Nicotto Town



とあるサイトの盗作騒ぎ

名前は出さないが、とある有名な小説投稿サイトで、ある書き手のユーザーが盗作をしたとしてSNSで騒ぎになっている。


もちろん盗作は、商業作品でない場合であっても著作権侵害に当たり、倫理上許されない行為であり、我輩も擁護する気はない。

だが、その、盗作をしたとされるユーザーを執拗にネットで攻撃し、サイトの運営の怠慢だと非難している他のユーザーさんたちの様子には、一抹の危惧を感じる。

どうも責任追及を叫んでいる人たちは、こう思っていないだろうか?
「高い倫理観を持つ者が集まっている当該サイトに、一部倫理観がおかしいユーザーが紛れ込んでいる」

もしこう考えているなら、とんでもない勘違いだ。
小説投稿サイトに限らず、どんなSNSもサイトも不特定多数に開放されているサイトは、現在の日本社会の「世間の現実」の鏡像である。

したがって現実はこう表現した方が正しいだろう。
「倫理観などに無頓着なユーザーが多数派であるサイトの中に、一部倫理感の高いユーザーが紛れ込んでいる」

インターネットもパソコンも無かった我輩の学生時代でも、国語や社会科の宿題で、優等生の書いた物を手書きで丸写しにするなんて事は蔓延していた。

現在ではネット経由でコピペが簡単にできるようになったのだから、こんな「便利な手段」を使わない人たちの方が少数派なのだ。

大学でレポートを提出させると、あちこちのネット情報をコピペで継ぎはぎした物を平然と出す学生が大勢いるという話を聞いたことがある。

企業の、たとえば視察出張旅行の報告書を出させると、前年の同僚が書いた文章をコピペして、固有名詞だけ書き換える、という話もいろんな業種の会社で聞く。

さすがに大学の先生や企業の上司は気づくが、だからと言って本人を呼び出して注意などしない。
単に当人の評価を下げるだけだ。

「小説」などを扱っているサイトだから話が別と考えているなら、それは世間知らずであり、ナイーブ過ぎる。
学術論文ならともかく、エンターテインメント・コンテンツとして創作される作品は、プロ、アマ問わず「商品」でしかない。

ブランド商品の新作が出ると、すぐにそのコピー品である偽ブランド品が出回る。
どんな商品の世界でもそうなのだから、小説などの文芸だけが例外という事はあり得ない。

出版社などが直接関係している商業作品なら、監視と保護はされるが、アマチュアがそれ用のサイトに投稿した作品にまで、監視を行き届かせるのは物理的に不可能だし、なんらかの社会的制裁が可能になるのは、商業作品化される場合だけだ。

この手のサイトでは、昔から盗作騒ぎは付き物で、何度騒ぎが起きても無くなる事はないだろう。
なぜならコピペする、他の人が書いた文章をパクるという行為は、世間全体に蔓延しているのであって、小説投稿サイトで特異的に起きているわけではない。

かと言って、盗作者を糾弾してきたそのサイトのユーザーに、黙って見過ごせと言いたいわけでもない。

だが、「社会では正しい事が当たり前に行われている」という事を大前提にして正義の執行を声高に叫ぶのは、問題の解決にはならない。
今の日本社会は、最高学府の学生やれっきとした社会人の間でさえ、コピペ、パクりが堂々と横行している世界なのだ。

運営がこの種の不正行為を逐一把握して、不正行為を犯したユーザーを100%処罰できるサイトなど存在しない。
それはユートピア幻想に過ぎない。

あくまでもアマチュアでよいというスタンスであっても、他人の心を打つ作品を書きたいなら、世間の現実は知っておかなければならない。
正義が必ず勝つ、という結末は、それこそ物語の中にだけ存在していればいい。





Copyright © 2024 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.