Nicotto Town



スケバン刑事と電力危機

漫画家の和田慎二さんが61歳で亡くなった。合掌。
今の時代では「早すぎる死」と言っていいだろう。どうも石ノ森章太郎さんといい、一世を風靡した漫画家は早死にする傾向がある気がする。
全盛時代に無理をしてきたからだろうか。現代の漫画家さんたちもお体はお大事に。

和田さんの代表作といえば「スケバン刑事(デカ)」だが、我輩はやはりテレビドラマより原作漫画の方が好きだった。
昔の漫画作品というのは、設定が非常に社会性に富んでいる物が多かった。

漫画版では麻宮サキは二度死んでいる。
前半の宿敵である海槌三姉妹と最後の決戦を巨大な船の上で行い、勝ったものの本人も海中に消え、死んだと思われていた。
だが、たまたま近くに居合わせたアメリカの大富豪に救助され、彼の娘という偽りの記憶を移植されてニューヨークで普通の女の子として暮らしていた。

それを神恭一郎と沼重三が探し出すのだが、あまりに幸せそうな暮らしぶりに、そのままにしておこうとする。
だがある事件に巻き込まれて麻宮サキとしての記憶がよみがえり、再び日本で学生刑事に戻る。

次の敵は学生革命家集団みたいな組織だが、これは実は日本支配を狙う政界の黒幕みたいな老人に利用されていただけの存在だった。
この老人がいよいよ日本支配計画を開始した時に使われた手段が、なんと「電力危機」だったのだ。

この学生集団があちこちで送電線を破壊したため首都圏全土が蒸し暑い真夏の夜に大停電に陥り、各地でパニックが起きる。
だが送電を回復する手段はあらかじめ用意してあり、この老人は後から正義の味方面して登場し、手駒である学生集団を自ら壊滅させ、東京を大停電から救った英雄として政界に君臨する、という段取りであった。

しかし麻宮サキと仲間の活躍でその筋書きは阻止され、しばらく後サキは老人の隠れ家に乗り込んで最後の対決をする。

その何日か後、サキがもともと通っていた高校の卒業式が行われる。サキも卒業生として出席するはずだったが姿を見せない。
だが式が終わった後になってサキが校庭に駆け込んできて、グラウンドで沼重三から卒業証書を手渡される。

彼女はそのまま校門から歩き去って行き、これでハッピーエンドかと思いきや、最後の戦いでサキと行動を共にした男の子がその直後に沼重三たちの前に現れ、サキはあの決戦の場所で死んだ、自分がそれを確認したと言う。

あわてて校門を飛び出した沼の目の届く距離に麻宮サキの後姿はどこにも見えない。
卒業証書を受け取って行った彼女は、幽霊であったわけだ。
このラストシーンは当時の少女マンガには珍しいパターンではなかっただろうか。今でも忘れられない悲しいシーンであった。

さて、首都大停電が日本支配の作戦だったというくだりは、今のご時世なんとも笑いごとではない。
連載が終わったのが1980年代前半だったと記憶しているから、和田さんの話の設定の巧みさは現代でも十分通用する。

もっとも和田さんはテレビドラマ版の「スケバン刑事」を見て怒り狂っていたそうである。
麻宮サキのイメージが自分の原作とあまりにも違う、という理由だったそうだ。
原作の持ち味を保ちつつ、設定を現代風に直してリメークして欲しい作品の一つである。

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2012/05/01 12:53
私はピグマリオが好きです。
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2011/07/09 19:15
本当に訃報を聞いた時はショックでした。
「スケバン刑事」以前も「銀色の髪の亜里沙」「オレンジは血の匂い」
等サスペンス風の作品が外国映画みたいでとても好きでした。
TVドラマ版はアイドルの登竜門みたいになってて、ちょっと残念でしたね。
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2011/07/08 09:16
漫画の方は、拝見したことがなかったので、良くわかりました^^
ただ、リメークについては、少し反対かな。
前作を知っていてリメーク作品を観てがっかりした記憶の方が
圧倒的に多いです。
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2011/07/08 00:40
スケバン刑事は好きで、見ていました。
和田さんのご冥福をお祈り申し上げます。
天国に行っても、良い作品、書いてるでしょうね。
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2011/07/07 22:00
残念です。可愛い絵に突飛な設定でも読者を感動させる漫画家さんでした。
そういえば 漫画家の徹夜自慢を批判してた水木しげるさんは長生きです。
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2011/07/07 15:22
和田先生の御冥福を謹んでお祈りいたします。

スケバン刑事、原作は知りません。
でも、ブログの中のあらすじを読んで相当面白いと思いました。
漫画のドラマ化というのは、難しいものですね。

こてんこてんこの原作者もアニメ版に怒り狂ってました。(正確には、スポンサーに逆らえないアニメスタッフに。)

昭和の1ページがまた閉じてしまった。昭和は遠くになりにけりです。
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2011/07/07 14:37
スケバン刑事、繰り返し繰り返し読みました。
かっこよかったなあ麻宮サキ。訃報を聞いてしみじみ夢中になっていたころを思い出しました。
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2011/07/07 00:09
和田慎二さんの訃報はショックでした。
マイナーですが、『超少女明日香』という作品が好きで、子どもの頃よく読んでいました。
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2011/07/06 23:39
仮面ライダーとかデビルマンも原作とテレビでは全く違う話になっていますよね。
(風の谷のナウシカなんて原作者とアニメ監督が同じでも違う話になっています。)
映像化するというのは、見る人にとってよりリアルになる分、いろいろ制限がかかるのでしょう。

和田さんは自身の漫画のことで出版社ともめたこともあったはずです。
それだけ作品に対する思い入れも深かったのでしょう。
大きなストーリーを書ける人だっただけに惜しい。

ご冥福をお祈りいたします。
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2011/07/06 21:38
テレビはテレビの人気というか
良さがあったから、あれだけブレイクしたんでしょうけれどね。
原作のイメージ通りの「スケバン刑事」も見てみたいものです。
和田さんの早すぎる退場に――合掌。




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