Nicotto Town



「小説」の語源

本はよく読むのだが、仕事に役立つような実用書を読むのに忙しくて小説は何年も読んでいない。
今回は「小説」という単語の語源を語ってお茶を濁させてもらおう。

語源についてはいくつか説があるのだが、我輩の知っている説は中国起源である。
昔王朝時代の中国の宮廷では高級官僚が皇帝や上司の官僚に「説」という文書を提出していた。意味としては報告書、レポートといったような物だ。

高級官僚の「説」は、まあ国家的な課題とか、高尚な内容の報告書である。
これに対して、街中を見回って庶民を直接監視したりする下級役人も、お役所の上司に報告書を出す。

もちろん内容は、天下国家を論じるような高尚な物ではなく、庶民レベルの事件や珍事である。ところが、貴族階級で一般世間とは無縁な生活を送ってきた偉い人たちには、かえってこれが面白かった。

例えば庶民の猟奇的な殺人事件とか、次々に男性をたぶらかす妖艶な悪女とか、そういう「説」が下級役人から届くと、けっこう偉い高級官僚も好奇心から読みたがったらしい。
ただし下世話な内容だから、家へ持ち帰ってこっそり読んだわけだろう。

偉い人のご機嫌とってひいきしてもらうために、下級役人でも文才のある連中が面白そうなネタを探しては争って上司に「説」を献上するようになった。今で言うゴシップ週刊誌みたいなものだ。

いつしかそういう下級役人の提出する「説」が「小説」と呼ばれるようになり、中には面白ければいいだろう、てな感じでフィクションをでっち上げる物も現れた。
この場合の「小」は「下らない、低級な」という意味である。

これが小説の語源だというわけだ。だから、中華民国成立以前の中国では「小説」というのは全て下らない物であり、知識階級はおおっぴらに読むものではないとされていた。

「水滸伝」「西遊記」「三国志演義」などは中国では当初「文学」としては認められていなかった。今のライトノベルやマンガ本みたいな扱いだった。

とはいえ庶民の間では人気があり、そういう架空の物語を楽しむという文化は代々受け継がれた。
その庶民的文学形態である「小説」をれっきとした文学の一分野として確立させたのが魯迅であったわけだ。

日本でも似たような価値観の転換はある。
現代、「源氏物語」が日本の誇る「文学作品」である事に異論を唱える人はあまりいないだろう。だが、江戸時代には、少なくとも武士階級の間では「源氏物語」はエロ本扱いされていた。

女性の貞操を重んじる武家社会にあっては、昔の話とは言え、フリーセックスの世界を描いた源氏物語はとんでもない悪書だったわけである。
とはいえ、武家社会でも当時の若い女性はこっそり写本を手に入れて読んでいたらしい。

上流知識人階級と庶民の価値観は常に食い違っていて、時代が下るにつれて庶民のそれが優勢になり、ついには逆転する。これは日本も中国も同じだったようだ。

現代のライトノベルやマンガが文学や芸術とみなされる時代がいつの日か来るだろうと、我輩は確信している。

アバター
2010/02/09 01:23
西遊記などの成立には異民族の侵攻が関係しているという説もあるそうです。
科挙がなくなって役人になれなかった知識人が成立に関係しているとか。
その辺本当かはわかりませんけど。

源氏物語は当時の貴族の価値観に合った物語ですからね。
彼らからすれば、陰陽道に従って生活し、和歌を読んでよい言霊を発することで悪い出来事を鎮めるという大仕事をしていたのだろうけど、そんなことを繰り返しているうちに武家に実権を奪われた訳だし。
江戸時代に武家が認めなかったのも当然でしょうね。

江戸時代のライトノベルが今では文学史に出てくるくらいなのだから、平成のライトノベルも将来文学史に載ると思いますよ。
アバター
2010/02/06 15:05
世の中にはいつの時代も
今で言うところの(一般的に使われている意味での)オタクさん、
みたいなタイプがいるんでしょうな。

「文壇」「文学」なんて概念が意識され始めたのがいつ頃なのかしりませんが
まあ、ざっくりいって維新の後でしょう。

「あの雑誌・あの先生が認めたものは読む価値がある」
みたいな始まりだったのだろうと推測するわけですが。

できれば彼らも「おもしろい」というだけで
文章の価値が決まれば
楽でよかったんでしょうが
「価値が無い」といって否定するひとたちに対して
団結して闘う必要があったかもしれない。

プライドの問題、社会的身分というか立場の問題、生活=お金の問題、
どうやって大好きな作品を守ってゆくか、
(オタクにとっては好きな作品は魂の一部だし)
本気だったんでしょうね。

だから「権威」みたいなものを作ったりしたのかもしれないと。
そして学問にすることを選んだのかな、と。
「文学」って、当時のオタク青年が生きていくための仕組みというか
システムだったんじゃないかという気がします。

価値のゴリ押しは権威の得意分野ですから
アニメ・ラノベ・漫画青年たちも
もしそれでしか生きられないなら
ガチで団結して権威を作ればはやいのかもしれない。

でもそうなったとき
漫画もラノベもジャンルそのものが
自由な表現や無限の価値観を失って
輝きを無くしてゆくのかもしれないですね。

そうして大学の片隅で
遺物となってしまうなら
わからないひとに認めさせる必要など
現代のオタクさんたちには
ないのかもしれません。
アバター
2010/02/05 22:42
マンガは既に文学・芸術への価値観が持たれつつありますね。

文学って何だろうと思います。
源氏物語も人気がありますが、私には「?」な感じだったりします。




Copyright © 2024 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.