まで徒歩数分は掛かりますから、犯行時間としては2~3分だったと思います。」
 「2、3分!」
 今度は谷本が声を荒げる。
 「先生って、合気道とか柔術系の有段者ですよ。そんな人がわずか数分で殺されるって ・・・。」
 「まあ、仮に有段者だったとしても、御高齢ですからね。 しかも、数分の犯行にも関わらず、一撃で急所を狙っている。 犯人は相当手慣れた人物だと思って良いでしょうね。」
 「警部さんは犯行のプロだと仰るんですか?」
 春田は再び聞く。
 「恐らく・・・。 ひょっとしたら海外での戦争、もしくは戦闘経験がある人物でしょうかね・・・。 でないと、説明が付きません。」
 酒井は溜息をつきながら答える。
 「今の天橋立はシーズン中なんですが、事故防止の為に警らしている職員でさえも気づかなかった訳ですからね。
 しかも、分からない点が一つあるんですよ。」
 「・・・? 何ですか?」
 「谷本君の話を聞いてると、害者、つまり大村さんは発見者でもある太田 陽子を追って高知から岡山、天橋立に来たんですよね?」
 「そうです。」
 「そこまで尾行しておいて、天橋立で急に彼女から離れている。 まるで、何かに導かれる様に裏道に入ってる訳です。」
 「あっ・・・!」
 谷本はハッとして我に返る。
 「太田 陽子以外の重要な物を見つけてしまった。だから、尾行を取りやめ裏道へ入った?」
 「で、春田君の先程の疑問。第一発見者である大学生が何かを目撃したんじゃないかって事でしたよね?」
 「ええ・・・。」
 「現場は地元の人でも滅多に通らない場所でして、人の住んでない廃屋が並んでいる場所なんですよ。そこを一観光客でもある彼女・・・。 ああ、第一発見者は女性でして・・・。 で、彼女がそこを通るか? って事に気が付きましてね。
 彼女は廃屋マニアだそうで、ボロボロの廃屋とか廃工場とかの写真を撮影するのが趣味だそうです。」
 「ああ、いるんですよね、そういう人って。僕も写真が趣味ですけど、聞いた事ありますよ。」
 谷本は思いだした様に言った。

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2010/12/17 22:07
 連続して続きを掲載しました。 チョットここは重要な場面なんで・・・。



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