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ホルムズ海峡に自衛隊?大丈夫か?

野田首相がホルムズ海峡に自衛隊を派遣する事を検討するべきだと言っている。
アメリカが非公式に要請したらしいし、日本に輸入される原油の80%が通過する場所だから、日本にとっても重大事だというのは理解できる。
だが、今回だけは「何をしに行くのか?」をはっきりさせた上で派遣しないと、後々大ごとになるぞ。

今回ホルムズ海峡が封鎖される危険が実際に起きるとして、それはイランという主権国家による軍事行動としてである。
欧米各国が軍隊でそれを阻止する場合、たとえ全面戦争にはならなくても、それもまた軍事行動である。

そこへ自衛隊を派遣する場合、憲法第9条第1項にもろに抵触する危険がある。
一番無難なのは掃海艇の派遣だが、今回は過去の機雷除去とはわけが違う。
海上自衛隊は過去何度も海外へ機雷除去、いわゆる掃海に派遣されているが、それは全て戦争なり紛争なりが終わった後の後始末としてだった。

イランがホルムズ海峡を封鎖するとしたら、手段は二つ。
一つは機雷を航路に大量に撒く事。
ホルムズ海峡はタンカーが通過出来る海域が一番狭い所で幅6キロだから、そこに集中的に機雷を撒かれると一般の船舶は危なくて通れなくなる。

もう一つは軍艦を出動させて、砲撃やミサイルで威嚇射撃をする事。
事態がエスカレートすると実際に商船を攻撃するかもしれない。

機雷を敷設し始めた時点で米軍は軍事介入に踏み切るだろう。
この段階で自衛隊の掃海艇が機雷を除去すると、「武力の行使」になってしまうのではないか?
かと言って「戦争が終わったら機雷除去に行きます」と米国に言えるのか?

イラク戦争、アフガン戦争の後で各国の軍艦にやったように、補給艦を派遣して燃料を補給してあげる、というのもある。
だがインド洋での補給活動は、イラク、アフガニスタンの政府、正規軍との戦闘は終わった後での、「ゲリラなどの私的武装組織」との戦いに対する後方支援だった。

つまり本番の戦争のための後方支援ではないし、多国籍軍が戦っているのは戦争が公式には終わった後もなお武力闘争をやめない私的集団だから、という理由で自衛隊の派遣を正当化する事は可能だった。

だが今回はたとえ補給艦でも、ホルムズ海峡に派遣すると「本番の戦争での片方への支援」になる。
インド洋の時とはわけが違うのだ。
そこを分かっていて派遣を検討するのだろうか?

憲法第9条がある以上、戦闘艦艇を派遣してイランの海峡封鎖や戦闘行為を抑止する、という事も出来ない。
イランへの軍事行動は、ロシアと中国が間違いなく反対するから国連安保理事会の承認は得られない可能性が高い。
従って「国連平和維持軍(PKF)」として自衛隊が行くのは不可能だ。

仮に国連から正式な要請を受けたとしても、自衛隊がそれをやると「武力による威嚇」に該当してしまう。
紛争当事者の一方の意思に反して、もう片方に肩入れする事になるから、憲法以前に紛争当事者の「停戦合意」が必要という、PKO参加5原則に抵触する。

米国と欧州の派遣軍が実際にイランと戦闘を始めたら、PKOでも何でもない、まさに国際紛争に直接参加する事になってしまう。
たとえ日本への原油輸入がストップして大混乱が起きるとしても、それは日本の「国益」であって、それを守るためにイラン攻撃を支援したら「国際紛争解決の手段」としての「武力の行使」に他ならない。

イランと欧米諸国の間で戦争を回避でき、手打ちが済んだ後で自衛隊が行くのならいいが、その前に自衛隊を派遣するのは今度こそ憲法第9条違反を世界中が注視している中でやってしまう事になる。

それを承知で行かせる気なら先に憲法第9条を改正すべきだが、憲法改正には何年もかかる。
到底今回のホルムズ海峡危機には間に合わないだろう。

自衛隊を派遣できる名目が立つとすれば、非武装の輸送艦か支援艦を派遣して、負傷者救助などの救難活動がせいぜいだろう。
これなら「国際赤十字活動と同じ」と言い張る事は可能だ。
ただし、この場合、イラン側の負傷兵も平等に救助救出しないといけない。

そうしたとしても、イラン軍の攻撃の的にされる危険は避けられない。
もし米軍とイランが開戦したら、シリアなどのイランの友邦の軍隊や、レバノンのヒスボラなどの民兵組織が参戦してくる可能性も否定できない。
それらの軍隊、武装勢力が入り混じった戦闘地域でナイチンゲール役に徹する事が可能だろうか?

自衛隊の安全を確保するために、あるいは憲法第9条違反になる事を避けるために、戦闘中に日本の自衛隊だけが撤退したら、米国は絶対それを許容しないはずだ。

過去の自衛隊の海外派遣とはわけが違うという点を、政府はちゃんと分かっているのだろうか?
派遣するとしても、どんな部隊を何の役割のために行かせるのか?
ここを間違えると、憲法第9条の第1項の方までなし崩し的に空分化させる事になる。

9条問題は、あくまで改正が先であり、王道であるはずだ。

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2012/02/12 01:04
そもそも9条が正しいのかどうかという問題もありますが。
あれは「周りの国は武力放棄する日本国の志を素晴らしく思ってくれる」というおめでたい発想が前提となっているものですから。

前にもどこかで書いたことがありますが、日本は「戦争に巻き込まれないために」自前の軍隊を持つべきだと思っています。
相手は「戦いたくない」と言っているから攻めてこないのではなく、戦うと少なからぬ被害を蒙る可能性があるから(それに見合う対価がない限り)戦わないのですから。
どうしても軍隊が嫌だというのであれば、軍が不要だと言いきれるくらいの外交の猛者を養成すべきでしょうが、不幸にしてその気配も感じられませんし。

このような事態がなくとも9条は見直されるべきでしょう。
近隣を含めこのきな臭い世界に本当に軍隊なしでやっていけるのか、目を逸らさないで考えるべき。
本当に恐ろしいのは軍隊の有無より国の法律の中心であるべき憲法の条文と実態が乖離していること。
条文を解釈次第でどうにもできるということは「憲法があってなきがごとく」という存在になる可能性を秘めているからです。

日本国民が本当に守りたいのは、憲法なのかそれとも国益なのか。
そして国益とは経済的利益なのか国際的な地位なのか。
内憂外患という状態ではありますが、先延ばしにはできないでしょうね。




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