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給付付き税額控除は亡国の道

それがいつかは別にして、消費税率を10%に上げなければいけない、という点では、民主党政権も自民党も、小沢一郎氏も意見を同じくしている。
そこで低所得者への救済策として、民主党が「給付付き税額控除」という制度を提案し、自民党が反対している。

この給付付き税額控除という制度、簡単に言えば貧乏人は政府から現金がもらえるという話である。
こんな制度を導入したら第2の生活保護になって、日本中で就労意欲が減退する危険が高い。

消費税は金持ちにも貧乏人にも同じ税率でかかるので、貧乏な人ほど重税感が強くなる。
たとえば月収40万円の人と、20万円の会社員がいるとしよう。
毎月生活にどうしても必要な支出を同額と仮定して、それにかかる消費税が両方とも月額2万円だとする。

月収40万の人の場合、毎月消費税で持って行かれる金額は収入の5%になる。
月収20万の人の場合、10%になる。
収入が低い人ほど「稼いだ金の何%を消費税でふんだくられるか」の数字が高くなる。
これを「消費税には逆進性がある」と言う。

この逆進性を緩和するための措置として民主党が持ち出したのが、給付付き税額控除。
簡単に言えば、消費税の負担感が重い人の所得税を減らしてあげようという事だ。
仮に上記の二人の人の所得税率が同じである場合、月収20万円の人の所得税率を下げる。

すると所得の低い人ほど所得税が低くなり、消費税で持って行かれる金額が増えても、トータルでの手取り収入はそれほど減らない、という理屈である。
ここまではいい。

問題は、現在所得税の支払いを免除されている程に低所得な人にはどうするのか?という点だ。
所得税が免除される年収額は、地域や結婚しているか、扶養家族がいるかなどの条件で違うのだが、おおむね年収130万円未満というケースが多い。

既に所得税を払っていないのだから、所得税をおまけしてあげようがない。
まして無職で収入ゼロの人は、何もメリットがない。
こういう人たちでも消費税が上がれば負担増になる。さあ、どうする。

ではお金を上げましょう、国庫から。
これが「給付付き」の意味である。
仮に年収が129万9999円で所得税が免除されている人には、一定のお金を政府がくれるわけだ。

こういう考え方そのものは「負の所得税」と言って、先進国の中には導入している国はいくつもある。
だが今の日本でこれを導入したら、モラルハザードに拍車をかけるだけだという気がする。

たとえば働こうと思えば働けるのに、なまけて無職でいる若者がいるとする。
税務署に「年収ゼロ」と申告すれば、自動的に毎月「給付付き税額控除」の給付分がもらえる。
この若者、真面目に就職して働こうという気になるだろうか?

弱肉強食社会のイメージが強い米国でも「負の所得税」にあたる制度はある。
しかし米国のそれはあくまで「勤労収入」に対する給付であって、働いて得た所得を税務署に申告した人だけが給付金を受け取れる制度である。
つまり失業者や意図的に無職でいる人はお金はもらえない。

他の国でもあくまで「働いているのに極端に低収入な人」に現金を給付するという趣旨であって、怠け者の「自業自得の貧乏人」には給付金など渡さない。
民主党の提案する「給付付き税額控除」はこの点をちゃんと保障できるのか?

非正規雇用の増加が特に若い労働人口の間で深刻な問題になって久しい。
今や40代、50代にも「一度も正社員になった経験がない」という労働者が現れている。
だが最近単なる「ワーキングプア」では片づけられない新しい問題が起きている。

なんと「正社員になりたくない」という若い非正規労働者が増えているのだ。
我輩の職場もそうだが、今や昔ながらの正社員、年俸契約などの期限付き社員、派遣、請負などいろいろな雇用形態の労働者が入り混じっている会社は珍しくもない。

これを雇用形態の多様化とか言って「悪い事ばかりではない」という経済学者などがいるが、まさに象牙の塔の住人のたわ言だ。
非製造業のちゃんとした会社の場合、仕事のスキルはは経験を積むことでしか獲得できない。

しかし普通の正社員ではない、というだけの理由で初歩的な仕事以外は一切何もやらせないという会社が多い。
正社員同様に扱っていいはずの、それも年齢的には中堅やベテランと言っていい人たちにまで新入社員レベルの仕事しかさせない。
当然志の高い人ほど辞めて行ってしまう。

