Nicotto Town



人造人間キカイダー

故・石ノ森章太郎さんの名作で「人造人間キカイダー」という漫画があった。ちょうど同氏の「仮面ライダー」と同じ頃に特撮ヒーロー物としてテレビ化され、第二シリーズとして「キカイダー01」という番組があったが、その主役をつとめた池田駿介さんが11日に亡くなったそうである。

いやはや、時の流れは速いものである。子供時代のヒーローが鬼籍に入るとは、我輩も年取るはずだ。

さて、ファンの人たちには申し訳ないが、我輩はテレビ実写版のキカイダーはあまり好きではなかった。何年か前、「人造人間キカイダー The Animation」という原作漫画のストーリーに忠実なアニメが作られたが、こっちの方が原作漫画が名作である理由がよく分かる。

光明寺博士という天才科学者が「ダーク」という名の、ニコッとタウン征服、じゃなかった、世界征服をたくらむ秘密組織に殺人ロボットを作らされていた。
ロボットというのは命令されれば平気で人を殺してしまう。

そこでダークに対抗するため、ひそかに人間と同じように自分で善悪を判断出来るロボットを作ろうとしたのが、キカイダーであった。普段は人間の青年と同じ姿で「ジロー」と名乗っていた。

キカイダーには「良心回路」(作中ではジェミニとも呼ばれる)が組み込まれていて、これで人間と同じ良心が働くはずだった。
ところがこの良心回路がなぜか不完全で博士の娘であるヒロインがあの手この手を尽くすが、どうしても回路が完全に作動しない。
そのためロボットの姿に変身してダークのロボットと戦う時も本来の戦闘能力を発揮できない。

さらに「シャドウ」という新たな敵が現れ、助っ人としてジローの試作品として作られていた兄貴分のロボットが目覚めさせられる。これが「キカイダー01」。
池田駿介さんが演じたのはこのヒーローだった。

原作とアニメ版では、キカイダー、01、さらにキカイダー00(ダブルオー)という仲間全員が敵に捕まってしまい、ジロー・キカイダーは「服従回路(イエッサー)」という名の、いわば悪の心の回路を取りつけられてしまう。

ところが、良心回路と悪の心の回路を両方持った事によってキカイダーは初めて完全な状態になり、圧倒的な強さで敵をせん滅する。この時01は敵に操られていたためキカイダー自身によって破壊されてしまう。

全ての戦いが終わり、ハッピーエンドのはずだが、ジローの姿に戻ったキカイダーは悲しそうにこんな事をつぶやく。
「これから僕はこの二つの心の葛藤に永遠に苦しめられるだろう・・・」

そう、人間と同じような心を持ったロボットを作ろうとするなら、善の心だけを植え付けようとしてもダメで、善と悪、両方の心を持って初めてキカイダーは人間同様になれた、という結末である。

これは人間という存在そのものに対する石ノ森さん一流の痛烈な皮肉、風刺だったと思う。
現実の世の中にだって100%の善人はいないし、仮にそんな人がいたら世間では生きていけまい。

仮面ライダーと同時期にテレビ化されたためか、その亜流、二番煎じという目で見られがちだが、キカイダーの原作は決して単純な変身ヒーロー物ではない。
仮面ライダー以上に人間という生物の業の深さを問いかけた、他に例を見ない深い物語だったと我輩は思う。

ともあれ、池田駿介さんのご冥福をお祈りする。

アバター
2010/06/14 23:44
一般には子供向け番組と思われている作品でも、大人の目で見てみると
作り手の強烈なメッセージがこめられたことに気づかされる作品というのはかなり多いですね。

子供が見てもそれなりに楽しめる。
しかし大人になってもう一度見てみると、その意味するところの深さに初めて気づく。
日本のアニメ・漫画が国際的に評価が高い理由もここにあるかもしれません。

池田さんのご冥福をお祈りいたします。
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2010/06/14 23:11
これは名作ですね。
私も原作のほうが好きで、心に深く残っている作品です。
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2010/06/14 16:06
今朝の朝刊に池田さんの訃報が掲載されてましたね。
享年69才とのこと。TV放映当時もそれなりに
おじさんだったのですね。
原作も読んでみたくなりました。
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2010/06/14 13:23
小さい頃、実写の再放送を見てたんですけど、ガチャガチャした顔面(←失礼!(^^;)と

ギターのイメージしか残ってないんですね(笑)(^^;

何を見てたのでしょうね 子供だったから さらっと見てたのかな~(笑)
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2010/06/14 09:54
漫画の「人造人間キカイダー」は、
私が生まれて初めて全巻まとめ買いしたコミックスです。
そのくらい大好きでした。
テレビの「キカイダー」もすごく人気があったけれど、
あの原作のシリアスさは、テレビではちょっと表現できないです。

漫画の中で、ジロー(キカイダー)はピノッキオに例えられているんですよね。
人間になりたかったピノッキオ。
良心回路の他に悪の心の回路を取り付けられてしまったために
悪に負けてはいけないと、兄弟たちまで破壊して敵を倒すけれど、
その結果、彼は本当に一人きりになってしまう。
「人間になったピノッキオは、はたして幸せだったのだろうか?」
漫画のラストシーンの石ノ森さんの問いかけは、重いです。
アバター
2010/06/14 01:50
そんな深いお話だったんですねー

知りませんでした。。

あの、ギターをぽろろんと鳴らしながら出てくるところが、、なんか、、微妙だなと、、子供心に、、

思っていましたが、、、
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2010/06/14 00:30
「人造人間キカイダー」のフィギュアを見かけては、これ何なんだろ?って思ってました
そんな深いお話だったんですね 機会があったら読んでみたいです
仮面ライダーとは、お話が全然別物なんですね 仮面ライダーもちょっと悲しいお話ですが。
参考になりましたww
アバター
2010/06/14 00:09
実写版を弟の横で見ていただけだったんですが、原作は結構深い話だったんですね。
原作と違う話といえば「デビルマン」とか浮かびました。
あれはラストも結構厳しいので、最初に読んだときは衝撃的でした。

キカイダーに限らずヒーロー物の主役は結構高齢になられていますね。
初代ウルトラマン役の娘がウルトラマンシリーズに出演していたのも大分前の話ですしね。




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