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首相は何故、再臨界の可能性を知っていた?

福島第一原発の事故の初期段階で、菅首相が1号機への海水注入の一時停止を命じた事が判明して大問題になっている。
だが野党は攻撃すべきポイントを間違えている。

注入停止を命じたのは「再臨界を心配して」という理由からだったそうだ。
そして東京電力が1号機の燃料の溶融、いわゆるメルトダウンを認めたのが5月12日。
この発表までは菅首相もメルトダウンの事実を知らなかったと発言してきた。

この二つは根本的に矛盾している。
再臨界を心配したというのなら、海水注入停止を命じた3月12日の時点で首相は1号機のメルトダウンの事実を知っていた事になる。

原子炉の型によって多少違うのだろうが、燃料棒というのは長さ4メートル、直径わずか1センチ程度というのが一般的らしい。
「棒」と言うより「針」のような形だ。

これを数十本束ねて四角い細長いケースに収めた物を「燃料集合体」と言う。
この集合体が数十本から数百本、原子炉の上から差し込まれ、もし内側から見たら天井から並んでぶら下がっている光景になる。

ウランのように核分裂する物質は、最低限これだけの量がないと、核分裂の連鎖反応が起きない、という最低量がある。
これを「臨界量」と呼ぶ。

ウラン235の一つが核分裂すると中から中性子が飛び出す。
これが2番目のウランの原子核に飛び込み、その核分裂を誘発する。
すると2番目の原子核から中性子が飛び出し、それが3番目のウラン235の原子核を・・・という具合に玉突き現象が放っておいても起きるようになった状態が「臨界」である。

通常時、原子炉を停めるには燃料集合体を順々に引き抜いて行く。
原子炉の中にあるウラン235の合計量が臨界量未満になれば、臨界反応は止まり、それ以上の核分裂は起こらなくなる。

しかし今回の震災時のような時にはそんな悠長な事はしていられない。
原子炉には「制御棒」という、中性子を吸収しやすい物質で出来たストッパーがある。
複数の制御棒が燃料集合体、あるいは燃料棒の隙間に差し込まれる。

こうすると中性子が行き来出来なくなり、実質的にウラン燃料は臨界量未満のいくつかの塊に分断される。
福島第一の1号機でも地震発生と同時に、この制御棒が自動的に作動し、臨界は止まったはずである。

だが、運転中の核燃料棒は二千度ぐらいの高温である。かつ重金属だから簡単には冷えない。
水にすっぽり漬けておいても完全に冷えるまで数年かかるそうだ。

福島第一原発の事故は、この「余熱」を冷却する装置が津波で壊されたために起きたのだ。
とてつもない余熱だから、既に原子炉内にある水などあっという間に蒸発してしまう。
次々にポンプで水を補充しなければならないが、このポンプが作動不能になって、水が干上がって燃料棒が過熱した。これが事故の始まりだった。

逆に言えば、燃料棒がメルトダウンしていないと思っていたのなら、再臨界が心配という理屈は出て来ないはずだ。
燃料棒がきちんと並んで、制御棒が、福島第一1号機の場合は、下から差し込まれていたのだから、その状態でウラン燃料が再び臨界を起こす事はない。

海水は塩分を含んでいるので、燃料棒の被膜を腐食させる危険性はある。
その結果「燃料棒が破損すること」を心配して海水を使って大丈夫か?と考えたと言うのなら筋は通る。

だが破損もメルトダウンもしていない核燃料が「海水を入れると再臨界する」という理屈は成り立たない。
再臨界が起きるとすれば、シナリオはただ一つ。

既に燃料棒が融けて制御棒の下に落ち、容器の底に溜まって一塊りになっている。
そして菅首相は、3月12日の時点でその事を知っていた、少なくともメルトダウンの可能性に気づいていた。

そうでないと「再臨界が心配だから」うんぬん、という話は出て来ないはずだ。
ならば、菅首相は震災の翌日には1号機の燃料のメルトダウンに気づいていたのに、5月になって東電が発表するまで、うそをついてきた事になる。

逆に菅首相が本当にメルトダウンしていないと信じていたなら、海水を入れると再臨界を起こすなどというのは、素人のたわごとである。
仮に臨界量以上のウラン235が容器の底に溜まっていても、燃料棒の9割以上は核分裂しないウラン238だから、その両者がごっちゃに混じり合った状態でそう簡単に再臨界は起きない。

