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ビジネスモデルはいつか必ず滅ぶ

日本民間放送連盟の発表によると、ローカル局を含む地上波放送194社の2009年度の売上高合計が前年比7.8%減だったそうだ。
広告収入だけで見ると2008年度からの2年間で14%も減っているという。

広告収入の減少をコストカットでしのいでいるという状況なのだろう。
これと同じ事は新聞、雑誌などのいわゆる「紙媒体」と言われるメディアでは数年前から起きている。これが地上波テレビ局に波及した格好だ。

紙媒体であれ放送局であれ、広告収入の減少の理由ははっきりしている。
一つはスポンサー企業が広告予算をインターネット広告に多く振り向けるようになった事。当然、既存のメディアに割り振られる広告予算は減る。

もう一つは大企業が、従来の部数、視聴率などの測定方法を信用しなくなってきた事だ。
日産自動車のカルロス・ゴーン社長は2,3年前だったか、日本ABC協会が発表する新聞、雑誌などの紙媒体の発行部数を、自社の広告出稿の基準にする事を考え直すと公言して新聞社や広告代理店をあわてさせた事がある。

日本ABC協会は新聞社、雑誌を発行している出版社、そこに広告を出す代理店などの企業が法人会員として運営している団体だ。
この協会が独自の調査法で、例えばA新聞の一カ月、一年の発行部数は全国で何部、Xという雑誌の発行部数はこれだけ、という数字を会員企業に報告する。

広告を出すスポンサーはこの数字に基づいて各新聞社や出版社の広告部門と交渉し、広告料金を決める。
同じ内容、大きさの広告でも部数が多い媒体ほど広告料金は高くなる。いわゆる全国紙はこの部数が大きいため広告収入も莫大になり、長年わが世の春を謳歌してきた。

ところが、数年前から「押し紙」という問題が公然とささやかれるようになった。
押し紙とは、日本ABC協会の発表する部数の数字を水増しするために、新聞販売店に必要以上の部数の新聞を強制的に注文させる事を言う。

協会の調査は新聞販売店に「届く」新聞の部数を数えているから、配達されるあてのない新聞でも全国の販売店に卸せば部数はいくらでも水増し出来る。
最初は一部のフリージャーナリストなどが取り上げていただけだったので、新聞業界は余裕で黙殺していた。

ところが数年前、毎日新聞社の常務まで務めた人物がある新書本で押し紙の実態を詳細に暴露した。このあたりから押し紙という言葉が世間一般に認知されてきてしまった。
前記のゴーン社長の発言などは明らかにこの件を意識したものだった。

テレビの視聴率は無作為に選ばれた世帯のテレビ内部に、いつどのチャンネルを見たかを記録する機械を仕掛けさせてもらい、その数字がそのまま各番組の視聴率として発表される。
が、この世帯数が非常に少ない上に、ハードディスク付きビデオが出回り始めてから視聴率と実際の視聴行動が一致しないのでは?という疑問が出てきた。

この視聴率を記録する機械はリアルタイムでテレビをつけた時間だけしか記録出来ない。
HDビデオを持っている人なら、録画して貯めておいて休日にまとめて見る、という行動を取る人が多いだろう。ところがその機械は、録画して見た番組をカウント出来ない。

さらに、ビデオに録り貯めして見る場合、CMをスキップしている人の方が多いと思う。
仮にビデオ録画をカウント出来る機械が出来たとしても、CMを片っ端から飛ばして見る、というのではスポンサーにとってはその番組に金を出すのは無駄でしかない。

こういう理由でスポンサー企業が既存の広告媒体である新聞、雑誌、テレビなどに対して「ほんとに広告の効果があるのか?」という疑問を抱くようになり、これが既存マスメディアへの広告出稿の減少を引き起こした。

スポンサーにとっては当然の行動だが、既存のメディアにとっては一大事である。
インターネットがいよいよ商売仇として台頭してきたというだけでなく、自分たちの既存の収入源の構造自体が変化し始めたという話だからだ。

だから新聞社であれ出版社であれ民放であれ、不況だから収入が減ったという単純な話ではない。今後景気が回復しても広告収入の減少はトレンドとしては止まらない、という事になる可能性が高い。

いわばビジネスモデルが通用しなくなったわけだから、新しいビジネスモデルを今のうちに構築しておかねばならない。
しかしマスメディア各社の場合、これが非常に難しいのだ。

新聞であれ雑誌であれテレビ局であれ、商品を作る組織と収入を稼ぐ組織が分離している。
例えば新聞社の商品は新聞記事だが、それを作るのは記者、しかし広告収入を稼ぎ出す広告部門は全く別系統の組織である。
雑誌なら編集者と広告部門、テレビなら番組製作スタッフと営業部門、やはり別の組織と言っていい。

どんなビジネスモデルもいつかは通用しなくなる。
マスメディアの場合、それを取材、製作部門の社員がちゃんと理解しているかどうかで、各社の命運が分かれるだろう。

アバター
2010/07/18 13:17
どの業界も斜陽になる前に転換を図れたらよいのですが、現実にはなかなか難しいですね。
豊田が織物業から自動車にシフトしたのも同時代の人からすれば狂気の沙汰だったろうし。
マスコミは巨大な権力がある割に基盤が他人任せなところがあるので大変そうです。
(放送免許等で実質業務独占状態が続いていましたからね~)
アバター
2010/07/17 08:40
なるほどねー

それで、番組が、つまらなくなって行く訳だねー

低予算だもの。。。

アバター
2010/07/16 00:11
とある家電メーカーが白物家電でリコール騒ぎを起こし、
一時期全製品のTVCMを自粛していた期間がありました。
当然、宣伝媒体としてTVCMの高かった白物家電の売上は落ちたのですが、
元々インターネット広告の比率が高かったAV製品については
TVCMがなくなっても全く影響がなかったらしいです。

その時から、このメーカーはTVCMの効用に疑問を持つようになったとか。




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