Nicotto Town


るもりゅう の 大好きな 仲間たち


釣り


今年は松島湾のハゼ釣りが不漁らしい。
宮城県の正月の雑煮の出汁は焼きハゼで作るので、仙台近郊の釣り師は思い思いにハゼ釣りに出かけていくのだが、近年はぼやきばかりが聞こえるようである。

釣りに出かけることもなくなって十年以上過ぎてしまった。
朝に紅顔夕べに白骨というほどの変わりようかもしれぬ。
叶うなら好きな釣り場の牡鹿半島ででも老後を過ごしたいとさえ思ったのだが、連続しての入退院を考えると、満足できる病院がある地域に近くと願わざるを得ないのは悲しい。

止めてしまったタバコ同様に、不意に鼻先を磯の香りがかすめていくときがある。
丁度11月末というのは養殖の牡蠣の最盛期で、長く張った牡蠣棚を漁船が巻き上げるときに、牡蠣貝に付着していたムール貝が海の中に砕け落ちて、絶好の撒き餌になっているのだ。
これを狙って、さまざまな魚が集まってくる。

湾の中なので、割りに小さな魚が多いのは否めない。
最も多いのはチビメバルたちだ。
それでも20cm超えるものもあがるので、馬鹿にはできない。
砂糖醤油で煮付けると非常に美味である。
25cm位になると刺身でもいける。

フグにも匹敵するのはカワハギだが、これは非常に目の良い魚なので、釣り糸を細くして小さな針で狙うのだ。
もっとも釣れるのは、ほとんどカワハギの代用品のウマヅラハギだ。
味はワンランク落ちるが、まあ旨いので文句は言えない。
とは言え、牡鹿の釣り師のほとんどは、ウマヅラハギだと捨ててしまう。
処理を知らないから、尿酸の多い魚なのですぐに魚が臭くなってしまうのだ。
釣れる先から頭を切り落として一枚皮を剥ぐ。
この表面の皮が臭くなるのだ。
名前の由来もそこにある。
氷を入れた海水に皮を剥がしたウマズラハギやカワハギを放り込んで、とにかく低温で保存する。
下処理さえちゃんとできるなら、肝和えとかフライなど何でもいける。

宮城の釣り師のお目当ては、実はこいつらではない。
もっと正月に欠かせないのは子持ちのナメタガレイなのだ。
正月にもなると40cmくらいのものはへたすりゃ一万円札が飛んでいく。
釣り師たるもの、船代に万札を払うのは厭わないが、買って喰おうなどという了見は持ち合わせてはならぬのだ。
と言うことで、カレイ釣りが多くなる。
海底に釣り糸をはわせておいて、ちょっとずつ食い気を誘うように引きながら釣るのだ。

一般的なのはそうだが、この時期の最高の美味ともなると、実はソイである。
マグロのトロに負けぬと言われるアイナメを数倍美味しくした海の魚の女王格と言ってもよいだろう。
釣り方が上記の連中とは違って、できるならヒラメと同様の魚の生き餌を使うのだ。
稲刈りが終わった田んぼの用水の泥にいるドジョウをを探して、これを使うのである。
俗にベッコウゾイというまだら模様のものが釣れたら、万々歳だ。
釣り場近くの漁協に寄って、頼み倒してアワビを数個分けて貰い、殻付き牡蠣を大量に購入して2時間半の帰路を急ぐのである。




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