前のブログで書いたインチキ出会い系サイトのサクラの手口について、発見した事である。
いやインチキ、サクラと侮るなかれ。きちんとアブラハム・マズローの「欲求段階説」に基づいているのである。

マズローとは２０世紀中盤に活躍した米国の心理学者で、彼の学説は「自己実現理論」とも呼ばれる。
「もしドラ」で有名になったピーター・ドラッカーのマネージメント理論も、マズローの理論に基づいている部分が多い。

マズローの理論では、社会的存在としての人間は心理学的に見て五段階の欲求を持っているとされる。

（１）　生理的欲求
（２）　安全の欲求
（３）　所属と愛の欲求
（４）　承認の欲求
（５）　自己実現の欲求

まず生理的欲求とは一番動物的な物で、衣食住などの生活の最低限の必要性が満たされる事である。
この理論には「性欲」は入っていないが、まあ同じレベルの欲求なので、サクラはまずここから仕掛けてくる。

文面はテレビだと確実に「ピーーー」という音がかぶさる内容なので、想像がつくと思う。
我輩の場合、年齢はいい年こいたおっさんで登録したから、「神」になりたがる以上ロリコンに決まっている、とサクラは当然判断する。

我輩は金を出してポイントを買う気はないので、メールの返信などはできなくなっている。
どうやってその気にさせてポイントを買わせるか、ここがサクラの腕の見せ所である。

最初は取り締まりを意識してか、女子大生や専門学校生、つまり１８歳は越えているギャルからのメールである。
返信しないでいると段々年齢が下がって来る。
まず、JK、JC、しまいには「小学校５年生」の女の子からお誘いのメールが来た。

いや、それはもうロリコンを通り越してるだろ？
もはや別な趣味だろ？かえって引くだろ？

次に安全の欲求である。
出会い系に引っかかる馬鹿は少なくなっているだろうから、「うちはインチキサイトではありません」という事を涙ぐましい努力で伝えようとする。

「１００％無料」「必ず出会えます」的な文面のメールを無視し続けると、「出会えました」「神が降臨しました」という体験談が送られてきた。
一緒にしては失礼だろうが、化粧品やダイエットグッズの「成功者の体験談」と同じ仕掛けである。

次が所属と愛の欲求。これは例えれば派遣から正社員になって安定した生活を送りたいという願望である。
出会い系の場合、エッチの趣味が共通、住んでいる地域が同じなどの共通点を見つけるべく、あらゆるタイプの誘い文句を送って来る。
それで例えば「巨乳」というキーワードのメールに返信したら、あとはFカップとかGカップの女性からのメールが選択的に送られてくる、というわけだ。

次に承認の欲求。これは会社とかで言えば、周りから尊敬されたいとか「出来るヤツ」と見られたいという事だ。
出会い系の場合、「あなたのプロフを見て一目で気に入りました」という文面のメールが来る。

いろんな年齢、タイプの女性が我輩のプロフを見て興味津々になったというわけだが、我輩はそのサイトでプロフなど作成した覚えはない。
メルアドと適当な年齢を入力しただけで放ってあるのに、プロフ見て一目ぼれなんか、どうやったら可能なんだ？

最後に自己実現の欲求。実社会でもこの段階に達する事ができる人間はそういない。
他人からどう思われようが、どう評価されようが、どうでもいい。
ただひたすら自分の理想の実現のために人生を賭ける、という生き方に到達した人である。
ただし、どんな人間でも「正義のヒーローになりたい」とか「世の中の役に立ちたい」という漠然とした願望程度ならある人も多い。

今回のサクラの手口で一番感心したのはこのステージである。
とあるJKから「親友の女の子がサイトで出会った男にだまされたので犯人を探すのを手伝って欲しい」というメールが来た。
また孫の女の子が家出して「このサイトに出入りしているらしいので、見つけて家に連れ戻す手助けをしてほしい」というメールも来た。

どっちもその人たちと連絡取ったり、その犯人なり家出した孫なりをサイト上で追跡しようと思ったら、かなりのポイントを消費する。
大量のポイントを買ってもらえるならサイトとしては目的を達する事になる。

いやはや、こうしてみると会社における部下の人心掌握テクニックに通じる部分がけっこうある。
それによくこれだけ架空の人物と話を考えだせるものだと感心する。

しかし一つ、根本的な疑問が残る。
これだけ高度なセールストークの知識とノウハウを持っているのなら、まともな会社作って、まっとうな商売をやった方がよほど確実に儲かるんじゃないかと思えてしょうがないのだが・・・・・・