まだ大した進展はないが、民主党の小沢一郎幹事長が東京地検の事情聴取を受けたというニュースでもちきりのようだ。
検察や野党が描いているシナリオは、小沢氏が複数のゼネコンから政治資金規正法で禁止されているヤミ献金を受け取って、その一部の４億円で東京世田谷区の土地を買った事実が暴露されるという事だろう。

我輩個人はたとえそうだとしても、今更腹は立たない。その手の不祥事は自民党政権時代には掃いて捨てるほどあったし、小沢氏の世代の国会議員というのは、多かれ少なかれ金に関しては真っ白ということはないと思っている。

が、我輩が不思議に思うのはマスコミが「何故野党議員時代の小沢氏に、そんな力があったのか？」という疑問を呈していない点だ。

ゼネコンに限らず、大企業が与党、野党の両方に政治献金をするのは珍しい事ではない。
だが、野党や野党議員への献金なら、法律で許されている範囲内でだけやっておけば済む事だ。何故当時、党首などの要職にあったとはいえ、野党議員に過ぎなかった小沢氏にヤミ献金までする必要があったのだろうか？

小沢氏は自民党内では東北を地盤とする族議員、いわゆる建設族だったと言っていいだろう。公共事業の予算決定に影響力を持っていて、だからゼネコンなどの建設業者から多額の政治献金がもらえる、というタイプだ。

が、小沢氏は１９９３年６月に当時の宮沢喜一首相との対立から自民党を離党して新党を結成、いったんここで一介の野党議員になった。
同年８月に細川護熙を首相とする非自民連立政権が成立し、小沢氏は影の調整役として活躍したから、ここで「与党議員」に返り咲いた。

が、細川から羽田孜に首相が交代するも非自民連立政権は１９９４年６月に崩壊。自民党と日本社会党の連立に政権を奪われた。
ここでまた小沢氏は野党議員に転落したわけである。

小沢氏はその後自由党という新党を結成。１９９９年１月にその自由党と自民党が連立政権を結成。同年７月には公明党がこの連立に参加していわゆる「自自公連立」となり、小沢氏はまた「与党議員」に返り咲く。

が早くも２０００年４月に小沢氏の自由党は連立から離脱。小沢氏はここでまた野党議員に転落。その後自由党は民主党と合併。昨年の衆院選で民主党が政権を取るまで、それからずっと小沢氏は野党議員だったわけだ。

ところが今回検察が疑っている違法献金は２００４年前後に行われていると報道されている。小沢氏が最後に野党議員に転落してから何年も経っている時期だ。
将来政権を取るかもしれない野党にお付き合いで政治献金するのなら、政治資金規正法で許可されている範囲でやれば良かった事だ。

仮にヤミ献金があったとして、何故ゼネコンが野党議員でしかない小沢氏にそんな危ない橋を渡ってまでお金を貢がねばならなかったのか？
ここが我輩にはどうしても理解出来ないのである。

小沢氏にそんな気がなかったとしても、ゼネコン側には「あの先生のご機嫌損ねると仕事がもらえなくなるぞ」という意識があったのだろう。
しかし、野党議員が一体どうやって公共事業の予算配分に介入したり、あるいは金をくれなかった会社を工事から締め出す、などという事が可能なのだろうか？

今回の小沢氏を巡る事件で一番重要なのは、その点ではないのだろうか？
もし野党議員でも、公共工事への不当な介入やゼネコンいじめが出来る手段があるとしたら、そのカラクリをこそ暴いてつぶしておかないと、第２、第３の陸山会が今後も出てくる。

もし小沢氏にそんな気はなく、ゼネコン側が勝手に気を回しただけだとしても、建設業界内部にそういう意識がまだ残っているのなら早急に是正させないと、変なヤミ献金は無くならないだろう。

今回問題になっている４億円は、庶民としては十分ハラワタが煮えくりかえる額だが、「何故野党議員が？」という謎を解く方が大事ではないだろうか。
検察、捜査当局はともかく、マスコミには是非この謎にこそアタックして欲しい。

今のところこの点を深く追及したマスコミの記事はまだ見かけていない。我輩が気づいてないだけか、あるいは準備中なのかもしれないが、気骨ある新聞や週刊誌がこの謎に迫って白日の元にさらして欲しいものである。