Nicotto Town



を噛み潰した

上がっていく。高比古の目の高さが少しずつ上がっていく間、盛耶のぎらついた目は、一瞬たりとも高比古から外れない。敵の動きを見逃すまいと、相手を威圧するようだった。

 高比古が立ち上がり、二人の目の高さに差がなくなると、盛耶は、高比古の身なりをじろじろと見る。黄色の染め紐で飾られた沓(くつ)や、飾り気のない白の服、腰に佩いた剣に、出雲風の髪飾りをつけた黒髪。とくに耳のあたりへ視線の先がいきつくと、盛耶は雄叫びをあげるようにいった。

「出雲風の角髪(みづら)か――。よく化けたもんだ。誰だって、髪さえそれっぽく結えば出雲の民に見えるってわけか?」

 いい方は、喧嘩を吹っ掛けるようだった。

「雑草のかたわらとは……えらく貧相なところで女を口説くんだな。貧しい場所が好きなのか?」

 様子を窺うように、高比古は黙っていた。しかし、盛耶の唇が閉じると、尋ねた。

「あんたは誰だ?」

 いい方こそ静かだが、高比古の目は喧嘩を買っていた。<a href="http://www.1dsai.com" title="http://www.1dsai.com">http://www.1dsai.com</a>


 ふん、と盛耶は鼻で笑った。

「口のきき方に気をつけろ。父も母も知れぬ流浪の民が」

 盛耶の態度は横柄だったが、高比古も、どちらかといえば好戦的な方だ。高比古に、退く気配はまるでなかった。
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「それで? あんたはいったい誰だ?」

 盛耶は頬を引きつらせつつ、もう一度鼻で笑った。

「――親父殿がおまえを呼んでいた。話があるそうだ」

「親父殿……大国主が?」

 高比古は、不審げに目を細めた。

「なぜ、あんたがおれを呼びにくる? 話したのは今が初めてのはずだろう?」

「……やっぱり。俺のことを知ってやがったな?」

 盛耶の形相が変わった。

「やっぱり――俺を大国主の御子の盛耶だと知った上でとぼけて、無視してやがったな?」

 高比古に、悪びれる様子はなかった。彼は冷めた口調で応えた。

「興味の湧かない奴に、話しかける趣味はない」

「興味だと? 笑わせやがる――!」

 二人のいい合いを目の前で聞きながら、狭霧は、不安で胸をどきどきと鳴らせた。二人の喧嘩じみたやり取りがなぜ始まったのかはわからない。でも、狭霧には、突然やってきた盛耶が、妙ないいがかりをつけ始めたとしか思えなかった。

 盛耶は高比古を毛嫌いしているらしい。ただ、高比古が出雲の生まれではないというだけの理由で――。

(なによ、悪いのはあなたのくせに)

 狭霧はとうとう、高比古を庇って二人の間に入った。

「あなたね、いい加減にしなさいよ。さっきから聞いていれば、意味のわからないわがままばかりいって! 今のは絶対にあなたが悪いわ。高比古に謝って。そうじゃないと……」

 でも、それは高比古に阻まれる。高比古は、傍らで前のめりになる狭霧へ冷たい目配せを送った。

「あんたの出る幕じゃない。黙ってろ」

「え……」

 高比古の味方につこうとしたのに、まさかその本人から拒まれるなんて。

(何か間違えた?)

 狭霧の勢いは、見る見るうちに消えていく。

 狭霧と高比古のやり取りを、盛耶は訝しげに見ていた。それから、大声をあげて笑い始めた。

「おまえはわかってる。わかってるんだな? 俺を――!」

 にたりと奇妙な笑みを浮かべて盛耶が向いたのは、やはり高比古のほうだった。

「わかった。おまえがそう出るなら、俺も出る。今のは、おまえからの宣戦布告と受け取ったぞ?」

「……好きにしろ」

 高比古は、苦虫を噛み潰したような渋面をしている。

「――だいたい、おれがどうこうはおれも知りようがないが、あんたの負けは見えていると思うが? おれは大国主と同じ意見だ。許しもなく諏訪を出て、こんなところまで追ってくるな 




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