我輩にとって最大のクラス替えの思い出と言えば高校時代である。
小中までは地元の普通の市立学校だったので、クラスの男女比は１：１だった。

ところが高校は戦前の旧制高校で戦後もしばらく男子校だった学校だったので、その頃も女子生徒の数が極端に少なく、学年全体で女子が一割程度という有様だった。
しかも、一学年が１０クラスあったのだが、うち女子がいるのは８クラスだけ。残り２クラスは男子しかいない。

前世で何か悪いことをしたのか、我輩は１年生、２年生通じてその男子だけのクラスだった。当然ラノベやマンがなどに出てくる、同年代の女の子との交流など望むべくもない。

３年生になって、やっと男女混合クラスに入る事が出来た。
この時のクラス替えこそが、我が人生最大の感激であった。

とはいえ、３年生では受験が最大の関心事であり女子の方も色恋沙汰どころではない。一応進学校だったので。
それに男９対女１という状態で２年も経っていれば、ほとんどの女子はご指名済みである。
３年生になって今さら女子のいるクラスに入れたからといって、このブランクはついに崩せなかった。

したがって我輩の高校生時代というのは、男女交際などとは全く無縁の暗い青春であった。ウ、ウッ・・・
今では我が母校、その辺はどうなっているだろう？

面白いもので同じ市内に、制度としては共学高なのになぜか昔から女子しか入学して来ない高校もあった。
これも元は戦前の女学校だったかららしいのだが、戦後共学になってもなぜか男子の志願者がほとんどなく、完全な女子高状態だった。

この学校の制服は冬は紺色、夏は上が白だがなぜか真夏でも長袖のセーラー服だった。
そして夏場は半分ぐらいの生徒が日傘をさして登下校するという、なんともレトロな校風だった。

女に縁のなかった高校時代の我輩にとって、この学校の女生徒は何とも言い難い憧れの対象だった。

ところが我輩が高校２年の時だったと思うが、この乙女の園に歴史的大事件が起こった。
なんと３人だけ、男子が入学したのである。同じ県立高校だったから、一学年４００から５００人のうちに男が３人だけという状況だったはずだ。

是非立場を交換してもらいたい！と我輩が夢見た事を誰が責められよう？
まさに男の夢、ハーレム状態ではないか！

ところが後日噂を聞くと、このハーレムの男子生徒、まるっきり異性として扱われていなかったそうだ。
やれ体育の時間の前まだその男子が教室内にいるのに女子全員が平然と着替えを始めたとか、やれ夏の暑い盛りには男子がいる教室で女子のほとんどがスカートを腰の近くまでめくり上げて授業を受けていたとか。

極めつけは女子トイレが混んでいたのでと言って、十数人の女子生徒が平気で数少ない男子用トイレに乗り込んできて、男子生徒の姿など意に介さず用を足したそうだ。

どうも女性の羞恥心とか女らしさとかいう物は、男女の比率があまりにも極端に違うと麻痺する物らしい。
当時の市内の男子高校生の羨望の的であった、その女の園の３人だけの男子生徒、その後の人生でどんな女性観持ったのだろうか。

これも可能なら追跡調査してみたい話である。