Nicotto Town



選挙制度改正考察(3)小選挙区・比例代表併用制

小選挙区と比例代表を組み合わせる場合、「並立制」「併用性」「連用制」の三つの方法がある。
今のところ日本の衆議院は並立制。
今回は「併用制」とは何かを説明しておこう。

まあ細かい所を言えばいろいろバリエーションがあるのだろうが、よく例として出されるのはドイツの連邦議会の選挙制度。
ドイツ語で「ブンデスタッグ」と言い、日本の衆議院にあたる。

議員定数は今では598。このうち299を小選挙区から選ぶ。
日本と違う点は、ある政党が「小選挙区と比例代表の合計で何議席もらえるか」を、比例代表の結果で決めてしまう事。

(1)で説明したドント方式で各政党の議席の割り当てを決める。
そして、各政党は割り当てられた議席の範囲内で、小選挙区で勝った自党の候補者を当選させる。

たとえば比例代表での割り当ての結果、Aという政党が合計で200議席もらえる事になり、その政党の候補者が150の小選挙区で勝ったとする。
この政党はもらった200議席のうち、小選挙区で当選した150人に優先的に議席を与える。
そして残りの50を、比例代表の方の候補者リストから選んで議席を与える。

ごく大雑把に言うとこういうシステムで、各政党が全有権者の何%から支持されたかの数字と、その政党が議席の何%を取ったかの数字がかなり近くなる制度だと言われている。
ドイツも日本と似ていて、2大政党はあるのだが、単独で政権を取れる事はあまりなく、議席数が半分から3分の1程度の中小政党がだいたい3つぐらいあって、そのどれかと連立政権を組むのが常態になっている。

この併用制だと、2大政党が他の政党を駆逐してしまうという事が起こり難い。
かつ、一定の国民の支持があればミニ政党も存続可能な制度である。
これは特定の政党が強大化して、ナチスの再来を防ぐという意図もあるらしい。

ただし欠点もあって、各政党が比例代表で得た議席数が、その党の選挙区での当選者数を上回っている場合はいいのだが、後者の数字の方が大きいという事がけっこう起きるそうだ。

日本と同じで、小選挙区で一票、比例代表で別に一票という投票方式なので、選挙区ではA党の候補者に入れたが、実は内心ではAという政党にはムカついているので、比例代表ではB党やC党に入れる、という事が可能。
その結果、たとえば比例代表で100議席しか割当てられなかった政党が、選挙区での当選者は105人もいました、なんて事が実際にしょっちゅう起きてしまう。

そういう時はどうするのか?
ドイツの場合、その政党の余った5人にも議席を与える。
この場合その政党は「超過議席を5持つ」と言う。

そういう政党がいくつも出た場合、連邦議会の全当選者数が定数の598を越えてしまう事になる。
しかし選挙区で当選した候補者の当選を無効にするわけにもいかないので、超過議席で議会の定数が増えてしまうのは仕方がない、というのがドイツの制度である。

一応定数は決まっているのに、ほとんどの選挙では実際の連邦議会の議員数は600を越える事が常態化している。

今日本で選挙制度をいじろうとしているのは、「消費税を上げて国民の負担を増やすから、議員の数も減らして国会にかかるお金を減らす」という目的だ。
従ってこの併用制は採用しにくい。

何より選挙のたびに総議席数が変わると、過半数がいくつかという数字も選挙のたびに変動する事になり、日本ではいろいろとやり難いようだ。





Copyright © 2024 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.