Nicotto Town



神託だのなんだのがえらく

選ばれたことを、幸運と思うべきだ。母神に見初められたからこそ、そなたは大地に守られ、王として君臨している」

「いいや、違う。おれが出雲の武王でいるのは、おれ自身の力のためだ」

 大巫女の顔を見据えて、大国主は冷笑した。

「百歩譲って、あなたたちが崇めるものの存在を認めたとしても、そいつの正体は、母神やら女神やら、崇高な名がついているだけの化け物だ。少なくとも、そいつには王者の器がない。あなたが過去としきたりを信じてその化け物に従おうが、同じように従う気は、おれにはさらさら起きない」

 軽く息を吸い、吐き――。大国主は、話を続けた。

「つじつまが合わないと、ふしぎに思うことがある。なぜ、その神事のたびに女が死ぬ必要があるんだ?」

「女には、子を産む力があるから――」
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「それは知っている。神野では古来、女子供が贄にふさわしいとされていたという話だろう? 神事を取り仕切る巫女の女が、贄の女を、女の神に捧げるのかと、子供心にもおぞましいと呆れた覚えがある。母神という女に踊らされるのは、巫女連中が上役の女に媚びへつらうのと同じで、女の集まりによくある奇妙な呪縛の一種と同じ。見ようによっては女同士の共喰いだ。おれにはさっぱり理解できん。――いや、おれがいいたいのはこのことではない。神野の教えでは、贄にふさわしいのは女と子供だろうが? 大神事で捧げられるのがなぜ女で、子供ではないのだ」
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「母神が、男王のそばにいる女を欲するから――」

「そうだ。女子供が生きる力に溢れているからというのは建前で、大神事で女を捧げる理由は、つまりそれだろう? 男王に惚れて、そのそばにいる女に嫉妬するからと、そう聞いた。しかし、なぜそうなんだ? 遠回りじゃないか。それほど男王に惚れたなら、なぜその化け物は男を贄に欲しないんだ。そいつ本人を殺して連れていけばいいのに」

「母神は、男王の安泰を望むからだ。男王は出雲を守り、ひいては母神も守るから――」

「それで、嫉妬に狂う? 急場しのぎの快楽だけを貪る、なんとも浅はかな女だ」

 大国主の笑顔は、しだいに薄暗い影を帯びていく。

 それを見つめて、大巫女は化粧に彩られた目を細めた。

「――なにがいいたい? さっぱりわからないのだが」
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 尋ねられると、大国主は少し背中を丸めてあぐらをかいた片膝に頬杖をつき、まばたきをほとんどしない大巫女の目を見つめた。

「では、ここに来たわけを率直にいう。狭霧から、形代の役をおれが代わりたい」

「なんと――」

「神託だのなんだのがえらく人じみていたから、これまでおれは、おまえたちの頭が思いつく程度の、いもしない崇高な女をつくりあげて、さも存在するかのように演じているのではと思っていた。だが、そうではなく、化け物がいることはおれも認めよう。しかし、たとえ神と呼ばれはしても、これまでのおこないを見ていたら、そいつは化け物と呼んでやるにも浅ましい、ただの愚かな女だ。形代の順序が高比古との近さによって決まると聞いたが――それも、どれもこれもが女々しく、馬鹿馬鹿しい。おれにいわせれば、死の神を名乗るなら、形代がどれだけいようが、順序など付けずにすべてもっていけばいいのだ。死とは、順序などなくなにより平等に訪れるものだ。そうではないのか」

 少し身を乗り出して顔を近づけ、大国主はにやりと笑った。

「嫉妬に狂った女を慰めるのに、そいつの勝手をすんなり聞いて、女々しく小手先のことばかり続けているから、百年も二百年も妙なことが続くのだ。おれが、その女のもとに出向いてやる。それで、永遠に夫になってやる。それでよかろう?」



10章、黒穢の誓い (3)

 狭霧と高




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