冬に食べたいもの
- カテゴリ:グルメ
- 2010/01/14 17:38:27
正確に言うと飲み物である。
そしてもう二度と口にする事が出来ないものだ。
我輩はちょっと複雑な家庭の事情で、幼稚園から小学校卒業まで父方の祖父母に育ててもらった。
祖父母は九州の田舎町で小さな商売をやっていたのだが時代の変化についていけず破産し、時々生活保護をもらいながら自宅を仕事場にして祖父が自転車の修理屋、祖母が小さな駄菓子屋をやりながら、かろうじて生計を立てていた。
時にはその日のおかずを買うお金にも事欠く有様で、そんな中で我輩の養育を押し付けられたのだから、ほんとに大変だった。
だからよその子供がおやつに食べるような普通のお菓子などは、滅多に口に出来なかった。祖母が店先に並べていたのは、当時の小学生ですら見向きもしないような時代遅れの品物ばかりだったから。
さて、田舎町なのでちょっと足を延ばせば田んぼや畑が広がり農家も多かった。冬になるとたいていの農家は自家製の干し柿を作っていた。
干し柿だから当然まず皮をむく。我輩の祖母はその皮をあちこちの農家からもらってきた。
もちろんただでくれる。
そして寒い冬の夜、家の中で寒風にさらしておいた柿の皮を鍋で煮る。
九州は温かいというイメージをお持ちだろうが、内陸部の冬はかなり寒い。少なくとも東京より寒い。最低気温が氷点下まで行く事も珍しくなかった。
住んでいた家も、当時としても珍しい藁ぶき屋根の農家で、炊事はマキとカマド、唯一の暖房器具は七輪の炭火という生活だ。
寒い時は温かい飲み物が欲しいが、コーヒー、紅茶、ココアなんてものは別世界の品物。
そんな我輩のために祖母がよく作ってくれたのが柿の皮の煮出し汁だった。
七輪で30分ほどコトコト煮続けると、皮の中の茶色っぽい色素が出てくる。これに茶色っぽいザラメの砂糖を溶かして飲んだものである。
今思うと、よくもまあそんな貧相な物を・・・とも思えるが、不思議と美味しかった。
祖母は「紅茶のような味がするだろ?」と言っていた。子供だった我輩には本当にそうなのかは分からなかったし、今ではよく思い出せない。が、まあかっこつけて言えば「パーシモン・ティー」というところだろうか?
祖父母はもう20年以上前に他界して、あの珍妙な飲み物の作り方を我輩は覚えていない。(単純なようでけっこうコツがあったらしい)。
グルメというにはほど遠いが、何故か今でも記憶の隅に残って離れない、それでいてもう二度と味わう事が出来ない、我輩の冬の思い出の味である。
本当に思い出の味にはどんなプロの名品も太刀打ちできませんね。
読んでる私まであったかくなります。
おばあちゃんがよく作った、なすの肉味噌なんだけど
刻んだたまねぎとかいろいろ入っていたんだよね。
私の祖母も九州の人だったので、多分味噌は麦味噌。
ちょっぴり甘くて美味しい肉味噌ととろっとしたなすが絶品でした。
良く食べさせてもらったのは小学生の頃なので、今記憶を頼りに自分で作ってみても
記憶の中の味には勝てません(^^;)
普通は皮なんか捨てるところだけど
栄養の価値を知ってたんでしょうね★
飲んだことないので、経験してみたい味ですね
あたたかい思い出のおすそわけをありがとうございます。
私も幼少の頃に母を亡くしているのですが、
亡き母の絶妙な力加減の耳かきを今でも思い出します。
今では私が自分の子供達の耳かきをやっています。
この子らが大きくなって、私が死んだ後にも
耳かきしたことを思い出してくれるかな、と思います。
出来れば、分かち合いたい飲み物です。
柿って、栄養や効能がいろいろあると聞きました。
柿渋染めもあるし、虫除けにもあるとか。
柿のお茶、きっと冬にはもってこいの、栄養満点の飲み物だったんですね^^
柿の皮と水と蜂蜜で作る酵母の飲み物を聞いた事があります。
それだとレシピをカキコのところもあるようです←確定で無くてすみません。
103で死んだコロの曾婆ちゃんも作ってたらしいス~
貧相では無くてそう言う飲み物みたい。
しっかりグルメですよぉ!!