Nicotto Town



湯浴みを許されたのは

狻⒏弑裙扭瓮螭稀⑾领Fに手を貸そうとした。

「もとの場所に戻るぞ。背負ってやるから、おぶされよ。崖っぷちが嫌いなんだろ?」

 高比古の身体はわりに細身で、大男と呼ぶべき武人の身体を誇る大国主や、盛耶と比べると、少し頼りなく見える時もあった。でも、近くで見ると肩幅は意外に広いし、触れてみるととても頑丈だと、狭霧はもう知っていた。それに――。

 いわれるがままに背負われながら、狭霧は、温かな肩に頬を寝かせた。

 高比古の足が進むたびに上下する振動に身を預けながら、こう思わずにはいられなかった。

(この人は、いつの間にこんなに優しくなったんだろう――)

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 でも――と狭霧は思った。

(そうじゃないね――。きっと高比古は、はじめから優しかったんだ。ただ、優しいところを人に見せなかっただけで――わたしが気づかなかっただけだ。高比古は、優しい……)

 その想いは、崖っぷちにいる怖さに上塗りをして余りあるほど、狭霧の胸にじんわりと広がった。
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 離宮へ戻ると、門の前では、香々音が今か今かと狭霧の帰りを待っていた。

 馬に乗って坂道を下る一行を見つけると、香々音は、勢いよく腕を振って狭霧の名を連呼する。

「姫様、お早く! 湯浴みのお時間ですよ! お早くなさらないと、夕餉に間に合いませんよ! 姫様ったら!」

 香々音は慌てていたが、馬に揺られつつ天を見上げて、狭霧は首を傾げた。

「夕餉に間に合わない? まだ、昼間だけど……」

 離宮に着いたのは朝のうちだったので、高比古がいきたがった峡谷から戻ったのは真昼だ。

「聞いた? 湯浴みだって。この離宮には湯殿もあるんだね」

 隣で馬を駆る高比古に声をかけると、高比古は苦笑した。

「あるだろうな。なにせ、賢王様御用達の離宮だから」

「おじいさまの?」

「らしいよ。かなり昔だけど、須佐乃男がここで一年くらい暮らしていたらしい。だから、湯屋も舘も、ここにあるものは都並みだよ。大国主も、あんたのかあさまを連れて何度か来ていたみたいだしな」

 狭霧は、目をしばたかせた。

「かあさまを連れて? 一の姫じゃなくて?」

「ああ。安曇に聞いたよ」<a href="http://www.watchsindustri.com/grandセイコー-ch-14.html" title="腕時計 ブランド">腕時計 ブランド</a>

「そんなにいいところなのね? ふうん――」

「見どころは、さっきの峡谷らしいけどな。まあ、気持ちがいいところだよ。おれもここは好きだな」

 高比古は、離宮の周囲をぐるりと囲む山々の緑を見渡して、深く息を吸った。

 山深い場所にあるこの里では、山の緑は、四面にそびえる壁のようになっている。見上げると、青い空が、緑の壁の上に渡された美しい屋根にも見えて――。まるで、とても広々とした自然の宮殿に、お邪魔しているような気分になった。

「たしかに、気持ちのいいところだけど――。まあ、いいわ。いやな汗をかいたし、湯浴みができるなら嬉しいね?」

 

 

 でも、その日、湯浴みを許されたのは、狭霧だけだった。

 離宮の門で狭霧の手首をがっしと掴んだ香々音は、狭霧だけをそこから案内した。

「たいへん恐れ入りますが、今日、湯屋は姫様だけの貸し切りでございます。高比古様は、あちらに川がありますから、そこらへんでご自由に水浴びを―――」

「か、川?」

 それでは、侍女や下男たちと同じ扱いではないか。高比古は、狭霧の夫だというのに。

「で、でも――! そうだ! なら、高比古に先に湯屋を使ってもらって、その後でわたしが使えば――」

 狭霧が折衷案を出しても、香々音は聞く耳をもたなかった。

「いいえ。今日はだめです。いきますよ、狭霧様。早く始めないと、夕餉に間に合わなくなります!」

「ええ? でも、まだ明るいよ?」




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