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横浜事件報道の判り難さと「新聞離れ」

横浜事件の裁判が事件発生から実に65年ぶりに決着を見た。
が、この裁判が一体何がどう問題で、何をもめていたのか、新聞やテレビの報道だけで理解出来ていた一般市民はどれだけいたのだろうか?

これは太平洋戦争中「治安維持法」という法律があって、それに違反した嫌疑で多くの人が逮捕された、と言う話が発端だ。治安維持法は、共産主義を宣伝したりする行為を犯罪として取り締まる法律で、歴史的には日本史上に残る「悪法」であったと評価は確定している。

ところが逮捕されたうちの約30人が戦争が終った後になって有罪判決を受けた。
法律の世界では、どんなひどい悪法であろうと、法律として存在していた以上は、その法律に違反した行為は犯罪であり、その当時の司法制度で罰を受けた事は合法、と考える。

ちなみに治安維持法が正式に廃止されたのは1945年10月15日。
今回の裁判の原告達はそのほんの1ヶ月から2ヶ月前に治安維持法で有罪が確定した。さすがに執行猶予付きで、刑務所行きにはならずにすんだが。

ところが、原告が主張していたのは、悪法なのだから、終戦後に有罪判決を受けたのは間違っている、という話ではない。
そもそも、悪法であろうと無かろうと、自分達は治安維持法に違反する行為などしていなかった、と主張していたのである。つまり治安維持法違反に問われたこと自体が「冤罪」だったと言っていたのである。

ところが1980年代から原告の人たちが再審、つまり裁判をやり直せ、と主張して今回の裁判を始めたわけだが、裁判官は「免訴」という結論を出した。
免訴というのは「法律の方が間違っていたのだから、罰しない事にします」という話だ。

つまり原告側は、治安維持法が間違った法律かどうかとは関係なく、冤罪だった。だから裁判をやり直して「無罪判決」を出してくれ、と言ってきた。
それなのに裁判所は、有罪判決は正しかった。だが治安維持法は歴史的悪法だったのだから、それに違反した行為は許してあげます、それでいいじゃないですか、と言い続けて来たわけである。

双方の論点がまるっきりかみ合っていなかったから65年もかかってしまった。そういう裁判だったわけなのだ。

我輩は大学で法律学を専攻したので、そういう大まかな話の道筋は新聞記事だけでもなんとか理解出来る。
だが、大学の法学部卒業生でない一般市民で、この話の構図をちゃんと理解出来た人はどれぐらいいたのだろうか?と思えてならない。

近年大新聞社が口をそろえて「新聞離れ」を嘆いている。
が、我輩はこの「新聞離れ」という言葉が大嫌いである。
他の業界では「顧客離れ」と呼ぶはずの現象だからだ。

この横浜事件の決着、歴史的なニュースなのだが、大学の法学部出でもないと何が何だかよく判らない。そんなメディアから読者(つまりお客様)が離れて行くのは当たり前じゃないのか?

一部の新聞では、小学生向けに最近のニュースを噛んで含めるように易しく解説した欄を設けている所もある。が、それも週に一回夕刊の特別な欄で、という物に過ぎない。
そうではなくて、日頃の紙面でそういう事が学の無い人にも理解出来るような記事を書くのが新聞の仕事、使命ではないのだろうか?

事実の第一報の記事が判りにくいなら、同じ日の別の紙面で学の無い人や専門家でない人にも、話の大筋ぐらいは簡単に理解出来るような判りやすい文章を載せる。
これを日常的にやろうとは考えないのだろうか?

「新聞離れ」という言葉には、「新聞を買って読むのが当たり前。内容が理解出来ないなら読者が不勉強なのが悪い。最近は新聞を取りもしない無知な輩が増えて困る」とでも言っているような、大手マスコミの傲慢さを感じる。

「新聞離れ」で経営が苦しいのならなおさらのこと、「読者はお客様」という商売の基本に立ち返ってみるべきではないだろうか?

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2010/02/11 00:20
治安維持法も成立当初は国民に全否定されていた訳ではなかったですよね。
当時はテロなどの非合法活動も実際にあり、治安に不安を感じていた人も少なからずいたことは事実でしょうし。
ただ、法律は施行された後の可能性まで考えて制定しないと後々えらいことになる場合もあるという例ではあると思います。

近年でも障害者自立支援法が批判されたりしていました。
法律の趣旨以前の問題以前に本文を読んだだけでは何も実施できない政令省令待ちの法律と言うのはどうかなと思います。
立法府の目の届かないところで肝心な中身を決定するという手法も問題視すべきでしょうね。

少し話が逸れてしまいましたが・・・
新聞の記事は確かにわかりにくいです。
今回の原告の方々はマスコミの怠慢のおかげで、世間に問題の所在を認知してもらえないまま戦わなければならなくなった訳で二重に大変だったことと思います。

法律関係だけではなく、科学等の新発見の記事もどこから転載してきたのかと思うくらい訳のわからない文章になってます。
書いた本人はもちろん、デスクや校正の方も理解できてないんでしょうね。
でも金を取って読ませているのなら、複数の専門家を押さえて少しでもわかりやすく書くよう努めるのが仕事であり、わからないものを発表されたまま転載するのは不誠実です。
下手に記者クラブなんかが整備されて足並み揃えた取材しかできていないから紋切り型の記事が多いというのも困りものです。
なのに休刊日は増える、料金改定と称して値上げする、自分たちの給与が高いのは知らん振り・・・
顧客が離れていかない方が不思議でしょう。
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2010/02/05 18:01
治安維持法は魔女狩り的になっちゃった部分もあるから
裁判所の最初のやり方も他人からみてるとオトナ判決というきがしていましたが…。
当事者にとっては我慢ならなかったんでしょうね。
でもえん罪ってことになると
ほかの治安維持法で獄死したりした思想家たちは
罪だったとでもいうの、みたいな感じがうすーくただよったりして。
ビミョーっすよね。

おいらは法学部でていませんよーw
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2010/02/04 22:37
同感です。。

活字を大きくして読みやすくはいいけど、その分記事は減ったのでは??

そして広告の多い事。。。

売れなければ売れるように改善するのが、企業努力というもんですよね〜

ペンは剣よりも強いはず。。。




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