Nicotto Town



内心で俺は叫びを上げた

`ツ科学的にこの時代の最先端のものは手に入れた。後はここのコーチ達からの評価はもうばっさりと切り捨ててしまおう。多少は扱いにくいと思われようが、小学三年生に嫌みをぶつけているのがここまであからさまだと、俺が反抗してもそれほど悪影響はないはずだ。希望的観測も入っているが「生意気な小僧」ぐらいで済んでくれるはずだ。
 そう脳内計算すると席を立ち、堂々と抗議する。

「そうです俺たちがカルロスに勝った事、それこそ反証になるでしょう。サッカーは身体能力も重要ですが、むしろ俺達の年代ならばゴールデンエイジと呼ばれる期間に、しっかりとした技術を身につけるべきじゃないですか?」

 俺の袖を引っ張り「もう止めろ」と山下先輩が小声で制止してくる。
 だが、ここまで俺がむきになるのにも理由はある。俺は技術を伸ばして世界で勝負しようと予定を立てているのだ。
 なにしろやり直したとはいえ俺の体のアスリート的な伸びしろは多くない。前回のこの時点よりはるかにましになったが、成長した時に単純な身体能力では海外の選手――もちろん比較対象はトップクラスの選手である――よりも分が悪いのは判りきっている。
 だから「身体能力が技術なんかよりずっと大事」と言われると反発せざるえないのだ。でないと技術を頼りに世界一を目指す俺の存在理由が揺らいでしまう。
 そんな事はもちろん露とも知らないコーチは馬鹿にしたように唇を歪めた。

「テクニックが優れていれば身体能力はどうでもいいのかね? バカバカしい。昔から華麗な勝利にこだわるオランダ代表や、無敵艦隊なんて気取っているスペイン代表のヨーロッパの古豪を見てみろ。変にテクニックや見栄えやプライドにしがみつくから国際的な競争力が落ちていく一方だ。このままだとあの両国がワールドカップで優勝するより先に、フィジカルに優越したアフリカ大陸の代表がトロフィーを掲げているだろう」

 ――それは違うぞ! 内心で俺は叫びを上げた。一番最近のワールドカップでは例に挙げた二カ国が決勝で戦い、見事に無敵艦隊が世界王者になったのだから。この先の歴史を知っていればいるほど突っ込みどころの多いコーチの台詞だった。
 だが同時にそれをこの場で発言しても無駄な事は判っていた。証拠も無しで未来の優勝国を予言するなんて子供の戯れ言でしかない。ましてや、このコーチはフィジカルが重要だと考えているのと同じぐらい俺を論破するのに執心している。俺の言葉が間違っているから正したいのではない、カルロスを排除した奴の意見だから間違っているに違いないと決めつけているのだ。

 そしてコーチの鬱憤に火に油を注ぐが如く、俺が抗議をしてしまったのだ。まともな議論になるはずがない。
 俺は選択をミスしたんだろう。ここでフィジカルコーチに喧嘩を売っても何にもならない、大人らしくスルーすべきだったんだ。それぐらいは判っていた、でも……我慢できなかったんだ。
 ここで黙っていたら俺の目指すプレイスタイルが世界で本当に通用しなくなるんじゃないかって、そんな焦りか恐怖にも似た感情が反発を止められなかった。
 やり直した俺が持ち越してきた技術や経験はこれから年を経るごとに、どんどんアドバンテージを失っていくだろう。そうなると俺が否定したはずの身体能力に優れたプレイヤーに追い越されるかもしれない。

 だから俺は技術と経験、そして頭脳を鍛えれば圧倒的なフィジカルを持つ天才達と渡り合えると信じて短い期間とはいえ代表候補まで昇って来たのだ。
 これで「やっぱりどんなに技術を持っていても、天性の素質を持つアスリート系の選手にはかなわない」なんて認められる訳がない。
 同様にこのコーチも俺を認 




Copyright © 2024 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.