プルサーマルと日本核武装疑惑
- カテゴリ:ニュース
- 2009/11/05 22:03:45
外国のニュース雑誌を読むと日本が核兵器を開発する、核武装する可能性というのが当たり前のように論じられている記事に時々出くわす。
あくまで例えば「もしこのまま無秩序な世界情勢が続けば・・・」とか「核兵器の拡散に歯止めがかからないという事態に将来なったら・・・」というような文脈の中においてではあるのだが。
実はこれには物質的な論拠があるのだ。内閣府の発表によれば、日本は2008年末時点で約31.8トンのプルトニウムを保有している。
プルトニウムは原子爆弾の材料、爆薬にあたる物質だ。これだけの量があれば広島・長崎級の原爆を1ダースぐらい作れるらしい。
だから、もし日本がその気になれば原子爆弾で核武装するのは可能と外国の識者は考えるわけだ。特に北朝鮮が核実験行ってからは、かなり本気で「日本の核武装化」を心配している国がけっこうあるようだ。
では何故そんな大量のプルトニウムを日本政府が持っているのか?別にどこかから買って来たわけではない。
日本国内の原子力発電所から出て来たものである。
原発はウラニウム(ウラン)を燃料に使う。ウランには質量数という数値が235の物と238の物がある。同じウランでも前者は核分裂を起こすが、後者は核分裂をしない、つまり原子力燃料や原爆の材料には使えない。
核分裂する方のウラン235はウラン全体のわずか0.7%ぐらいしかなく、残りのウラン238は「燃えないウラン」と呼ばれる。
原爆にせよ原発の燃料にせよ、ウラン鉱石の中からウラン235をいろんな方法で分離しないと使い物にならない。
非常におおざっぱに言うと、ウラン235の純度を非常に高くして火薬で包んでやると原爆が出来る。ウラン235の純度をほどほどにして固めると原発の燃料棒になる。
さてここからが面白いのだが、原発の原子炉の中でウラン235が燃える、つまり核分裂を起こすと陽子、中性子といった素粒子が飛び出す。燃えないウラン238がこれを原子核内部に吸収すると、プルトニウムという全く別の元素に変身してしまうのである。
だから使い終わった原発の燃料棒の中にはごく微量だがプルトニウムが自然に出来ている。また最後まで燃えもせずプルトニウムに変身もしなかったウラン238が相当量残っている。
以前は全部まとめて「核のゴミ」として廃棄していたのだが、ウランは有限な資源であり、原子力発電を利用する国が増えてきた結果、ここ数十年でかなり値上がりしている。
そして日本はウランを全量輸入に頼っている。
もしウラン鉱石の値段が暴騰したら、あるいはいくら金出しても買えないという事態になったら、既に原子力発電に大きく依存している日本は深刻な電力不足、エネルギー危機に陥る。
そこで政府が計画したのがプルサーマル計画である。
フランスの会社に頼んで使用済み燃料棒からプルトニウムと残っているウラン238を取り出し、プルトニウムとウランを混ぜたMOXという新型燃料を原発でまた使おうという構想だ。
これならウランを一切無駄にせず使い倒す事が出来るので、原子力燃料をより長い期間使える。ウランが値上がりしても外国から買えなくなっても大丈夫という計算だった。
ところが、プルサーマルにたずさわる予定だった電力会社や研究機関が次々に小さな事故を起こしたり、事故隠しをしたものだから、プルサーマル計画は10年以上遅れに遅れ、その間使い道のないプルトニウムが国内外の貯蔵施設に貯まっていった。
結果、今では原爆十数発分のプルトニウムを抱え込む羽目になっているのである。
だから、佐賀県の玄海原子力発電所でやっとプルサーマルの実用化が始められる目途がついたというのは、日本の対外的信用という意味では非常に良いことなのだ。
プルサーマルそのもの、ひいては原子力発電そのものに反対という人もいるだろうが、原子爆弾1ダース分の核物質を、使うあてのないままいつまでも溜め込み続ける方が政治的にはより危険だ。
諸外国から疑いのまなざしで見られるのは嫌だし、将来本当にそれで核兵器作ってやろうと考える連中が出てくるかもしれない。
実際、過去に自民党の一部の政治家が日本核武装論をぶって、世論の袋叩きにあった事がある。あれもそのプルトニウムの在庫の存在があるから出てくる発想だろう。
だからプルサーマル計画がやっと軌道に乗り始めたという事実は、戦争反対の平和論者にとっても、良い事と考えるべきではないだろうか?
