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ディストピア小説

ディストピア(Dystopia)小説というジャンルをご存知だろうか?
ディストピアとは「ユートピア」の反対で、悪夢のような未来社会を指す言葉だ。

我輩がご幼少のみぎりの時代には日本という国全体が右肩上がりの経済成長期の真っ只中で、未来はいかに明るく素晴らしい物になるか、という予測が子供向けの学習雑誌にしょっちゅう載っていた。

が、我輩は生まれつきの天の邪鬼だったので、むしろ暗い未来を描いたSF小説の方が好きで、そういう小説を書いてみたりもした。(まあ、子供のやる事で完成したためしはなかったが)

日本でも特に有名なディストピア小説が3つあり、世界三大ディストピア小説と呼ぶ人もいる。

ジョージ・オーウェルの「1984」
レイ・ブラッドベリの「華氏451度(Fahrenheit 451)」
アントニー・バージェスの「時計仕掛けのオレンジ(A Clockwork Orange)」

我輩は3作とも読んだ。3作とも映画化されていて、映画の方も全部見た。
ピンと来た人が多分いるだろう。
今人気の村上春樹の「1Q84」の題名は「1984」のもじりだし、数年前マイケル・ムーア監督が作った「華氏911」という映画のタイトルも「華氏451度」のパロディーだ。
それぐらい世界中で読み継がれてきたのがこの3作品なのである。

いずれも科学技術の発達が、国民の心の中まで政府の思い通りにコントロールするために使われるようになった未来社会の物語である。
その仕組みに偶然気づいてしまった主人公が、犯罪者として追われる身になり、という展開も共通している。

ちなみに「図書館戦争」というアニメの中で主人公達が地方の図書館から護送した「予言の書と呼ばれている本」というのは、この「華氏451度」のことである。

さて、ディストピア小説が現実にはあり得ないフィクションと思えた時代には、ただ一種の知的な遊びとして読んでいた。
が、近年の日本は現実がディストピア小説の世界に近づいているように思えてならない。

「1984」の主人公は捕らえられて精神的な拷問と洗脳を受け、同志として管理社会に共に抵抗を試みてきた恋人を裏切る事によって釈放される。そして洗脳の結果、自分の憎悪の対象だったはずの国の独裁者(物語の中ではビッグ・ブラザーと呼ばれ、実在しているのかどうかさえ確かではない)に心から忠誠を抱くようになる。そして主人公が暗殺されることを暗示して物語は終る。

「華氏451度」は本の存在が禁止された世界で、隠してある本を探し出しては焼き捨てるのが仕事の主人公が、本と一緒に焼き殺される事を選んだ人物にショックを受け、いつしか本の魅力に取り付かれてしまう。こちらの主人公は犯罪者として追われ、文明世界の外へ逃亡し、そこでブックマンと名乗る集団に救われる。彼らは文明社会から追放される事と引きかえに辺境で暮らし、世界中の名著の内容を頭の中に暗記してそれを代々子孫に口移しで伝える、という生き方を選んだ人たちの集団だった。主人公がその仲間になる決心をして物語は終る。

これを現代の日本に移し変えれば、格差社会に疑問を抱いて会社や世間の理不尽と戦ったが、結局自分だけは大企業の正社員という安定した生活に帰って行く熱血漢の姿になるのではないだろうか?

あるいは、現代日本社会の現実から逃れたければ、ブックマンのような世捨て人として自分の信念に殉じるしかない、という話になるのだろうか?

3作とも文庫本なら今でも手に入ると思うし、映画もレンタルDVDで見られると思う。
日本の将来を担う若者にこそ、今読んで、あるいは見て欲しい作品である。

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2010/03/03 17:57
ステキ☆&伝言板&ブログコメ支援!で~す☆♪
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2010/02/05 23:46
3作ともタイトルは知っていましたが、読んだことがありませんでした。
今の年齢なら読めるかな。
おもしろそうだし、挑戦してみます^^




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