稲わらの家
- カテゴリ:日記
- 2009/09/28 20:17:30
小学校の中学年くらいだっただろう。
裏の田んぼに稲刈りの終わったあとの稲わらが、それは交互にきれいな形で積まれているものだった。
学校から帰ると、悪ガキ数人と連れだってこの稲わらの中央部分を掘り進んで、どんどん引き抜いた稲わらを上へと重ねていき、真ん中を空洞にするのだった。
稲でできたかまくらのようなものだ。
悪ガキ連中だから、やることはろくでもないことばかり。
酒を飲んでみたり、タバコを覚えたのも、もう少し高学年になった頃に、この稲わらの家で覚えたのだ。
大人たちが、落ち穂に群がる雀を、カスミ網でとらえたりするのを手伝ったりすると、ガキ連中の特権化したこの家で潜り込んで、ちょっと飲み食いするような小遣いをもらったりもした。
雀を追い込むのに、そろりと回り込んでカスミ網のほうへと追い立てるのはおもしろかった。
稲刈りの終わった田は、ワンダーランドだった。
用水を干して、魚をバケツに何杯も捕ったり、イナゴをとらえたりした。
小鳥を追いかけて、川を渡り山に入って、帰り道が判らなくなって、ヤブを転げ落ちるように道路へ出たときには、顔を見合わせて泣きじゃくったりした。
時々、子供の頃の夢を見る。
良い思い出と言って取り立てたものはないのだが、健康だったのが救いだったのだろうか。
中学一年の終わりに、手術のミスで血管を切られて10時間ほど血を吐いて以来、健康には恵まれなくなった。