Nicotto Town



梓から受けた暴力

介という男の才覚一つだけであった。
 それでも、無類の智謀と創造性と強運を持つ上総介であっても、武田ばかりは恐れていた。武田を敵に回せばひとたまりもないことは重々承知していた。
 しかし、牛太郎は前々から上総介に進言していた。
 武田が西上を開始したそのとき、偉大なる戦国大名、徳栄軒信玄は死ぬと。
 実は、牛太郎は未来からやってきた男であった。
 この事実を知っている、あるいは信じている人間は、この世に二人しかいない。その一人が上総介である。
 武田はよいのだ。織田家の喉元に刃を突きつけているのは武田ではない。
「父上、入りますよ」
 左衛門太郎がやって来たので、牛太郎は考察をやめた。
「ひどいやられようですね」
 でこぼこに腫れた牛太郎の顔を眺めて、息子は口許をほころばせる。
「何を笑っていやがる。どうして、止めてくれなかったんだ」
 と、牛太郎は恨み節だが、息子は細い鼻をつんと突き上げた。
「何も言わずに家を出る父上が悪いのでは。母上がどれほど心配したのか考えもすれば、これぐらいで済んで良かったのではないですか」
 これ以上やられたら死ぬだろうと言いたい。ただ、梓を心配させてしまったことには心苦しくもあるから、牛太郎は素直に黙った。
「近々、北近江の浅井を攻めます。今度のいくさは姉川以来の大いくさになるという話ですから、父上も召集されましょう。その間に傷を癒しておいてください」
「そんなことよりだな、太郎」
 と、牛太郎は目玉だけを動かして、涼しげな顔つきの息子<a href="http://www.dafayulecheng881.com" title="http://www.dafayulecheng881.com">http://www.dafayulecheng881.com</a>
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「赤ちゃんが産まれたんだろ。どこにいるんだ。連れてこい」
「それは無理です」
「どうして!」
 うっかり声を大きくしてしまって、牛太郎は痛みに唸るが、左衛門太郎はやはりしらりとした顔でさらりと言った。
「母上に見せるなと仰せつかっています」
「なんでだよ!」
 そうして、また、うう、と痛みに耐えかねる。
「母上の言葉をそのまま申しますと、どうせ、孫見たさに帰ってくるのであろう。だから、見せぬ。許さぬ。反省に反省を重ねてもらわなければならぬ」
 牛太郎は絶望的な悲しさに襲われた。血の繋がっていない初孫とはいえ、京から岐阜への帰路、それを楽しみにしていたのだ。玉のような男の子なのだろう。太郎や嫁のあいりに似て、利発そうな顔をしているのだろう。
 ああ、とうとうおれも、おじいちゃんと言われる日が来たのか。ふむふむ。
 などという淡い夢は梓の怒りの前に霧となった。
「そんなことないって言ってくれよ。別におれは赤ちゃん見たさに帰ってきたわけじゃないんだからよ。あずにゃんが心配しているだろうから帰ってきたんだからよ」
「だったら、別によいではないですか、赤子を見ずとも」
「いや、でも、せっかくだから見せてくれよ」
 左衛門太郎はすがりつく牛太郎に一瞬ためらいの表情を見せたが、すぐにぷいと顔を背けて、腰を上げてしまった。
「今回ばかりは拙者も母上の味方です。だいたい何度目のことか。拙者が小姓だったときも行方不明になりましたし、母上が嫁がれてまもないときも家を飛び出して、何度やれば気が済むのですか」
「もうしない」
「母上だけではありませんよ。あいりもお貞も、それに堺にいる早之介や四郎次郎だって、父上の身をどれだけ案じていたことか。それをおわかりなのですか。おわかりならば、せめてこの家の者たちに詫びの文でも書いてください。赤子はそれからです」
「わかった。わかったよ。そうするよ。そうするから、筆と紙を持ってきてくれ。今すぐに書くから、持ってきてくれ」
 初孫見たさに嘆願すると、一度部屋を出た左衛門太郎は筆と紙を用意してくれた。
 だが、梓から受けた暴力の限り




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