その心配があったとしても、これとて、燃料のメルトダウンが既に起きているという前提での話で、東電が発表するまで知りませんでした、という菅首相の発言と完全に矛盾する。
我輩も原子力はもちろん科学技術全般のど素人だが、それにも劣る科学オンチぶりだ。

東電の原子力技術者だって馬鹿ではない。その専門家集団が「海水でもいいから入れないと」という決断をしたわけだろう。
その決断を原子炉の基本的な構造すら理解していないど素人が覆して、その結果最悪の事態を招いた事になる。

菅首相は3月12日の時点で1号機の燃料メルトダウンに気づいていたのか?
もしそうでないなら、「海水を入れると再臨界」という予測は、誰からどんな根拠に基づいて出て来たのか?

野党が追及すべきなのは「結果としての失策」ではなく、上記の2点である。

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2011/05/22 11:30
原子力の基本がわかってないんですよ。
どれだけ危険なものであるかということを。
国民をばかにしてる。
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2011/05/22 09:22
また、妙な地震が頻発してますよね?

これからの、地震予測から考えても、、次の事故がおきないような対策を進めているんでしょうか?

そっちの方が、、気になります。。停めただけじゃだめだって事はもう学んでるはずですよね?
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2011/05/22 04:00
解け具合で、どうなるか解らん代物です。

核の運動エネルギーを、電力に変換する“核談義”は、もう、いいんで
発電の仕組みを、義務教育からやり直せと。
http://p.tl/C8xg
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2011/05/22 01:34
燃料棒の温度が直ぐに下がらないのは、燃料棒の材質が重金属であるからではなくて、ウランの核分裂反応でできた放射性物質が、崩壊し続けて熱を発生するのが一番の理由です。制御棒での臨界制御とも関係ありません。
「福島第一の1号機でも地震発生と同時に、この制御棒が自動的に作動し、臨界は止まったはずである。」と書かれていますがウランそのものの臨界状態は地震発生時のスクラム動作(制御棒の緊急挿入)によって解かれていますよ。

ちなみに、高レベル放射性廃棄物(まさに使用済み核燃料)はガラス固化体にして処分しますが、数十年間高熱を発生します(できたてのガラス固化体なら200~300度程度位ある)ので、最終処分前に30~50年ほどモニタリングし、熱が下がるるの待ってから地下に埋蔵する等の最終処分することになっています。

管首相がコアメルトがどーとか別として、海水注入は別のリスクがあるのは事実。
海水にはさまざまな物質がが溶け込んでいますので、それが中性子に晒されることにより、新たな放射性物質ができてしまう可能性があるから(そういうことで原子炉の中にある水の管理には非常に注意が払われている)。海水を起因とする放射性物質ができてしまうと、修復のために原子炉に近づく人たちに新たなリスクを与えることになります。原子炉がさびるとかそういうこと以上にリスクがある行為です。管首相がどうこうという前に、最初に東電が海水注入をためらった理由はここにあります。海水注入以外に冷やす方法がないとなったので使った緊急手段ですが、極力避けるべき方法だったのは事実です。

軽水炉の場合は、水を減速材としていますし、ウラン235の濃度も高くないので、水が抜ければ臨界が続くほどの核分裂反応は起きないと言われています。では、なぜ水を入れ続けているのかというと、燃料棒が溶けてしまうと、後の扱いが困難になるから。よく言われるチャイナシンドロームなんて状態が起きなくてもです。炉内に留まったとしてもどうやって取り出すかさえ困難。コアメルトが起きたことが確定的な今、次をどうするかだと思います。
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2011/05/21 23:58
素人ですら「あれは単なる水蒸気爆発です」という報道をウソだろうと思っていたくらいなのですから、首相という立場にいて考えなかったはずはない。
どういうわけか菅首相は「自分は原発には詳しい」と思っておられたようだし。
つまり、菅首相はメルトダウンについて知っていたか、あるいは聞かされていなくても確信していたのでしょう。

東電の技術者が「放置するより海水であっても入れたほうがよい」と考えていたのを止めた理由はわかりませんが。

確かに上記2点は追及されるべきでしょうね。




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