すると会社側は「すぐ辞めるからやっぱり正社員以外に大事な仕事は任せられない」と考える。
ますますやりがいのある仕事をするチャンスがなくなり、普通の正社員でない人はどんどん辞めるか、やる気を失くしていく。
完全な悪循環である。

さらに悪い事に無能な管理職や経営者は、ある部署の戦力の大きさを労働者の頭数でしか測れない。
たとえば60人いる部署の半分が、普通の正社員でないからという理由で単純な仕事しかさせてもらえない、したがって経験がない、という人員である場合、「60人もいればこのプロジェクト出来るだろ」と言って上から仕事が回って来たとする。

大事な仕事であれば、頭数は60人でも実際の戦力として使えるのは30人である。
当然普通の正社員は通常の二人分の仕事をしないとプロジェクトが回らない。
毎日深夜までの残業、休日出勤は当たり前になる。

普通の正社員でない人たちは内心「いやあ、あれなら自分でも出来る事があるんだけどなあ」と思いながらも、やらせてもらえないから見ているしかない。

そんな職場に若い派遣社員が新しくやって来たとしよう。
その人の目にはこう見えるはずだ。
「うわあ、正社員って、安定した身分と世間並の給料と引き換えにあんな過重労働しなきゃいけないのか。ありゃそのうち過労死か自殺だな。だったら貧乏でも派遣のままの方がいいや。人間命が一番だもんな」

こういう非正規労働者がぎりぎり年収130万円未満で、そのおかげで消費税の「給付付き税額控除」制度の給付金をもらえるとなったらどうするか?
パソコンスキルや簿記の資格や英会話を身に着けて「いつかは正社員に」と思うだろうか?

下手にスキルアップやキャリアアップして正社員になって、確かに収入は多少上がっても給付金がもらえなくなり、年間数万円の年収アップと引き換えに過労死確実の重労働を強いられる「安定した正規労働者」になりたがるだろうか?
給付付き税額控除を今の日本で導入したら、意図的に低所得の非正規労働者に留まろうとする若者が増えるのではないか?
失業者は本気で就職しようとはしなくなる。

では中、高レベルの所得水準の人はどう考えるか?
高い消費税ふんだくられて、その金が「怠け者の非正規労働者」の小遣いになっている、と感じるはずだ。
当然まじめに税金払うのは馬鹿らしくなる。

サラリーマンはともかく、自営業者や会社経営者は脱税や所得の過少申告に精を出すようになるだろう。
また雇用者の場合、ぎりぎり年収130万円を超えている従業員の給料を、給付金がもらえるレベルまで下げる可能性もある。
「給料下げるけど、政府から給付金もらえるようになるからいいだろ?」と企む経営者は必ず出てくる。

この危険を考えないで導入する給付付き税額控除は未来の日本を滅ぼす。
第2の生活保護、それも「合法的な不正受給」を可能にしたら、この国は終わりだ。

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2012/06/15 16:57
非正規は身分不安定、正社員は重労働で過酷、給付金は不合理。
労働者ぞれぞれが自分の能力に応じ満足して働ける社会はどうしたら実現できるんでしょうね。
政治もバラバラな状態で灯りが見えないです。
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2012/06/09 13:18
これは制度としてつくるには なかなかむつかしいですね。
消費税を導入と同時に廃止された物品税の復活 というのもいいけど 対象物の再検討が必要ですね
同時に基礎食料品を無税にするとか
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2012/06/04 16:51
仰るとおりですね。
先進国最大の赤字国家なのに更に赤字を増やして、バラマキ政策で選挙で再選されることしか考えない
議員ばかりで愛想が付きます。
消費税そのものが不知詠人さんが例示されているように金持ち優遇の制度です。
昔は金持ちしか買えない高額品には15%とかの物品税がありましたが、それを復活させるべきです。。
給付付き税額控除よりは、贅沢品ではない食料品などを無税にする方が理に適っていますね。
贅沢な生活をしても使い切れなほどの金を持っている人間から徴収することを考えるべきです。

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2012/06/02 23:59
ですよねー

やはり、消費税率変更、、生活必需品は、下げて
贅沢品は上げると、、いう方が、しっくりきますな




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