Nicotto Town


雪うさぎが呟く


習性(自嘲をこめて)

その女は、専業主婦と言われる存在だった。いえのなかやそと

を掃除し、洗濯機が洗った下着や服を干してから、片付ける。子供の学校行事、地域の自治会、夫がしない雑事はすべて、その女の仕事だった。

一番大変なのは炊事だ。家族のために、特に子供の為に、身体に良いもの、おいしいもの、栄養価の高いもの…家計簿と相談しながら毎日キッチンにたつ。

食べ散らかした後を片付け、またいつでも調理に取りかかれるようにきれいにするまで、本当に長い時間を台所で過ごしてきた。

そして、何年過ぎたのか、ある日突然、目の前が真っ暗になった。持っていた鍋が手を離れ、大きな音を立てて転がったのが意識の最後だった。

………


ふっと意識が戻った。身体に力が入らない、妙に身体を薄っぺらく感じる。どうしたのだろうとぼんやり考えたが、急に気がついた。子供の声がしている、何か食べさせてやらないと。

女は急いで声のする方へ出て行った。愛する子供はやけに大きく立ちはだかって見えた。
と、急に息が詰まるようなきつい臭いのする霧が降ってきた。

動けない、また目の前が暗くなる。苦しい…手足が痙攣を始めた。おかあさんよ、ねえ、おかあさんがわからないの?!

お父さん!と子供が呼びかけた。ほらみて、大きなゴキブリだよ!




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