Nicotto Town



頭も髭

介からの指令に怯えていたが、珍しく上洛軍に加えられ、どこかに飛ばされるような気配もない。
 ここで牛太郎が危惧したのは、これから先、ずっと上総介の傍に付かされるのではないか。
 それだけは一番御免こうむりたい。
「しかし、元就公が亡くなられているとはいえ、毛利家は一筋縄では行きませんでしょう。備前岡山の宇喜多和泉守とやらも常軌を逸した不義理の謀家であるとか」
 官兵衛は持ち上げていた湯のみを手に止める。
「さすが、本多殿。よくご存知で」
 ほとんどが笑っているか喜んでいるかして快活に富んでいる官兵衛の表情が、陰に染まった。瞳から輝きをひそめさせ、口端を危ない笑みで緩めながら白湯をすする。
「おっしゃる通り、和泉守は厄介極まりないですな。つい先日には主人を備前から駆逐してしまい、まったく、やることなすこと大胆極まりなければ、いちいち姑息で、それでいて野心旺盛で、在りし日の松永弾正よりも危険な男ですわ」
 弾正忠を引き合いに出されて、弥八郎は苦笑い。
 牛太郎はというと、
「ほほう」
 と、興味津々。
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「お前の近くにはそんな悪党がいるのか」
 いや、興味というより、上総介の膝下を脱する口実が出来たような気がした。
「近いと言えば近いですが、遠いと言えばまだ遠いですな。まあ、悪党だからこそ、拙者にもやりがいが生まれるものですわ」
「おい、待て」
 湯のみを下ろした牛太郎。
「そんな怪しい野郎がいるんなら、新?希代の大悪党のおれも姫路に行ってやる。フフ。そうだ、目付けとしてな」
「や、簗田殿」
「それはいい! いつかは簗田殿を姫路に招きたいと思っておったのです! 摂津地獄を切り抜けた簗田殿が加われば、百人力ですわ!」
 世辞には違いないが、官兵衛とすれば、織田重臣かつ、上総介への直通行路を持っている牛太郎が姫路に滞在してくれれば、いろいろとやりやすいのであろう。
「簗田殿、そう安易に考えないほうが」
 弥八郎が不安げに眉尻を下げていたが、牛太郎は、大丈夫大丈夫、と、言って、聞かなかった。

「殿。本多殿にお聞きしましたが、本当に姫路に行かれるおつもりなのですか」
「付いてきたくないんなら、お前だけ岐阜に帰ってもいいぞ」
 昨日、弥八郎に叱責されたばかりの利兵衛は、なんの反論もせずに黙ってうつむいた。
 再び、来迎寺を目指している。<a href="http://www.watchsremark.com/oris-9wudw2-6.html" title="スイス 腕時計 メーカー">スイス 腕時計 メーカー</a>
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 宿泊している随風の話をより聞きたいがためであった。
 比叡山焼き討ち以降、学僧を各地から集めて施しを与えていた武田徳栄軒に、随風も同じように招かれ、徳栄軒が死んだ一年後ぐらいまでは甲府に滞在していたと言っていた。
 無論、牛太郎の対武田戦略は一応の幕切れとなっている。彼が随風に聞きたがっているのは、山県三郎兵衛たちのことだった。
 今だけはおとなしいが、ゆくゆくはうるささを取り戻すであろう利兵衛を門前に待たせ、牛太郎は一人で来迎寺の境内を進んだ。
 住職の真雄は牛太郎を快く招き入れ、客殿に上げさせると、小坊主を随風のもとへ使わした。
 随風が来るまでの間、牛太郎は汗を拭いながら蝉の鳴き声を聞いていたが、ふいに住職が言った。
「我々は一体どうなってしまうのでしょうか、簗田殿」
「あっしなんかに訊かれたって。今まで通り、お釈迦様に帰依するしかないんじゃないんですか。信長様がこの寺を残したっていうことは、全部のお寺を滅ぼそうとしているってわけじゃないんですから、これからどうなるのかこうなるのかじゃなく、一日一日精進するしかないんでしょう」
 まともな発言のようでもあったが、冷たくあしらったというのが正解だった。牛太郎にとっては寺院の将来などどうでもよかった。
 随風は一晩で小奇麗になっており、頭も髭も 




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