Nicotto Town



ノーと言える日本がデフレ脱却への道

日本人も中国のトンデモ商売を笑えなくなってきた。
最近多発している高速ツアーバスの事故がそれを象徴している。

陸援隊というバス会社が起こした事故は、中国人の運転手を事実上の日雇いで運転させ、7人の乗客を死なせているが、個人的に一番恐れていた方向にこの国が向かっているような気がする。

第二次世界大戦でなぜ日本が負けたかにはいろんな説があるが、我輩は「兵隊の命は使い捨て」という思考に陥ったのが最大の原因だと思う。
ゼロ戦は導入当時は無敵の戦闘機だったが、とことんまで軽量化したが故の強さだったため、撃墜された場合のパイロットの死亡率が極めて高かった。

米軍は機銃弾を数発くらっても簡単には空中分解しない頑丈な双発機を開発してゼロ戦に対抗した。
一方日本では「兵隊のがんばり」に過剰に期待したため、新型機の開発が進まず、どんどん熟練したパイロットを死なせてしまい、熟練度の低いパイロットの数で穴埋めしたために、航空部隊の質がどんどん落ちて行き、戦争末期には神風特攻ぐらいしか選択肢が残っていなかった。

今の日本経済を見ていると、第二次世界大戦末期の状態のビジネス版のような気がする。
陸援隊のケースでもう一つ問題なのは「丸投げ」の結果であるという点だ。
バスの乗客を勧誘したツアー会社が自分でバス会社を手配せず、仲介業者に依頼。
その仲介業者は別のバス会社にこれまた丸投げ。実際にバスを運行するのがどこの会社かすら把握していなかった。

そのバス会社がこれまた陸援隊に丸投げ。
陸援隊は当日の業務を事実上の日雇いだった中国人運転手に丸投げ。
この中国人運転手、自分でバス事業をやっていたらしく、そっちが本業だったらしい。
本業の片手間に陸援隊のバスを運転して事故を起こした、という構図のようだ。

つまり力関係の弱い方へどんどん丸投げして「あとは知らないよ。そっちでがんばってね」とやったわけで、ツアー会社の無責任さこそが今回の事故の最大の原因だと思う。
しかしこれと同じような事はどんな業種でも起きていると思う。

そもそもなぜツアー会社が直接バスの運行会社と契約しないのか?
これはコストを下げるためだろう。
信用のおけるバス会社を常に把握して、社員が発注のやり取りをするとそれなりにコストがかかる。
仲介業者に丸投げすればツアー会社のコストは抑えられる。

最初に受けたバス会社はなぜ陸援隊に丸投げしたのか?
これは発注先に「ノー」と言えない日本経済全体の構造的問題である。
一度でも注文を断ってしまうと、以後注文がもらえなくなる事を恐れて、物理的に不可能な仕事を引き受けてしまい、陸援隊に押し付けた。

陸援隊も不可能な仕事と分かっていて断りきれず、その結果違法な日雇い運転手、それも日本語があやしい外国人を使った。

結局上流の企業が必要最低限のコストを惜しんで、手間ひまのかかる仕事を下流の企業に丸投げしたから、「乗客の命の安全」という最も大切な部分が「安かろう、悪かろう」になっていたわけだ。

「安ければいい」という日本全体の風潮が、不必要なまでの値下げ競争を煽っているから、デフレから脱却できない、という面もあるのではないだろうか?
ならば「安全安心のコスト」には金を惜しまないという方向に消費者全体の意識を変える必要がある。

またツアーバス業界に限らず、規制を強めるなら「ノーと言える環境」を保証してやるのが政府の義務だ。
どんな会社でも物理的にこれ以上の仕事量は引き受けられない、これ以上値段は下げられないという限界はあるはずだ。

その時に「ノーと言えない」「一度ノーと言ったらおしまい」という状況が変わらなければ、規制を強めても新しい抜け道探しに走るだけだ。

これは過労死やサラリーマンのうつ病にも同じ事が言える。
どう考えても無理な仕事量を上から下へ押し付けていて、かつ現場の社員が解雇を恐れて「ノーと言えない」状況を放っておくと、過労死や自殺は増える一方だ。
人件費を削る努力は必要だが、どこに限界があるのかを見極められない管理職が全ての業種で増えている気がする。

これ以上削れない、削ってはいけないコストを無理に削ってきた結果が現状の原因なら、無茶なコストカットをしなくて済むようにしないと、この手の悪質業者は減らない。

「安物買いの銭失い」という言葉があるが、安物買いの「命失い」はシャレにならない。
企業が最低限のコストは堂々と価格に転嫁できる雰囲気を作り出し、「確かに安くはありませんが、その分安全安心です」と胸を張って言える社会にするべきである。

そして個人であれ企業であれ、無理なものは無理、だから「ノー」と言える社会にしないと、人の命の犠牲の上に成り立った「低価格化」がどんどん進んでしまう。
兵隊ならぬ「社員の命は使い捨て」の風潮が続けば、日本のデフレはそれこそ永遠に終わらない。

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2012/05/12 18:00
私は自営業ですけど 昨今の低価格化には ほとほと困っています。
トリマーは技術を 売っていますので 自信を持って仕事をしているのに
安い所にお客さんが流れて行く 風潮は情けないものがあります。
今は 私の仕事に納得して来てくれるお客さんを 大切に頑張っているんですよ。
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2012/05/12 00:38
本当に終わらない。何か大きな事件と独裁者が現れて時代の流れを変えない限り。

何かいろいろ考えさせられます。
10年後はもっとひどい状況かもしれないし、
30年前は安全で心に余裕があったか?と考えるとそう思わないし、
もどかしい。
ホントはノーといっても工夫次第で仕事はあるんだけど、
その工夫が難しいし、やっぱりイエス言ってしまうのです。
あぁ、ノーと言いたい。
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2012/05/10 22:44
人の使い捨て、と言う現象には原因がある。
サービスする側と、サービスされる側が二分しているのだ。
バブルの頃などは、サービスする側の人間がサービスを受けたり、サービスを受ける側が仕事をしていた。
つまり、仕事をせずにただサービスを受ける人間達の存在と言うのが問題なのだ。
例えば、老人・福祉を受ける人たち。
自分達は、おカネを仕事で貰うことをしないから、どのくらいの対価が妥当なのかわからなくなる。
結果として、安ければ安いほうがいいとなってしまう。
しかし、これはどうしようもない。
安全は今まで保たれていたのが不思議なくらいで、価格を押し上げれば安全が担保されると言う簡単な問題でもない。
飛行機が落ちるとか言う事故も、近い将来頻繁になるだろう・・・
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2012/05/09 21:39
>「確かに安くはありませんが、その分安全安心です」と胸を張って言える社会にするべきである。
確かに仰るとおりだと思います。僕も自社商品に対して、自信を持って
そう言えるようになりたいとは常々思っているのですが、現実はなかな
か厳しくて(^^ゞ努力します(^_-)-☆




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