アイス・ティアーズ 2
- カテゴリ:自作小説
- 2017/03/20 20:28:45
わたしは、出会ったことがなかった。
今まで、そんなこと一生起きると思わなかった。
この世界の全てが憎く、壊れてしまえば良いと思えるほど。
最悪な日が、一瞬にして最高の日になってしまうなんて。
「……」
「…あの、」
「……」
「あのー…」
「え?…あ、ごめんなさい!」
隣に立っている彼を見ていたら、声をかけられて急いで返事をする。
彼は困ったように笑って、それがどうしようもなく愛しかった。
「もっとこっち来て良いですよ」
「え?」
「そんなそっち歩いていたら、排水溝に落ちてしまいますから」
「っ!」
あと少し、左によれば排水溝がある。
わたしが急いで避けると、勢いがあり彼にぶつかってしまった。
「ごめんなさい、さっきから…」
「良いですけど…上の空じゃないですか?大丈夫ですか?」
「…不思議だなと思って」
「不思議?」
「はい。
だってわたし、あなたの飲み物飲むなんて失礼な真似して…。
お詫びにお店に入ったら、わたしの愚痴を聞かされて。
それなのに…嫌な顔ひとつしないから、不思議だなって」
一緒に行こうと約束していた彼氏に、当日の朝ドタキャンされて。
落ち込んで、でもチケットが勿体ないから行って。
隣の人の飲み物を飲んで、お詫びにお店に入って、泣きながら愚痴をこぼして。
初対面の相手に酷い事をされてばかりいるのに、彼は嫌な顔をしない。
してくれた方が、良かった。
最悪だって、罵ってくれた方が良かった。
「…だって、嫌な思いをしているのはあなたでしょう?
僕に責める権利なんてないですよ。
むしろ、あなたの話を僕は聞いていたいです」
ふわっとじゃなくて。
ぎこちなくて、誰の目から見ても作っているってわかるような笑顔。
不器用過ぎるその笑顔に、わたしは惹かれていた。
「…ありがとう、ございます」
マイペース。
空気が読めない。
作った天然。
ぶりっ子。
そう言われ続けていたわたしの全てが、覆されてしまった瞬間だった。
信じていなかった。
ずっと、今日がわたしの人生の中で最低の日になると思っていたのに。
彼の、作ったような不器用な笑顔が。
最低な日を、最高な日に変えてくれた。
笑顔だけではなくて、言動全てが不器用な彼。
笑うのが苦手で、感情を表に出すのが苦手。
無愛想で無口な彼と一緒にいるのは、心地良かった。
沈黙がここまで心地良いと、わたしは今まで知らなかった。
沈黙とは息苦しいもので、続いてはいけないものだと思っていたのに。
彼の隣にいる時は、自然と沈黙が続いて…息苦しいと思わなかった。
一度も。
沈黙が心地良いと思えるのは、きっと彼だけだ。
「……」
本当に、大好きだった。
世界で、一番。
「……嘘、ですよね」
あなたの隣にいられるだけで、幸せなはずだった。
満ち足りている、はずだった。
「…嘘だって、言ってくださいよ」
生きていて良かったなんて。
「嘘だって」
沈黙が心地良いなんて。
「ねえ」
あなた以外、思えないよ
「ねえッ!嘘だって言ってください!!」
……待って、と。
あの日。
仕事が忙しくて、早く出ないとと、早朝寝坊した彼に伝えたあの日。
彼は珍しく声を荒らげて、わたしの腕を掴んだ。
待って、と。
どうしたの?と問いかけても、何も言わなくて。
ただ、目だけが異様に泳いでいて。
だけどそれを、わたしは珍しいの一言で済ませて、家を出た。
制止の声を、聴かないで。
「嘘だって、う、そだって……言ってよおおおっ!!」
人が水分で出来ているって、本当だ。
涙が止まらない。
止める方法を、わたしは知らない。
ねえ、教えてよ。
あなただけだよ、わたしの涙を拭える存在は。
☆
わたしは、忘れないだろう。
一生。
この日を。
この日だけは、忘れたりしないだろう。
かけがえないのないあなたを、失ってしまった日を。
もし。
もし、たったひとつ、願いが叶うのならば。
あなたに、会いたい。
☆END☆
超中途半端で終わらせてしまったので、解説いきます
アイス・ティアーズを書いたのは、3月11日です。
何の日だか、わかりますよね。
私は当時中学2年生でした。
本当は詩を載せようと思ったのですが、良い言葉が浮かばなくて。
小説なら何かいけるだろうと書き始めたのが、これ。
この間のは、彼目線でした。
気付いている人もいるかもしれませんが、
実は似たような日常を繰り返しています。
あれは、
半分現実で半分が夢です
彼は、ハッキリ言うと、3月11日に亡くなっています
今回の目線である彼女は、仕事だと言って外に出ているため、被害には合いませんでした
帰って来た彼女は、近所の人とか…崩壊した家などを見て聞いて、
彼が亡くなったことを知り、「嘘だよね?」と教えてくれた人に問いかけますが
誰も「ドッキリでしたー!」とは言ってくれませんでした
何故彼が「待って」と言ったのか
何故同じ日常を繰り返しているのか…
それはわたしもわかりません←
ぱっと思いついたのを書いているだけなので
詳しい、細かい設定がないのです
基本、皆様の想像にお任せしています。投げやりでごめんなさい
題名ですが
アイスは
冷たいのice(つづり合っているか不明)
と
愛すをかけています
ティアーズは、涙
冷たい涙っていう題名です
我ながら何と残酷な…
愛すは、お互い相思相愛だったのだよー?と
何を伝えたいのか
うーん、ぱっと思いついたのでその辺はわからないですけど
生きているのは幸せなことだとか、多分その辺です
…というか、本気で泣きそうなので、この辺でおわります
バッドエンドは無理や、やっぱり笑
流すのなら暖かい水であってほしいですね…
嬉し涙
幸せだから出てくる涙
世の中の水分は飲み水とそれであれば良いのに…
おぉ何だか星が降って来た(゚Д゚)ノ
心の中にも
暖かな水分と氷の様に冷たい水分があるのかも
今流れているのは
どちらの水分かな?