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北朝鮮:巨大劇場国家

北朝鮮に中国軍の部隊が常時駐留を始めたそうである。
今のところ軍事目的ではないらしい、との事だが物騒な雰囲気になってきている。

さて日本との間でも、拉致被害者の問題が完全に解明されておらず、北朝鮮を人道的な観点から批判する声が根強い。
だが、批判は正しいのだが、北朝鮮という国家の本質を知らないと、いくら声高に主張してもカエルの面になんとやら、でしかない。

今の日本では1950年に始まった朝鮮戦争が、理屈の上ではまだ終わっていない、という事実を知らない人がいるのではないだろうか?
韓国と北朝鮮は、現実上はともかく、国際法上は今でも「戦争中」なのである。

1953年に締結されたのは「休戦協定」であって、朝鮮戦争は理論上では今でも継続中である。
「とりあえず戦闘は中止」という宙ぶらりんな状態のまま半世紀以上経ってしまった、というのが朝鮮半島の実情なのだ。

そして、北朝鮮では「米韓連合軍とそれを裏で支援している日本」と戦争を続けている、というフィクションに基づいて国家全体が運営されている。
もちろん北朝鮮の一般国民だってこれを信じているわけではないだろうが、「今は戦争中」というフィクションを金ファミリーの独裁支配を正当化する根拠にしている。

戦争の真っ最中なら、その敵国に対して取る行動は何でもあり、である。
日本は「今現在、北朝鮮を侵略しようとしている敵国」の一つなのだから、情報収集のためにその国の人間を拉致して何が悪い?という理屈になる。

拉致が人道上許されないという主張は、国際社会に向けてはもっとやるべきだが、北朝鮮に直接言っても、相手は痛くもかゆくもない。

北朝鮮は国家全体が「今はまだ戦争の最中」という虚構の芝居を演じている劇場のような物なのだ。
それに「金ファミリーの指導の下だから、国家が侵略されずに存在していられる」というシナリオがつけ加わっている。

戦時下の国家だから、何年かに一度は何か華々しい「戦果」をあげて見せなくてはならない。
しかし、朝鮮戦争は理論上はともかく、現実的には1953年に終わっているのだから、その「戦果」もまたフィクションにならざるを得ない。

戦果が途絶えると金ファミリーの独裁支配の正当性の根拠が揺らいでしまう。
北朝鮮が核兵器開発に血道をあげているのも、時々新型ミサイルをこれ見よがしにぶっ放すのも、その「戦果」を作りださなければならない、という自家撞着に陥っているからだ。

昨年の延坪島という韓国の島への突然の砲撃も、そのフィクションのネタがそれぐらいしかなかったから、と考えれば話の辻褄は合う。

この「金ファミリーの支配を正当化するため」の「まだ戦争中」というフィクションが取り除かれない限り、北朝鮮が普通の国になる事はない。
だが、希望が全くないわけではない。

「藤本健二」さんという日本人をご存じだろうか?
金正日のお抱え料理人として、長年ピョンヤンで金ファミリーに仕えた日本料理の板前さんである。
なぜか金総書記に気に入られ、現在時期指導者と目されている「金正恩」の少年時代に、その世話係、遊び相手を務めたという人だ。

この人、その後ささいな事で反逆の疑いをかけられ、今は日本に戻っている。
この人が金正恩の人となりを詳しく描いた「北の後継者 キム・ジョンウン」という本を出している。
この本の内容が正確なら、金正恩、ただのバカ息子ではない事になる。

金正日が西側先進国をあまり知らないのに対して、金正恩は身分を隠してだが、スイスに長年留学していた。
留学先でポロリと自分の素姓を明かしてしまい、日本の新聞が報じたと言う事が二年ほど前にあったように記憶している。

藤本氏によれば、留学先の国の生活水準と北朝鮮の落差を目の当たりにして、国の将来を憂いていたという。

よく、同じ社会主義国という事で「中国、北朝鮮」と一緒くたに論じられるが、中国と北朝鮮は政治体制が根本的に異なる。
中国は時代遅れだとしても「社会主義国家」だが、北朝鮮は社会主義の看板を掲げた「専制君主国家」だと言った方が実態に近いのではないか?

逆説的に聞こえるかもしれないが、北朝鮮が早く本当の「社会主義国家」になるのが、日本にとっても問題解決の第一歩かもしれない。

アバター
2011/01/16 08:50
北朝鮮は、拉致問題を棚上げにしています。
アバター
2011/01/15 23:41
金正恩が外国の実情に詳しかったとしても、彼が名目上ではなく実質的な指導者足りえるかといえば疑問符がつきます。
金正日はそれなりの年月をかけて父に代わる立場を築いてきましたが、彼は多分同じような時間を取ることができないと考えられるからです。
代替わり後の混乱の責任を押し付けられて側近が暴走するのだけは避けてもらいたいものですが、こればかりは他国の問題ですからね~
中国共産党軍の進駐があるとするなら、代替わりの混乱を未然に防ぐことと、資源の確保が目的でしょう。




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