ハチのムサシは死んだのさ
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- 2011/06/13 12:38:59
平田隆夫とセルスターズのリーダーだった平田さんが亡くなったそうである。
享年72歳。合掌。
1972年に「ハチのムサシは死んだのさ」というフォーク調の曲で一世を風靡した。
聞いたことぐらいはある、という人は多いだろう。
だが、この曲の歌詞、一体何のことやらさっぱり分からないでいた。
歌詞全文はこのサイトに表示されているので、知らない人はこちらへ。
↓
http://www.uta-net.com/song/3623/
「ムサシ」という名のハチが「お日様」に戦いを挑んで「焼かれて落ちて死んだ」という内容なのだが、メルヘンにしては変な展開だし、メロディーはともかく、この歌詞の何が当時の若者にうけたのか、さっぱり分からなかった。
が、最近読んだ本で面白い解釈を知った。当たっているかどうかは分からないが、そうだとすると非常に含蓄のある歌詞だった事になる。
これは戦後左翼学生運動の歴史の比喩であり、いわゆる全共闘世代へのレクイエムなのだ、という説だ。
若い人のために一応説明しておくと、1950年代から1970年にかけて、当時の大学生を中心に「日本で社会主義革命を成功させよう」という運動が大真面目に行われた時代があった。
戦前は社会主義、共産主義は徹底的に弾圧され、第二次世界大戦の日本敗戦でアメリカに占領され、民主化の一環として思想、言論の自由も保障された。
当時はソ連が率いる共産主義陣営が経済力、科学技術レベルでも、アメリカ率いる資本主義陣営と互角に張り合える力を持っていて、日本でも社会主義革命を起こそうと本気で考えていた人たちが大勢いた。
しかし、米ソ両陣営が世界の覇権をかけて争う、「冷戦時代」に突入し、1950年の朝鮮戦争を境にアメリカの日本に対する態度が変わり、日本の政府は資本主義陣営の一員になる事を決断。
社会主義の自由は保障されていたが、世間全体では「資本主義による経済的繁栄」を受け入れる人が多数派になり、社会主義革命は日本では現実性を失いつつあった。
だが、それに納得できない若者世代の一部が社会主義を信奉する政党や労組などと連携して、大規模なデモや警官隊との武力衝突を各地で引き起こした。
この左翼革命運動勢力はアメリカに幻滅し、1960年に日米が安保条約を改正するのをデモなどで阻止しようとしたが失敗。
1970年に再び安保条約が改正されるのを実力で阻止しようとしたが、もうこの頃には同調する若者は少なくなっていて、結局失敗。
以後、左翼革命運動は下火になっていく。
また、一時は全学連、全共闘などの大きな組織の下で団結していた革命運動家も、内輪もめの結果いくつもの小さな集団(セクト)に分裂していった。
そのうちの特に過激なセクトのいくつかが、仲間内のリンチで殺人事件を起こしたり、浅間山荘という施設にたてこもって警官隊と衝突したり、飛行機をハイジャックして北朝鮮に亡命したり、といろんな事件を起こした。
現在のイスラエルに渡って、パレスチナ人のためにという名目でイスラエルの空港で自動小銃を乱射する、という事件を起こしたセクトもあった。
これはもう一般人にはついて行けない世界で、既に経済成長期に入って豊かになることを重視していた日本人全般から孤立し、各セクトは次々に自滅していった。
これがおおまかな「戦後左翼革命運動」の歴史である。
「ハチのムサシ」はこの時代、独りよがりではあれ、「世の中を良くする」という崇高な使命感を持って革命運動に参加した当時の若者世代の象徴。
「お日様」はそれを最終的に挫折させた政府、権力の象徴、というのが我輩が最近読んだ解釈である。
あるいは「お日様」は理想論では動かせない、変える事のできない「世間の現実」という物の象徴だったかもしれない。
戦後左翼運動が事実上とどめを刺されたのが1970年。
この歌が発表されたのが1972年、というタイミングを考えると、こういう解釈も充分成り立ちそうである。
なお、当時大規模デモなどには、必ずしも筋金入りの左翼ではない一般の大学生も多く参加していた。
しかし「日本の社会主義化」を目指す運動は後から見れば非現実的であり、大多数は以後、就職などの現実に直面して運動からは去って行った。
だが、若者世代が世間の現実に対して漠然と「何かが間違っている」と感じて、何か「世のため人のためになる事」をしたいという願望を抱くという傾向はいつの時代も変わらないのではないかと思う。
昨今では若者世代の「世の中をなんとかしたい」という漠然とした想いが、タイガーマスク運動だとか、東日本大震災後のボランティア熱となって現れているのではないだろうか?
だとすれば、そのエネルギーがより望ましい方向に向かうように、大人世代は注意深く見守ってあげる事が大事だ。
若者世代の中から優れたリーダーが出るのが一番いいのだが。
今の若者には「21世紀のハチのムサシ」にはならないで欲しい。
また、長く生きたいなら、蜂の毒を使うしかあるまい。
その年代は団塊の世代とかなり近いはず。
ということは、今の各界の指導者の年代ということで・・・
昨今の迷走と首相の迷言を聞くにつれ、昔の亡霊を見ているような気分に陥っています。
そういう解釈の歌だとは知りませんでした。
表現は違うけど イカロスと同じかな。
あの当時の若者たちへの風刺とレクイエム……
子供心に変な歌だな〜と思っていました。
父の名前が、ムサシだったので。。。。^^;