Nicotto Town



新古典派対ケインズ派

総務省の発表によると2009年全体の有効求人倍率が全国平均で0.47倍であったそうだ。希望退職を募集した会社が上場企業だけで191社に登ったという報道もあった。

一方で民主党の公約である子供手当がばらまきに過ぎないという批判も多い。
本当に景気対策、経済政策として効果があるのか、疑問視している人が多いわけだ。

政治的な意図としては人気取り、票集めのためのばらまきかもしれないが、経済学の理論上は理にかなった方法論ではある。

そもそも日本経済がここまで惨憺たる状況になったのは、リーマンショックなどの外的要因があったとはいえ、基本的には国内での政策の失敗である。
そしてその遠因は自民党政権時代の小泉改革にある。

ただし、我輩は小泉改革そのものが間違っていたわけではない、と考えている。
首相当時の小泉さんやそのブレーンだった竹中氏などは、経済学の世界では「新古典派」と呼ばれる理論の側に立っていた。

昔社会科でアダム・スミスの「神の見えざる手」という理論を習った事はほとんどの人があるはずだ。極論すれば経済は放っておいても自分で正しい方向に進むから、政府は極力手を出さず、ほっておけばいい、という考え方である。

米国で1920年代に大恐慌が起こった時にはこの理論が支配的だった。そのため、恐慌はどんどん深刻化して世界中に飛び火し、これが第二次世界大戦の一因になった。

その反省から、戦後西側先進諸国ではケインズという経済学者の理論が採用された。この理論を信奉する経済学者や政治家を「ケインジアン」と呼ぶ。
これもごくごく簡単に言うと、不況の時は政府が公共事業などを通じてじゃんじゃんお金を使い、それが企業や家計に波及するよう仕向けるべきだ、という考え方だ。

戦後の日本は基本的にはケインズ理論でやってきた。1990年代初頭のいわゆる「バブル経済崩壊」までは、うまく機能してきた。
が、ケインズ理論には不況が長引くと政府の財政状態が悪化する、というマイナス面がある。バブル崩壊後も日本政府はケインズ理論に基づき、政府自身がじゃんじゃんお金を使う、俗に言う「財政出動」を続けた。

ところが一向に景気は回復せず、政府の財政赤字だけがどんどん膨らんでいくという結果になった。つまりケインズ理論が機能しなかったわけだ。
そこで登場したのが、自民党内の新古典派理論の信奉者である小泉さんだった。

新古典派をまたごくごく簡単に言うと、政府がある程度経済に関与する必要は認めつつ、国営企業の民営化などを通じて経済の独り立ちを促す、という考え方。
小泉さんが良く使っていた言葉を借りれば「民間に出来る事は民間に」というアレだ。

この新古典派理論は、アメリカではレーガン政権が、英国ではサッチャー首相が取った政策でもある。こちらでは十年以上かかってやっと効果が表れ、一旦両国の経済は復活した。成功の前例はあったわけだ。

そこで郵政民営化、派遣労働の大幅解禁などの措置を通じて新古典派型の一連の政策を行ったのがいわゆる「小泉改革」である。
そういう意味では小泉さんはでたらめな企業優遇政治をやったわけではない。実際、小泉改革後に日本は戦後最長の好景気を迎えている。

ただし、新古典派式の改革には一つだけ絶対はずしてはいけないキモがある。
新古典派式改革はまず企業だけが潤う。次に企業の利益が、労働者の給料が上がる、職が増える、といった形で家計に波及しなければならない。
逆に言えば、政府は新古典派式経済改革をやるのなら、後で企業から家計にお金が回るように仕向ける義務があるとも言える。

2000年頃からの「戦後最長の好景気」と言われても、一般市民にはピンと来なかったのは、この最後の「企業から家計へ」というステップが無かったからである。
だから企業は利益を労働者に配分せず、好景気に気を良くして工場などの生産設備への投資にジャブジャブお金をつぎ込んでしまった。
その結果、リーマンショック後の不況で生産過剰に陥り、大赤字に転落する企業が多くでた。いわば企業内バブルとその崩壊だ。その好例がトヨタである。

だから民主党のばらまきは、自民党政権がやってくれなかった「企業から家計へ」というお金の流れを政府が無理やりにでも引き起こそうという意図なのである。
子供手当などは税金を使うから、ケインズ理論への回帰とも言える。

これが正しい政策なのかどうか、効果があるのかどうか、それは神様仏様にしか分からない事だが、今現在の目の前のお金の流れだけを見て判断すると、余計事態を悪化させる可能性がある。

民主党も自分の拠って立っている経済理論をもっと分かりやすく国民に説明する努力をしないと、今年の参議院選挙はまたムード先行、イメージ先行になってしまって、痛い目に合う可能性がある。

自民党も本気で政権を取り返したいなら、同じ努力をすべきだろう。

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2010/02/10 23:49
「子どもは社会で育てるべき」という考え方や「子ども手当てによる景気刺激策」という発想を全否定する気はないけれど、こういった支出は恒久性が担保されないと効果が半減してしまいますよね。
23年度以降全額支出は難しいと言っている状況では、結局財布の奥にしまわれてしまうのではと考えます。
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2010/02/01 09:05
なるほど〜〜すごく解りやすい。。

そういう事だったのですかぁ〜〜

どうなるんでしょうね?

がんばってほしいものです。。せっかく政権とったのだから。。。

これでまた自民にもどるとも思えないけど。。。ってか、思いたくはないけど。。。
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2010/01/31 20:36
アダム=スミスと同じ誕生日の私が通りますよ。

別のケインズさんとも同じですよw
そしてガッツ石松さんとも…w

…はじめてのコメントとしてふさわしくなかったことをお詫びいたします。
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2010/01/31 20:11
子供手当も非現実的なものだったようですね。

トヨタもこれまで通りにしていれば、今も大丈夫だったようにも思えます。
浮かれてしまったのでしょうか。
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2010/01/31 20:02
言葉一つ変えれば印象も変わるんだけど
どうにも政府というか公務員のネーミングセンスは・・・

「贅沢なんか欲しくないし、家も車も欲しくない
ただ、ひたすら普通の暮らしをさせてくれ」
って求められてるだけなのに・・・

マスコミも「格差!格差!」って怒り狂って騒いでたけど
騒いだってのは、やっぱアレかね?
「落っことされそうになった側」だったからかな?




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