台風17号が九州に接近し、四国も土砂降りになっていたが、「まつはま」は、いつものように混んでいた。席は空いているが、打ちたて茹でたての麺を出すのが店のポリシーで、うどんを受け取るレジの前に行列ができていた。
http://www.rnc.co.jp/sp/udon/bn/index.asp?id=190718180426

店の名物は「ながもうどん」だが、かけうどん（200円）を頼み、アナゴと半熟卵の天ぷら（各110円）を小皿にとり、料金を払ってカウンターに座った。カウンターは込み合っていて、隣には作業着姿のおじさんの二人組が座っていて、二人の会話が聞こえてきた。

「土砂降りやのに、混んどるの～」
「そらの、『さぬどん』がうどんのPRしょるけんやろ。」

「あいつは、いかんわ。ゆるきゃら投票全国4184位や。公認キャラだったら47番目の中に入らないかんのとちゃうんな。県内でも23位の人気で、他県のキャラに負けてどないしょんな。」
「そやの。観光協会も『さぬどん』諦めて、新しいキャラ作ったみたいやの。」

「あれもいかんわ。名前が『うどん脳』ゆうのも気持ち悪いし、うどんばかり食べていたら、ある朝、『うどん脳』になっていたっちゅう設定も、うどんの応援しょんかディスっとるんか分からんは。」
https://www.udonw.com/うどん脳紹介-語録/

「観光協会のふがいなさに、県庁は呆れて、ポケモン頼みになっとるやろ。」
「『ヤドン』な。マンホールの蓋も『ヤドン』になったの。」
https://yadon.my-kagawa.jp/

「稲刈り、終わったんな。」
「先週、刈っといて良かったわ。台風で倒れてもいかんし、雨が降ったら乾くまで待たないかんけん、遅れてどなんもならんようになっじょったわ。」

「よかったの。墓参りは行ったんな。」
「明日行くわ。明日やったら、台風、通り過ぎとるやろ。ちょうど彼岸やしな。」

「お前んとこの婆さん、何でも知っとったな。話も上手やし、遊びに行って、はなしを聞っきょったら、おもっしょかったわ。」
「そやの。台風が来たら、婆さんの話で、思い出すんがあるんで。」

そう言うと、おじさんは、かきたまうどんを食べていた箸を止め、お茶をすすると、雨が叩きつけている窓を見ながら語り始めた。


続く