終焉の観察
- カテゴリ:仕事
- 2011/08/17 22:34:29
SF作家の筒井康隆さんに有名な逸話がある。
まだサラリーマンが本職の、駆け出しの後輩作家の勤め先がつぶれそうになった。実際倒産したのだが。
青い顔で相談を持ちかけて来た後輩に筒井さんはこう言ったそうである。
「倒産までの経緯をようく観察しておきなさい。こんなチャンスは滅多にない」
こういう物の見方、考え方が出来る人だから作家になれるわけだ。
かくいう我輩も最近自分の職場をそういう目で見る事にしている。
我輩の勤め先はもう「構造不況業種」と言っていいんじゃないか?という業界で、会社そのものは倒産する心配はないが、かなり経営は苦しい。
以前にも書いたが、我輩の在籍する事業部門はいつお取りつぶしになっても仕方がない状態だ。
つぶれていく組織の有様といのは、こういう物なんだな、という視点で見ていると、「人間というのはどこまで愚かになれるか」が分かって、いっそ興味深い。
世間はお盆休みが終わって、さあまた仕事だという人が多いだろうが、我輩はもう十年近くお盆休みも正月休みも取った事がない。
年中無休に近い業種なので、全員がそろって長期の休みは取れない会社なのだ。
だから夏休みを取ろうと思えば、同じ仕事を分担している人たちの間でスケジュールを調整しないといけないのだが、誰も調整をしてくれないので休みを取りたくても取れない。
我輩と分担している仕事を持っている人があと二人いるのだが、うち一人だけは休みを取った。
さてその仕事はどうしたのかと言うと、二週間分作り置きしておきました、という事だった。
我輩の職場のその製品は「その時々の最新の情報」を顧客に届けるサービスである。
担当者がちゃんと複数いるのに、休みを取るからと言って二週間前の「最新情報」を売りつけたらエンドユーザーは「客を馬鹿にしてんのか?」と思うはずだ。
交代で休みを取って、いない人の分の仕事を出勤している人が順に肩代わりする。
こんな簡単な調整を、誰もやろうとしないのだ。
一応「監督責任者」というのは別に一人いるのだが、こんな算段ひとつ出来ない人だから、我輩は今年も夏休みを取り損ねた。
ここまでなら我輩個人の愚痴で済むのだが「つぶれつつある組織」の本領はここからである。
我輩が夏休みの申請を出さなかったからという理由で、自分も夏休みを取ろうとしなかった馬鹿が大勢いたのだそうだ。
アホか?我輩はその責任者が一言も何も言って来なかったから休みたいのに休みを取れなかっただけだ。
どうやら「夏休みを取らない」=「がんばっている」と勘違いしたらしい。
中には「夏休みを取ると次の契約更改の時にクビになる」と心配していた人もいたらしい。
会社の名誉のために言っておくと、そんな事は全然ない。
むしろ今年は社長から直々に、全ての部署で「しっかり夏休みを取れ」と指示が出ていたぐらいだ。
「休む」=「悪い事」という図式が未だにまかり通っている企業組織に先はない。
いくら社長がそういう先進的な考えで指示を出しても現場レベルで無視してしまうような組織ならなおさらだ。
我輩の職場で他にきっちり長期の夏休みを取ったのは、部署内部の休暇の申請状況をチェックしようともしなかった部長だけ、という有様であった。
日本のサラリーマン、特に落ち目の組織の社員というのは、どうしても自宅と会社を往復するだけの毎日になりやすい。
だから会社の外に目が行かないし、その結果顧客の視点や世の中の動向に疎くなり、ますます業績が下がるという悪循環に陥りやすい。
我輩の勤め先の部署がもろにこのパターンにはまっている。
昔日本のサラリーマンの働き方を「遅れず、休まず、働かず」と皮肉った評論家がいたが、今の時代にもそれは変わっていないようだ。
休みを取らないから偉いとか、残業時間が長いほどがんばっている証拠とか、そんな古い考え方はいいかげん捨てないと、ポスト3.11の時代には生き残れない。
先日他界された小松左京さんといい筒井康隆さんといい、SF作家には知られざる名言を残している人が多い。
うちの会社も基本年中無休ですが異動になる前の部署では休みを申請するとイヤ―――――――な顔をされて休みにくかったことを思い出しました。ええ、合併もリストラも効果なく大赤字のまんまです。すぐにはつぶれない業種なんですけど。
私も仕事に埋もれず会社を良く見とこう。
がんばり過ぎたらダメですヨォ~
作家さんてなんでも観察なんですねぇ♪
たちが悪いのは、どちらも金銭的には変わりないということ。
後者を減らさないと前者のテンションは下がる一方なのですが、これがなかなか・・・
本当に有益な人材ですよね。。。
これからの将来、会社に勤めることを考えると
自分がそういう人間かどうかが不安です……
そのことばの意味、とてもよく分かります。