英語公用化の是非
- カテゴリ:仕事
- 2010/07/20 23:51:58
楽天とファストリテイリング(ユニクロ)が英語を社内の公用語にすると言って話題を呼んでいる。一方、広く海外展開しているホンダの社長が日本国内で英語を使うのは馬鹿げていると発言している。
日本企業が日本国内で日本人社員同士でのやり取りまで英語にする、という点については賛否両論あるようだ。
だが、これは必要性と社内の権力関係を抜きにして論じてはピントはずれな議論になる。
まず、日産が社内で英語を使うのは経営陣に社長を始め、フランスのルノーから派遣された外国人が多いからである。
カルロス・ゴーン社長自身、レバノン系ブラジル人とフランス人のハーフで少年期はレバノンのフランス人学校で、後にフランス本国でフランス語で教育を受け、フランス企業に就職、という経歴である。
ゴーン社長自身も英語が母国語ではないわけで、今の日産はルノーの実質的な子会社だから社内公用語をフランス語にされても文句は言えない。
しかし日本人でフランス語を学校で習った人は少数だから英語にしているわけだ。
社長自身が語学では苦労しているわけだから、社員も文句は言いにくいだろう。
ホンダの社長もアメリカで働いた経験が長く、しかしだからこそ「必要な時に英語を使うのは当たり前。何も国内でまで英語を強制しなくても・・・」という論調のようだ。
ここで一つ勘違いしてはいけないのは、企業としての成熟度である。
日産もホンダも半世紀以上の歴史のある老舗でかつ上場大企業である。
現在の社員の大半はブランド大学卒の頭脳優秀な人たちのはず。
一方、こう言っては失礼だろうが、楽天とファストリテイリングは新興企業。
社員も名門大学卒のエリートばかりではあるまい。そういう人材は若手にはいるだろうが、比較的古株の社員には「英語はちょっと・・・」という人が多いのではないか?
「うちの社員なら英語ぐらい出来て当たり前」とは言えない会社の場合、ある程度強制的に英語を使うように仕向けないと、いつまで経っても覚えないという可能性が高い。
楽天とファストリテイリングの英語公用語化はそういう目的からだと思う。
日本人は英語がアジア諸国の中でも最下位グループに入るぐらい苦手と言われる。
それは使う機会が少ないからである。商社マンや外交官など必要のある人ならともかく、その辺のサラリーマンや自営業者が英語を使う必要に迫られる事はあまりない。
インド人が英語を使えるのは、国内の民族の数が多く、英語が事実上の国語であるため。
東南アジアのエリート層が英語がうまいのは欧米人とビジネスをする機会が多く使わざるを得ないから。
中国人や韓国人のエリート層が英語ペラペラなのは、学歴をつけるためには欧米に留学せざるを得ない人が多いから。
生活や将来がかかっているとなれば、どこの国の人でもいやでも覚える。
日本人だって英語が仕事にどうしても必要な人は自然と覚える。
だからホンダ、日産の英語と、楽天、ファストリテイリングの英語はその意味が違うのである。
前二者はあれほどの会社だから出来て当然。なら日本国内でわざわざ英語使わなくても、という事になる。
後者2社は、上から強制しないといつまでも英語が出来ないままの社員が残りそうだから、荒療治をしようという意図なのだろう。
ついでに日本人が英語が苦手なのは、自国に多くの出版社があるからでもある。
英語が準公用語になっているアジア諸国では自前の出版産業を持たないか、それが非常に未発達な国が多い。
それなりに知的な内容の本を読もうと思えば英語で書いてある本を読むしかない。
また日本の大学にあたる高等教育機関で教科書を使おうとすると欧米の文献を使うしかない。自国語の専門的な本などあまりないからだ。
だからいやでも英語を覚えるしかなく、だからブロークン・イングリッシュであっても英語に慣れる。
日本人の英語下手は、日本語の出版産業がアジアでは例外的に発達し、また大学教育を自国語で受けられるという、他のアジア諸国から見ればうらやましい環境にあるから、という話の裏返しでもあるわけだ。
だからそういう国内の歴史的な背景を抜きにして、日本人はなんでこんなに英語がダメなんだ、と嘆くのはピントはずれだし、それぞれの企業の内部事情を無視して「公用語化は是か非か」と論じるのは意味がない。
外国語は、特に英語は世界中で通じるから、習得できるに越した事はない。
しかし、必要性の問題を抜きにして小学校から義務化したところで、大人になったらすっかり忘れました、という結果になるのがオチではないだろうか?
幹部が英語をあやつれなくて、部下に訳させるとでも?それはちょっとね。
三木谷社長の英語力を疑問視する人がいますけれど、英語が目的では無いと思ってます。
国内で英語を使用する機会がないというのもその通りですが、
学校での英語教育にも大いに問題アリだと思っています。
何しろ中学校に英語での口頭試問ができる先生が少なすぎる!
どこかのサイトで読んだのですが、特に複数の外国語の能力を
ある程度は身につけねばならない欧州地方にては
「一言語の学習時間がおおむね480時間を越えれば
不自由ながらも会話で意思の疎通が出来るレベルに到達する」
という目安があるそうです。
一般に通じない言葉のほうが秘密は流出しなさそうなイメージもあります。
でもやっぱり、時代の流れには勝てないのかと思ったりします。
楽天とユニクロの社内で英語を公用語にするのですね。
日本の英語の問題点を分かりやすく解説して下さってますね。
ユニクロは最近フランスにも出店するなど、世界に外国人労働者を多く抱えていると思います。
通達事項があるとき、ネットで世界中の支店に配信するときなど、やはり英語なんでしょうか。
その英語を日本語に直さなくて済むてことにはなりますね。
最近、高校や大学で一年程度の海外留学ができる学科や学部が増えています。
それで、日常会話程度ならなんなく話せる人は多いです。
こうした人の就職先にもなる可能性がありますね。
これらの企業で求められる英語は、大学入試を経て学んだ英語とは質的レベル的に違うかも知れません。
日本の英語事情は、jokerさんが指摘されてる通りだと思います。
日本人が英語で苦しむ時代はつづくと思います。
貴重な記事ありがとうございました。
「どのくらい話せるか」
より
「何が話せるか」
が大切なんですよね。
そういう意味では初期教育では母国語をがっつり仕込んどいてもらいたいというのが個人的見解。
自分の国を知らずに何話すのかとも思います。
会社でも幹部に英語強制するのはロスが多いようにも思われます。
今提案できるはずの意見を取りこぼす可能性が大きいですし。
強制するより英語ができないとできない事業を複数立ち上げて業務能力・語学とも問題なさそうな若手を抜擢するということを繰り返していたら、まともな幹部は語学ができないと任されなくなる事が多くなると察して自己学習するんでは。
楽天の社長の思惑通り事業展開できれば、自己学習しない幹部は早いうちに席がなくなるでしょうし。