鳩山式ワンフレーズ・ポリティクスの失敗
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- 2010/05/05 16:35:00
沖縄の普天間基地移転問題は完全に行き詰ったようである。
新聞報道によると米国の外務・防衛実務者協議で米国側が、キャンプシュワブの杭打ち式滑走路、ヘリ部隊の徳之島移転、両方とも受け入れられないと通告した。
杭打ち式滑走路は巨大な桟橋みたいな物だから、支柱の杭を爆破でもされたら滑走路全体が崩落してしまう。だから過去の協議でも米国側は拒否している。
沖縄県に一番近い徳之島でさえ「沖縄の海兵隊から遠すぎて」ダメだと言う。
徳之島の住民を説得出来ていない上に米国が早々とノーを突きつけた格好だ。
徳之島の人たちを仮に説得出来ても、これでは移転は絶望的だ。
結局普天間基地の継続使用を米軍に押し切られた形で日本が認めざるを得ない、という結末になる可能性が高まった。
そして鳩山総理が意味ありげに口にしていた「腹案」の中身も今になって見えてきた。
同じく新聞報道によれば沖縄での住民との対話集会で、沖縄県民に基地がもたらす負担の軽減について「オバマ大統領として、あるいは米国がどこまで理解しているか、まだ判断がつかない」と発言したそうだ。
何の事はない。その腹案というのは米国の大統領に対して「友愛の精神」に基づいて泣き落しをかけるという事だったらしい。沖縄県民がかわいそうだから米国の方で友愛を発揮して何とかしてくれるだろう、というのが腹案だったとしか考えられない。
外交あるいは国際政治は弱肉強食の世界である。植民地の分捕り合戦が公然と論じられていた第二次世界大戦前と比べれば世界はいい方に進歩しているが、国家間の関係は未だに「力こそ正義」という状態から脱却してはいない。
少なくとも現代はまだ人類の歴史は「パワーポリティクス」の段階にある。
だから米国の大統領や政府にとってよその国の国民の負担や苦しみはしょせん他人事でしかない。それは日本の沖縄県民も例外ではない。
いくら日本の首相が「沖縄県民はこんなに苦しんでいるんです」と訴えたところで、軍事的利益を手放してまでそれに応じる程アメリカはお人よしな国家ではない。
だから外交というのは、アメリカ政府が日本の案を呑まざるを得ないように仕向ける事である。必要なら「日本の案を呑んでくれないとアメリカにとって困った事になりますよ」と脅しをかける事も必要だ。
「腹案」があると言うから、てっきりそういう何かかと思っていた。日本もやけっぱちになれば多少の手はある。日本政府が保有している米国債や米ドルを全部国際市場で投げ売りすれば米国は真っ青になる。現実問題それは危険すぎるから不可能だろうが、他に何らかの切り札を用意して交渉にあたらないと外交とは言えない。
鳩山首相は就任当初から「友愛」という言葉を盛んに使っているが、この言葉は首相自身の発明ではない。祖父で1950年代の首相でもあった鳩山一郎が日本に紹介した概念だ。
そしてこの意味の「友愛」の概念を提唱したのは鳩山一郎と同時代に活躍したオーストリアの思想家リヒャルト・クーデンホーフ=カレルギー伯爵であった。
日本でも伯爵は有名である。一つには母親が日本人だからだ。その縁で知日派の欧州知識人として知られていた。
だがカレルギー伯爵の家系は元はオーストリア・ハンガリー帝国の貴族であり、父は帝国の外交官としてまさに弱肉強食の帝国主義の先兵だった人である。
リヒャルト氏の子供時代にオーストリア・ハンガリー帝国は崩壊、その後ナチスドイツの台頭により氏の汎ヨーロッパ主義は危険思想とされ、祖国を追われてヨーロッパ中を逃げ回るという経験をしている。
第二次大戦が終わってやっと祖国に帰り、帝国主義時代の欧州列強の振る舞いへの反省から、カレルギー伯爵が提唱したのが「友愛主義」であったわけだ。
だが時代が時代だから、伯爵が提唱した友愛という概念はたぶんに理想主義的な一種のユートピア思想であり、それが国際政治の現実の上で部分的にせよ具体化するのはEUの誕生を待たねばならなかった。
EUでは伯爵は欧州共同体の思想的推進者として高く評価されている。
だが国際政治の現実が友愛の精神で動いているかどうかは別問題である。
カレルギー伯爵から祖父の鳩山一郎に受け継がれた友愛主義を、鳩山由紀夫首相が後継者を自任して唱えるのは個人の自由だが、日本という国家の運命を未だユートピア思想の域を出ていない抽象的概念に託すのは危険である。
