うに反応がないのは
- カテゴリ:日記
- 2013/09/23 15:12:10
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その態度が、狭霧は気に食わなかった。
(なんなのよ、いきなり)
会いたいような、そうでないような――。そんなふうに自分も思っていたことを棚にあげて、むっとした。
高比古の姿を見つけたときは緊張したものの、いざ目が合うと、とくに胸が弾んだり、苦しくなったりすることもなかった。まったくいつもどおりで、むしろ、久しぶりに顔を見ると、胸がすっと落ち着いていく。これまで奇妙な問答を一人で繰り返したことを、馬鹿らしく思うほどだった。
(これ、やっぱり恋じゃないわよ。勘違いよ)
安心すると、狭霧は笑顔になった。慣れた手つきで手綱を操り、軽々と馬を乗りこなす。
高比古は、狭霧たちの一行が近づいてくるのを待つように歩みを遅くした。狭霧もすこし馬足を速めて、横に並ぶほど近づくと、そこでひらりと鞍から下りた。
「久しぶり、高比古。元気だった?」<a href="http://www.jdscaa.com" title="http://www.jdscaa.com">http://www.jdscaa.com</a>
いつもどおりに声をかけると、彼も、ほとんど表情のないいつもの真顔で応えた。
でも、半月ぶりに会ったというのに、彼はろくな挨拶をしなかった。彼は、狭霧をじっと凝視した。
「久しぶり。……ん?」
「――なにかついてる?」
妙なものを見るような視線の先は、狭霧は髪の上あたりに向かった。高比古は狭霧の顔をじろじろと見ながら、首を傾げてみせた。
「そうじゃないが。ここしばらく、会うたびに感じが変わるなと思ったんだ」
「ああ、それなら、きっと髪飾りのせいよ。別の色のをもらったの」
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「髪飾り……。ああ」
高比古の目は納得したというふうに変わって、狭霧の頭上を見やった。
「前にしていた赤いのよりは、落ち着くでしょう? 前のはちょっと派手だったから、高比古もあのときはおかしいって思ったでしょう?」
笑うと、高比古はむっと渋面をした。
「そんなことを、おれはいったか」
「いってはいないけど。からかったり、へんな顔したりしてたじゃない」
「……していない」
「前のほうがよかった?」
「いや、いまのほうが似合ってると……」
高比古はそこまでいうと、ふいっと目を逸らしてぶつぶつといった。
「あんたがよければ、人のことはどうでもいいだろう。おれは褒めるのが下手らしいし」
狭霧は、苦笑した。
結局狭霧を笑わせたのは、彼とのいつもどおりのやり取りだった。それから、思った。
(やっぱりこれは恋じゃないよ。なにかがあるとしたら、そうじゃないなにかだ)
高比古も兵舎にいくというので、馬を下りた狭霧は手綱を従者に預けて、一緒に大路を歩くことになった。
馬に乗った武人や恵那が先をいき、二人になると、狭霧はずっといおうと思っていたことを伝えることにした。
「そういえば、前に意宇へ戻る前にね、心依姫に会いにいったよ」
笑い話にしてしまおうと、狭霧はできるだけ明るい声でいった。
「実は、のろけ話を聞いちゃった。心依姫、幸せそうだったよ」
高比古は前を向いたまま、狭霧を見ることもなく、なにもいわなかった。
でも、彼と話しているときにこんなふうに反応がないのは、慣れっこだった。狭霧は話を続けた。
「心依姫、本当に心配していたんだよ。前にね、わたし、心依姫と二人で神野(くまの)にいったことがあったでしょう? そのときに、大巫女がね……」
どうしても高比古に話しておかなくちゃと思っていたのは、そのときに心依姫がされた先視(さきみ)のことだった。
高比古の家族にはなれるが、妻にはなれない。御子を授かることも一生ないと予言された心依姫が、どれだけ脅えて、不安がっていたかを。
その先視を