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戦争を防ぐために戦争を知る

自衛隊の次期主力戦闘機がF35でほぼ決まったようである。
ある全国紙はこれを1面トップで報じていた。
このあたり、いい意味で時代が変わったものである。

一般の日本人の戦争、兵器に関する知識、認識は第二次世界大戦のレベルで止まっている場合が多い。
特に戦争反対、日本の軍事大国化阻止を叫ぶ勢力ほど最新の武器兵器の知識に疎い。
武器、兵器、戦術の進歩を知る事こそが、戦争防止には不可欠である。

冷戦時代までの米軍やソ連の航空戦力の構成はおおむねこうだった。
まず速度は速いが軽武装の「偵察機」が敵地上空を飛び、敵軍の布陣を報告。
次に敵航空機を撃墜する能力を重視した「戦闘機」が突入して敵の航空戦力を壊滅。
空戦能力に劣る小型爆撃機(攻撃機とも呼ぶ)が大量に侵攻して敵の地上基地、地上部隊を壊滅。
都市を丸ごと制圧する場合や広範囲に散在する敵勢力を掃討する場合は、B-29から発展した大型爆撃機で無差別絨毯爆撃を行う。

ソ連崩壊後は戦争と言えば地域紛争や内戦が主流になり、かつ戦争の仕方も変わって来た。
もちろん「人道的な戦争」なんてものはしょせんあり得ないのだが、非戦闘員を大量に巻き添えにする戦術は国際世論の観点から難しくなってきた。

その転換点となったのが1991年から始まったユーゴスラビア紛争である。
あれには米軍を主体とするNATO軍が大規模な軍事介入をして戦争状態になったが、それ以前の戦争とは戦術的に決定的な違いがあった。

NATOの軍事介入は「セルビア人がクロアチア人などの少数民族を虐殺しているので、後者を助ける」という大義名分を掲げて行われた。
だから無差別攻撃は論外である。助けるべきクロアチア人などを大量に殺害してしまうからだ。

そこで爆撃するにしても、誘導ミサイル、精密誘導爆弾など、発射、投下した後にコントロールして軍事施設や「悪の独裁政権」の建物だけをピンポイントで破壊するという戦術を取る必要があった。

もちろん誤爆や巻き添えでセルビア人の一般市民や助けるべき少数民族も少なからず死傷しただろうが、少なくとも国連などの外交の場では「非戦闘員を傷つけないよう最大限の努力はしました」と胸張って言えるような「戦争の仕方」をしないといけなかったわけだ。
そうしないとNATO軍は自分で掲げた「正義」を自分で否定する事になったからだ。

この流れは2001年からのアフガニスタン攻撃、2003年のイラク戦争でも引き継がれた。
前者は9/11テロを起こしたアル・カイダを支援しているとされたタリバン政権を、後者はサダム・フセイン独裁政権を打倒する、という大義名分だった。
従って救うべき両国の一般国民を大量に巻き添えにするような戦術は取れない。

現実がどうだったかはともかく、バクダッドを制圧する際にも「軍事拠点だけをピンポイントで破壊する」ための兵器が動員された。
イラク戦争ではB-2ステルス爆撃機も出動したが、これは広大な砂漠地帯でイラク軍の戦車部隊を攻撃するため。

第二次大戦での東京大空襲、ベトナム戦争での北爆のような、無差別絨毯爆撃をバクダッドやカブールに対しては、主権国家対主権国家の全面戦争であったにも関わらず、少なくとも欧米諸国はもう行えないのだ。
まして核兵器の使用は問題外である。

このため航空兵器も、コストの問題もあり、大型爆撃機は出番はなくなってきた。
偵察機、戦闘機、攻撃機という最低3種類の軍用機を別々に開発して運用するコストも削減する必要が出て来た。
なぜなら、21世紀の戦争は「敵国を焦土にしてでも勝てばいい」という物ではなくなってきたからだ。

そのため、戦闘機がミサイルや中型爆弾を多数携行できる「戦闘攻撃機」に変わって行った。
今回FXの候補だったFA-18E/Fはこのタイプである。

さらに昔の偵察機並みの高性能レーダーを積んで、3種類全ての役割を1機種でやってしまおうというのが「多目的戦闘機」である。
F35とユーロファイターはこの多目的戦闘機であり、それぞれ第5世代、第4.5世代の戦闘機と呼ばれる。
より最新型のF-35を日本は選んだという事だ。

こうして見ると自衛隊は世界の「戦争、戦闘」の行い方の変化をきちんと把握しているようだ。
仮に日本がどこかの国の軍隊と、自衛のためであれ、戦闘状態になった場合、自衛隊の戦闘機は軍事目標だけをピンポイントで攻撃できる物でないといけない。

自衛隊や米軍の地上基地、艦隊などと自動的にレーダーなどの情報を共有できる「データリンク」機能が高いF-35を持つ事で、万一戦争状態になっても「局地的、短期間」の戦闘で終結させられる能力が高まる。

非戦闘員の巻き添えを可能な限り避けるという、欧米諸国の現在の「戦争の標準戦術」を日本が採用している限り、その日本に核兵器を使用した国は国際社会で非難の的になり孤立する。
これこそが中国や北朝鮮の核兵器に対する最大の抑止力になり得る。

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2011/12/15 20:52
開発がおくれて先延ばしになりそうですね。
張子の虎にならなければいいのですが…
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2011/12/14 15:48
大震災以降、中国の海軍が日本近海をうろうろしてみたりロシアの航空機が領海の周辺を回ってみたりときな臭い行動が多かっただけに牽制の意味合いも含まれているのでしょうね。
「侵略はしないけど、そっちが日本国内に侵攻するなら容赦はしないよ」っていう。
そのためには他の軍備と連携を取りながら効率的な行動を取れる機種でないと意味がありませんから、多少お値段が高くとも配備する価値はあるのではないかと。

周辺国が日本のように小春日和な国ばかりなら、そんなものはいらないんでしょうけどね。
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2011/12/13 23:12
誰も望まないけれど、戦争の可能性は否定出来ませんから、
F-35のような兵器を装備することは意味があると思います。
とても、勉強になりました。
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2011/12/13 21:22
そうなのか、、、

でもな〜〜今そんな時期なのかと、、、他にやることあるだろうと、、思うのは、、私だけ?




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