Nicotto Town



選挙制度改正考察(4)小選挙区・比例代表連用制

現在民主党の輿石東幹事長などが中心になって検討している新しい衆議院の選挙制度は「小選挙区・比例代表連用制」と呼ばれる。
小選挙区での結果と比例代表の結果を、ドイツなどの併用制とはまた違った形でリンクさせるシステムである。

この「連用制」という概念自体が比較的新しい物のようで、実は「ズバリ、これ!」という明確な定義がまだない。
これはこの分野での「連用制」を表す英語の言い方が、欧米のマスメディアに無いか、確定していないらしいところからも言える。
英語圏の国の新聞社などのウェッブサイトをいくら漁っても、ぴったり「連用制」に当てはまる単語が見つからないのだ。

多分これからいろいろなバリエーションが出て来るのだろうが、民主党が考えている連用制はおおむね以下のような仕組みらしい。

まず有権者が投票するやり方は現在の並立制と全く同じ。
比例代表での議席配分の仕方がこう変わる。

(1)で説明したドント方式で計算する点は同じだが、各政党の得票数を「いくつで割るか」が違う。
現在のドント方式では全ての政党の得票数を1巡目では同じく1で割ったが、連用制では「その政党が小選挙区で獲得した議席数+1」で割り算をする。

(1)で例に挙げたA,B,C3党、そして小選挙区での獲得議席が0だったDという政党があるとしよう。
比例代表での得票数はAが300万、Bが200万、Cが100万、Dが10万。
小選挙区での獲得議席はAが150、Bが100、Cが50、Dがゼロ。

ドント方式の1巡目ではこういう割り算になる。
A党。300万÷151=19,867.549
B党。200万÷101=19,801.98
C党。100万÷51=19,607.843
D党。10万÷1=100,000.00

圧倒的にD党の商が大きい。1議席取るごとに割る数が2,3,4と増えて行っても、何巡目かまではD党がどんどん比例代表の議席を獲得していく。
これが現在日本で候補に挙がっている「連用制」の方法であるらしい。

この方式だと、小選挙区で2大政党に圧倒されて出番がない小政党ほど、比例代表で獲得できる議席数が多くなる。
これなら比例代表の総議席数を大幅に減らしても、中小政党が比例代表議席の何%を取れるかの数字は今より逆に大きくなり、したがって民主党が提案している衆議院の大幅議席削減に、小政党も賛成してくれるだろう、と考えているわけだ。

確かに小選挙区制度は2大政党制である事を前提にした制度で、比例代表制度はそれでは無視されてしまう少数意見を拾い上げようというのが趣旨、目的だから、国民の多様な意見を吸い上げる効果はあると考えられている。

しかし一方で、小選挙区で勝てない弱小政党を、比例代表の結果ではえこひいきしましょう、という制度であるとも言えば言える。
それはそれで、別な意味で民意を歪める危険はあるかもしれない。

この他、ドント方式をするときに、各政党の割り当てられる議席数の最大数を選挙区での獲得議席の割合に応じて最初から減らす、などの方法もあるのだが、連用制に共通しているのは有権者に分かりにくいという点である。

大政党を勝たせ過ぎないように比例代表ではライバルの党や小政党に入れるという投票行動を取った事がある有権者は多いと思うが、それが比例代表の結果をどう左右するのかが、非常に予想しにくくなる。

また比例代表での結果を重視するあまり、小選挙区での勝負を最初から投げる政党が出て来る可能性もあり、そんな政党を比例代表でえこひいきする制度というのはいかがな物か?という批判もあるようだ。





Copyright © 2024 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.