プルトニウムが順調に消費されていけば、日本が核武装する可能性は低くなる。
世界唯一の被爆国である日本が「ひょっとして核武装する気じゃないのか?」という目で見られる事だけは避けたい。
そのためにもプルサーマル計画は、事故隠しだの変な不祥事を起こさずに、国民に情報を全面公開した上で、是非成功させてもらいたい。
そして現政権のように国内防衛について何も触れないままアメリカと距離を置こうとすれば、「なら、日本は今後どのようにして国を守るつもりか」とまともな評論家なら考えるでしょうし。
火のないところに煙は立たないのです。
太陽熱発電も技術的には先進国なので大いに進めてもらいたいところですが、太陽熱という自然に頼るものだけに国内の必要量を賄うに到るまでには相当な困難があるでしょう。風力発電が鳥類に被害を与えているという話もありますし、何も問題ない発電というのは存在しないのかもしれません。
「民主主義は電力の安定供給とともにある」なんて言葉もありますしね。
プルトニウムに不安材料があることも含めて情報公開しながらやっていくことが、現状における次善の策かもしれません。
このページのコメント欄。原発反対は一人。賛成三人。
日本では、都合の悪いことは 隠す、という方式でやってきたから。
それを永遠に隠し通せるとでもおもっていたのでしょうか。
ばれたら、信用が一気に失墜して、実現が大幅に遅れる。という道をたどってきました。
今でも、電力会社のホームページなど、安全という言葉ばかりですね。
ところで、核の技術は現在も進歩しつづけていて、プルトニウム2kg以下でも核爆弾ができるみたいです。
1tで500個 ええーーっそんなに。
九電によると、プルサーマル発電用のウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料が装てんされている3号機は5日午前に起動。同日深夜に核分裂反応が継続する臨界に達した。
続きの記事が出ていて、プルサーマル発電が再開したそうです。
今度こそうまくいくといいのですが。
プルサーマルが実現する前から、廃棄物をどう処理するか考えずに「原子力はクリーンなエネルギーです」などと言っていたことに欺瞞を感じます。
少なくともお金を出して外国に廃棄物を引き取らせていたことを考えると一歩前進だけれど・・・・。
早くから企業が開発していた太陽光発電に国がもっと力を入れてくれていたら、世界シェアでこんなに遅れをとることはなかっただろうになあ。
確かに、便利さに負けて使い放題に電気を使っている私たちに、「原子力がなくてやっていけるのか?」と言われたら答えは「否」だけれど、否応なしに与えられて「この便利さが無かったら困るだろう?だから原子力は必要なんだよ」と言われても騙されたような気持ちになってしまう。選択の権利がなかったのだから・・・。
日本の行動を見ながらの疑いなんではないのか・・・。
きちんとした考えのもと、行動しても疑うことは疑うだろうけど。
せめて、国はそこで生きてる人達の信頼を築くような行動をしてほしい。
今の情勢だと、全世界を日本の支配下に治める事が
出来ますし、そっちのほうが問題かも。
核を持つ理由って恫喝という「外交カード」でしょうし
(実際の国vs国の戦争で使用されたのは、太平洋戦争のみで
それ以後は実験のみで、まだ一度も使用されてません)
紛争地帯(北方四島や竹島、尖閣諸島)への脅しとしては
有効ではあるけど
メタンハイドレードだっけかな?
あんなの
中国に工事だけさせて、後から日米タッグで
「オレの物はオレの物
中国の物も日米の物」
って事で、核の傘下に入りながら
強奪したほうが良いんじゃないかなぁ。
保有するにあたっての手続きも面倒くさいですし
しばらくは、平和な民族を装って
アメリカ・中国・ロシアを、我が国の傀儡にしておくのが
良いんじゃないかなぁって思う。
別に保有しても良いんですけど
アメリカ並に世界の治安維持に貢献して下さい
とか、何とか色々押し付けられそうだし。
しばらくは、アメリカに「核保有」のババを引いてて貰ったほうが
良いと思います。
原子力発電は必要不可欠だと思いますので、喜ばしい事です。
兵器として使用する事なく、すべて純粋に生活エネルギーに変わる事を
願います。
日本が核武装をする事はないと思いますが、核兵器保有国に守ってもらう事は
今後も続くのでしょうね。
自然エネルギーは確かに良いのですが、まだまだそれだけではまかなえないですし。
原子力発電は効率のよいエネルギーですが、事故によって環境にも人にも影響が出るので
もっと良い安全策を考案しないと、反対する人はずっと納得しないでしょうね。