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原発事故の教訓を考える時期

福島第一原発事故はそろそろ「事故を起こした事」に対する批判一辺倒から、どんな教訓を学ぶべきか、を考える時期に来ていると思う。
確かに「事故収束」という言葉はいかがなものか?とは思うが、今後各地の原発を再稼働させたいなら、何がどう改良されたから安全が高まったのかを、素人でも分かるようにしないといけない。

ストレステストはしょせんシミュレーションだし、原子炉の専門家にしか理解できない「改良」をいくらアピールしても、原発立地自治体の首長や住民は納得させられないだろう。
マスコミ、特にNHKなどのテレビが事故の再現、検証番組をやってきたが、2点だけ素人にも分かりやすい改善策があり得る。

一つは非常用復水器の改良である。
この装置、日本の原発関係者は「イソコン」と呼んでいて、簡単に言えば原子炉の炉心から直接パイプがつながっている巨大な筒型の水タンクである。

今回の様に炉心が過熱して大量の高温水蒸気が発生した場合、その蒸気をイソコンに送り込み水を潜らせて液体の水に戻し炉心に送り返す。
少なくとも福島第一の1号機の場合、イソコンが事故直後からずっと稼働していればメルトダウンを7時間遅らせる事が出来たと言う専門家もいた。

問題は、イソコンと炉心を繋ぐパイプの弁が非常時には自動的に「閉」になるよう設計されている事だ。
福島原発だけでなく、日本の原子炉のほとんどがこのタイプらしい。
地震の揺れか全電源喪失時にイソコンの弁が自動的に閉じてしまい、復水機能が働かなかったため、メルトダウンが早まった可能性が高いそうだ。

ならばイソコンの弁を、何か異常が起きた時は自動的に「開」になるよう改造すればいい。
これは既存の原子炉でも出来るはずだ。

また福島第一ではイソコンの弁の開閉状態が、中央制御室のランプが赤か緑かでしか確認出来ない構造だった。
全電源喪失で制御室も停電してしまったため、電気で動く計器も全て使用不能になってしまい、イソコンの弁が閉じているのに気づくのが遅れた。

ならばイソコンの弁の開閉を機械的に表示するよう改良する、またはそういう装置を併設する。
また弁の開閉は手動でも出来るのだが、福島第一1号機の場合、弁のある場所の放射線量が高く作業員が近づけなかったらしい。
弁の開閉ハンドルをもう一個、原子炉建屋の外とかに置いておけば、防げる問題だ。

二つ目は水位計の改良である。これも機械式を併設する事で解決できるのではないか?
日本のほとんどの原子炉の水位計は、炉心内部に水がどれぐらいあるかを、水圧で検知する仕組みになっている。
圧力容器から飛び出した配管内部に圧力計があり、水圧を計って炉心内部の水位を間接的に計って制御室のパネルに表示する。

ところが1号機の場合、全ての水が蒸発して高温高圧の水蒸気になり、この水蒸気の圧力が水位計に伝わり、作業員は「まだ水は充分残っている」と思い込んでしまった。
実際には水は全て蒸発して燃料棒が露出し、空焚きの状態になっていたにも関わらず、である。
水位が正確に分かっていればこの時点で海水を注入する、という決断も出来たかもしれない。

だから全く別の仕組みで動く水位計を開発して取り換えるか、併設すべきだろう。
水洗トイレの水タンクの中にあるような、水に浮くボールで水位の高さを計るような計器を作れないだろうか?

福島第一1号機の計器はほとんどが電気で動く物だったから、全電源喪失後にはみんな役に立たなくなった。
電気ではなく、歯車やシャフトで動く機械式の計測器が一緒にあれば人間の目視で異常事態にもっと早く気づけたのではないか?と思えてしょうがない。

だから福島第一原発事故から学ぶべき最大の教訓は「ハイテク装置とローテク装置を組み合わせるのが一番の安全策」という事にはならないだろうか。
ハイテク、デジタル、電動だけにしてしまうと最新機器は万が一の時役に立たない危険がある。

さらに、地震や津波やテロに襲われた場合には「少々の放射性物質の放出をためらわない」事も大事だろう。
福島第一1号機でも、一度はイソコンの弁を開いたのに、タンクが破損して炉心の放射性物質が漏洩する事を恐れて再び弁を閉じてしまったそうだ。

結局ベントはやったのだし、メルトダウン、水素爆発の結果放出された放射性物質の量と比べれば、早い段階で「必要最小限の放射能汚染」を起こしていた方が、被害はもっと小さくて済んだだろう。

日本は脱原発するとしても、原発プラント、技術の輸出は続けられる。
ベトナムのように既に買うと明言している国もある。
そして日本の原発の輸出先には民族対立を抱えている国や国際テロリストの標的になり得る国もある。

福島原発事故は世界中のテロリストにこう教えてしまった。
「原発を爆発させたいなら大がかりな攻撃は必要ない。炉心冷却用の電源を全部壊せばフクシマを再現出来る」

将来的にこれを防ぐのが日本に出来る人類への償いである。





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