思うに安部前首相の「美しい国」といい、鳩山首相の「友愛」といい、小泉前首相のワンフレーズ・ポリティクスを間違って取り入れたように思える。
小泉さんのワンフレーズは「郵政民営化」「抵抗勢力」など、極めて現実的、即物的で生臭い物だった。しかしだから成功したといえる。
政治家として高尚な理想を持つのは大変良い事だが、抽象的なワンフレーズで国を、ましてや外国の政府を動かすのは不可能である。
鳩山首相がそこを勘違いしている人物でない事を祈りたい。
そうでないと他に以前書かれていた方もいたように、核について話し合う場で何ら存在感を示せず、食事会で統一した見解もなく理解を求めようとして失敗するなんて失態は犯さないと思う。
外交なんて魑魅魍魎が住む世界、「友愛」と言ったところで利用されるか内心馬鹿にされるかくらいの効用しかないでしょう。
厄介なことにご本人に全く自覚がないようなのでこのままずるずる行きそうだし。
基地問題だけではなく環境問題もそう。
環境にやさしいというのは結構な話ですが、外交で環境を取り上げる場合、日本にとってどのようなルールで進めれば利益を得られるかというのも重要になります。
日本は結構環境対策に関する技術を持っています。しかし、今の世界ルールでは環境対策後進国の方が得をする内容となっています。これ自体は自公政権の責任でもあるのですが、鳩山首相は公式の場で環境問題に力を入れるということと友愛をセットにして演説してしまいました。
拍手をもらっても国益には全くつながっていません。
結局「具体的なワンフレーズ」というのは、内容の客観的評価にかかわらず「やりたいことが決まっている人」でかつ「どんなに反対があってもやり遂げなければならないと腹をくくっている人」でなければ提示できない代物なのでしょう。
「美しい国」にせよ「友愛」にせよ曖昧な言葉にすることで反発を和らげようという逃げの姿勢が内包されています。
逃げ腰な人が即断即決できるわけがないし、万人受けを狙った言葉は誰の心にも響かない。
鳩山首相は日本があるべき姿が何なのか腹をくくって国民に提示するべき。
基地問題については日本の立ち位置、米軍基地の日本から見た価値観を説明するべき。
子どもじゃあるまいし、締め切り間際に絵日記書いてる場合ではありません。
(アッチのマニフェストがこうなら、こっちもそれに対抗して・・・って)
根本的な国の執政が出来てない
だから、TVで民主党議員のシャバ僧が
「地元の意見なんか聞かなくてもいいんです」
なんていう、発言してしまう
(「山手線の内側」でガン付けんの間違ってんじゃねぇのか?
イイ年扱いて甘ったれんじゃねぇよ
隅田川にゃ、蓋はねぇんだ
チンタラしてねぇで、とっとと・・・)
地元(現場)の大変さを
詰め込みだけで勉強してきた
疑う事を知らない、純粋な目をした真っ直ぐの人間じゃ
国会議事堂とTV局以外の場所で
何が起きているかに、リアリティを感じない
理想と現実は違う
それに、一番早く気付いたのは''アメリカ''
―指導者として扱えない
―戦略的な話をすることが出来ない
―情報を共有することができない
具体的な「ビジョン」を持っていないのだから
「地図見てソレ決めただろ?バーカ」
って言われるワケ
エリート教育の弊害だな
我が国にとって由々しき事態だ
追記:下の漢字の書き間違え
効き×聞き○
は、そのままにしておきます
誰にでも間違いはありますから
選挙で勝つには、わかりやすい敵が必要だ、と聞いたことがあります。
郵政民営化では官僚だったし、政権交代では自民党(!)でした。
今度の敵は労働者の敵として「お金持ち」にしたかったんだと思いますが、首相がお金持ってばれちゃいましたね。
友愛以外のもう一声が欲しいですね。
ってイメージしたら、構図が解りやすいんじゃないかな・・・
「信じて」
「思いは伝わったのでは?」
「国民の皆様と一緒に、考えていこうではありませんか!」
去年から、ずーっと効き続けたフレーズだけど
誰も、信じてはいませんし
テレパシーは通じません
そもそも、庶民感情を逆撫でするような人が
同じ国民なのかも疑わしい
「経済」で、既に失敗をしているし
今回「軍事」で失敗をした
やがて「農業」でも失敗すると思う
(反民主ならば、既に''過去のVTR''に成るような''アピール''をしていると思う)
「やってきた結果」だけ、
贔屓目に探してみてのですが
このままでは
「首相官邸の風呂場を改修した」しか残りません
(官邸をジャングルにしたい、と言っていたし
どういうデザインになっている事やら・・・
天井からガネーシャ神が優しく微笑んでいるのかも)
後々、首相を引き継ぐ人も大変だな・・・