Nicotto Town



ヨスガノソラとお役所仕事

ビデオに録り貯めていた「ヨスガノソラ」を今頃見始めたのだが、とんでもない事に気がついた。
これを東京都内で放送したのが、なんと東京メトロポリタン・テレビジョン(通称 Tokyo MX あるいは MXTV )だった事である。

このアニメ、18禁ゲームを原作にした物で、ストーリーそのものは美しくもせつない青春恋愛劇である。
だが、ゲーム同様、高校生同士とおぼしき主人公と同級生の少女の、セックスシーンがある。そのものずばりの性交のシーンである。

MXTVは、いわゆる独立系UHF局で、地上波だから、衛星放送やケーブルテレビのように視聴年齢制限のスクランブルなどはかけられないはずだ。
これを未成年に見られるような形で放送したとは驚きだ。

だが、もっと大きな問題が二つある。

一つはこの放送期間が10月から12月まで、12話だからほぼまる三カ月だった事。
この期間、12月15日に東京都が青少年健全育成条例を改正する直前まで、都知事と反対する出版社などが、激論を繰り広げていた時期にほぼ一致する。

よりによって、そんな時期にこんな内容のアニメを放送したとは・・・

だが、二つ目に、もっとあきれた事に、自治体としての東京都はMXTVの株主なのである。
民放の在京キー局は全国向けの放送だから、東京ローカルの番組を流す独立UHF局としてMXTVの前身が設立された。

実はその前身を設立したのは当時の東京都知事だった。
その後民間資本が次々と注入され、東京都の出資比率は下がったが、今でも東京都がMXTVの株式の4%ぐらいを保有しているはずだ。

東京都青少年健全育成条例の改正は知っての通り、マンガ、アニメなどで二次元の未成年キャラ、さらには「見た目が未成年に見える」キャラを性愛の対象として描写する事を阻止しようとしたものだ。

ヨスガノソラはまさしく、その「非実在青少年」のモロなセックスシーンがあるアニメを、東京都知事がそういった作品を撲滅すべく出版社などと全面対決している最中に、東京都が株主である放送局が、未成年でも見られる形で堂々と放送した、という番組だったのである。

石原都知事はもちろん、その取り巻きの都庁のお役人さんたちも、そんなアニメが放送されている事に、全然気づかなかった、という事になる。
お役所仕事、ここに極まれり、という感じだ。

東京都民なら知っているだろうが、MXTVは都知事の記者会見などを週に数回、長時間に渡って放送する番組枠を持っている。
だから、時期が時期だっただけに、以下のような事が起きていた可能性は大いにある。

MXTVで夕方から夜に、都知事が青少年健全育成条例改正の件で、石原節全開で「非実在青少年」のパンチラ、水着などのサービスシーンを含む「わいせつ図書」を撲滅する必要性を力説する。

そのわずか数日後、いや下手をすれば数時間後に、同じチャンネルで、まさにその「非実在青少年」同士の、あからさまなウッフン、アッハンが流れていた・・・

もしそうなら、これはもう笑い話では済まない。
我輩などはむしろ背筋がぞっとする。
これはもう、ジョージ・オーウェルの「1984」の世界なのでは?

条例の改正に反対していた出版社は別に「セックスシーンもろ出しのマンガ、アニメを青少年にも読ませる、見せろ」と言っていたわけではない。
大人の話だから、もろにそうは言わなかっただけで、本音はこういう事だったはずだ。

「規制の必要性には反対ではない。けど、頭の固い役人にそんな規制を任せたら、本来の目的からかけ離れた、とんでもないバカしでかすに決まってる」というのが、ぶっちゃけの本音だったろう。

今回のMXTVのヨスガノソラの放送、出版社などのこの心配が決して杞憂ではない事を、図らずも証明してしまったのではないだろうか?

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2010/12/28 06:34
出資しておきながら放送内容は確認していないんですね。
民間でもそんなもん?
CM枠はチェックしていると聞いたことがありますが、番組まで調べているのかな。

条例は通過しましたが本当に全てチェックできるのかな。
毎週・毎月、結構な数の雑誌、単行本が出版、アニメも放映されていますけど・・・




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