Nicotto Town



遥か昔の事

「照れ屋だが凶暴な痣のなぞについて知りたい…」
悪ふざけでも嫌がらせでもなく真剣な面持ちで語りかけるリルド…彼の前にいるのは、ラコット島の田舎町の一つガシウスの町長である。
「んなこったぁ、このオレが知るわけねぇだろ。学者にでも聞いて来い!」
確かに、脳の一部が筋肉かしていそうな町長には難しい問題のようである。
「ん~あぁ、別にあんたが知らなくても、あんたの手持ちの本が知ってんじゃないのか…って、考えたんだが」
実際にその結論を導き出したのはカリスのほうである。
カリス本人はと言うと、既に町長の許可を得ることなく本を読み漁り始めていた。
「手持ちの本でそんな内容のものなんざ無いと思うがな」
既に、興味を失っているらしい町長…適当に相槌を打ちながら武器の手入れに余念が無い。
最近のモンスターの活性化は、田舎には大打撃になりかねない。
タダでさえ、畑やら畜産やらで人手がかかる田舎町…更に、モンスターの相手も自前でやっていかないといけない。
町長の主な仕事がモンスター退治ゆえに、体力命の町長が誕生しやすくなっている。
ちなみに、時期町長候補はリルドとの噂らしい。
「こんな田舎の本なんざ、内容も知れようって事か…」
始めから本を捲る気の無い時期町長候補・リルドは晴れ渡った空を眺めるしかなかった。
「…確かに、そんな内容なんか無いかも知れないけど、せめて調べる姿勢をみせてもいいんじゃない?自分の体のことなんだから」
そんなボヤキを吐き出しながら、カリスは本を閉じていた。
「…なんだ、リルドに何があったんだ?拾い食いで痣が浮かびあがる物でも合ったのか?」
拾い食いは色々と確定事項らしい…カリスによって否定はされたものの、それでも拾い食いを疑い続ける町長…普段にリルドの生活態度がうかがい知れる。
「拾い食いではなく、何か…痣が浮かび上がるようになったみたいなんです…理由もタイミングも判りませんが…」
良く考えたら判らない事だらけである…たしか、昔は痣なんか無かったはず。
「そんな得体の知れないモノなんざ、大陸の学術都市にでもいかねぇとわかんないんじゃねぇか?」
大陸…この島からはかなりの距離があるものの、定期船が出ている場所でもある。
「そんなご大層なモンでもないだろう…きっと、気まぐれなオレの性格を現すような痣だ…今まで照れていた分、頑張ってあらわれたんじゃねぇ?」
深く考えないリルド…突然あらわれ始めた痣について深く考えないなりに、適当な理由までつけてしまった。
「そんな適当な…まぁ、病気では無さそうだから心配もしていないんだけど」
既に、興味を失いつつある若者二人…大体、痣の形さえ判っていないのだから興味を持ち続けるほうが難しい。
「でもよ、若いうちは大陸にも興味があるんじゃねぇか…アッチには美人が五万といるって話だしよ…」
痣より大陸の美人に興味のある町長…続いて「やっぱ、女房が一番なんだがなっ!」と焦って付け加えたのは男の性なんだろう。
「定期船と言えば、最近不定期になっているよね…何かあったの?」
定期船…大陸とこの島を繋ぐ定期船が最近、不定期になってきているらしい。
「あぁ、毎度の事だが戦争があってな…ただ、今回のはちょいとやばいらしい…モンスターなんかも借り出されているらしく、ディジェスタなんかが国境を取られているってな…前の定期船の船長がぼやいていやがった」
戦争は、大陸が出来てから続いているといってもおかしくないくらいの出来事らしい。
ただ、町中を巻き込んでの戦争は珍しい。
普段は、欲しい町の近くの草原等で陣を組んで行われる…双方合意の上での戦争ごっこが常だった。
しかし、今回の戦争は今までに無い…一般人をも巻き込んだ戦争…その惨さは大陸を駆け巡り、この小さな島にまで及んでいた。
「大陸に行くってぇなら早い方がいいぜ」
二人が大陸まで行って調べる気は無いと言っていたのに、既に大陸息は決まっていたらしい。
町長としては、誰かに大陸に行ってもらい正確な情報がほしいだけだったのかもしれないが、偶然にも白羽の矢が立ってしまったといった所か。
「大陸行き決定事項かよ」
呆れる二人をよそ目に、次の定期船の日時を伝えて二人を追い返す。
二人が出て行くのを確認してから、町長は一冊の古い本を取り出した。
「確証は持てねぇが…」
その一冊…今は既に伝説となっている魔王の伝承を伝える古い本。
その拍子には不思議な紋章が描かれていた…誰も確認できなかったが、リルドの背中にあらわれた紋章に似ていたかもしれない。




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