Nicotto Town



目黒のサンマ、日本の漢方薬

今東京の観光地へ行くと中国語が聞こえて来ない所はない、と言っていいほどである。
さて中国人が東京で土産に買いあさる物の中に、日本人にとってはなんとも意外な品があるのだそうだ。

何と「漢方薬」だそうだ。まるで落語の「目黒のサンマ」みたいだが。
いや、漢方薬と言ったら中国が本家、本元、本場だろ?なんでわざわざ日本に来て買うんだ?

日本へ観光旅行に来られる中国人はかなり上の方の富裕層である。
そして中国では金持ちほど自国産の製品を信用しない、という傾向があるそうだ。
共産党の幹部に供されるような物ならともかく、街で売っている自国産の漢方薬は信用できない、質が心配ということらしい。

まあ、品質については単にイメージの問題かもしれないが、漢方薬すら日本産が好まれるというのは、日本人としてはうれしいような、可笑しいような複雑な気分である。

我輩も風邪をひくと大抵「葛根湯」で治す。
明治時代に西洋医学を導入して以来、日本では漢方薬は迷信扱いされてきたのだが、最近になってれっきとしたお医者さんたちの間で、再評価の動きがあるらしい。

中国では中華人民共和国の成立以来、国策として漢方薬の再研究が行われ、その成果は日本にも伝わっている。
西洋科学の手法で漢方薬の成分を分析した結果、一部には確かに迷信でしかない物もあったが、多くはちゃんとした薬効がある事が科学的に証明されている。

葛根湯の場合は、なんと人間の免疫細胞を活性化させる効果があるのだそうだ。
普通の風邪でも、ウイルスそのものを退治してくれる薬は今でも発明されていない。
市販の風邪薬は症状を緩和させる効果しかない。
ワクチンも実は免疫機構の引き金として働くだけで、ウイルスそのものを殺す力はない。

そしてワクチンの場合、香港Aとかソ連Bとかのウイルスの型が違うと、そのワクチンは効かない。ウイルスの型の予測がはずれると、ワクチン接種は何の役にも立たないのである。
まして新型インフルエンザのような型が未知のウイルスだと、ワクチン療法はお手上げである。

その点、葛根湯は人間の免疫そのものを活性化させるから、ワクチンのように劇的には効かない代わりに、どんな型のウイルスにも効果が出る。
体内の免疫細胞が増えてウイルスを攻撃するから、風邪には葛根湯なのである。

また「医療ツーリズム」と言って、外国人に日本で長期滞在して病気の治療を受けてもらおう、という話も進んでいる。
これも主なターゲットは中国人らしい。
漢方薬でさえこうなのだから、日本の医療技術への中国人の信頼はもっとすごいかもしれない。

日本の医学に対する中国人の高い評価はなにも近年になって始まった話ではない。
中国近代文学の開祖と言われる「魯迅」という作家がいた。
実はこの人、1904年から1906年に、仙台の医学学校に留学していた。

魯迅の父親は原因不明の大病に長年苦しみ、魯迅の家族は家が傾くほどの大金を払って漢方医の治療を受けさせた。
だが当時の漢方薬は科学的な検証を受けておらず、かなりいいかげんな物だったようで、魯迅の父親は全く治療の効果が出ないまま苦しみ抜いて死んでしまった。

魯迅は当時の中国の医療を改革するという志を抱いて、一足先に西洋医学の研究が進んでいた日本にわざわざ留学して来た。
ところがこの留学中に魯迅の人生を変える出来事が起こる。

ちょうど日露戦争の最中で、陸上の主戦場は満州(現在の中国東北部)だったので、ロシア軍のスパイをしていた中国人が日本軍につかまって銃殺される事が時々起きた。
仙台の医学校でも、現地での日本軍の活躍を伝える写真スライドや映画を学生に見せる事があった。

その中に中国人スパイが日本軍によって銃殺される場面があって魯迅もそれを見てしまった。彼は大変なショックを受けた。
同胞が殺されたから、ではない。処刑される中国人の周りに大勢の中国人がいて、同胞が殺される様をゲラゲラ笑いながら見物している、そのシーンにショックを受けたのだ。

当時の中国は西洋列強の植民地にされて久しく、一部の中国人は精神的、道徳的にそこまで堕落していた、という事だ。
魯迅は「祖国の精神を治す医者になる」と言って、医学校を中退して帰国し作家としての活動を始めた。

魯迅は1936年に死亡したので、祖国の真の独立回復は見られなかったわけだが、現在の中国、台湾においても作家としてより、中華民族の精神的指導者として高く評価されている。

その日本の地で漢方薬を買いあさる同胞の末裔を見たら、魯迅ならどんな感想を抱くのだろうか?

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2011/02/27 18:07
そういえば中国人観光客が薬局で正露丸等買いあさってるのをテレビで見た。
金を落としてくれるのはいいけど。自国の品物が信用できないようですね。
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2011/02/26 23:46
中国人の観光客が、日本で色んな物を買って お金を落してくれてますね、
あの、富裕層さん達の買物ってすごいですよね、バブル状態ですよね。

自国の食品が危険だと思えるのは、けっこう冷静に自分の国を見てる人達なんだなって感じます(^^;;
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2011/02/26 19:35
中国の歴史は本当にもったいない。
早くから開けていたのに、途中からは形式に拘って速度が鈍ってしまった。
折角王朝を挙げて取り組んでも易姓革命を経れば大半は失われてしまう。
結果、大陸の住人は国家意識よりも個人を優先するようになる。

魯迅は日本という外国から母国を客観視する機会を得、支援してくれる日本人を見つけて目的を達成しようとしましたが、現在の留学生はどうでしょう。
母国でも比較的恵まれた立場にいる人が大半である中で、どのくらいの人が「今の中国の問題点を変えなければ」という発想を持ちうるのかということになると、歴史の渦中にいる私達には想像もつきませんね。
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2011/02/26 13:09
中国は広いですから良く解りませんが
根本的に土壌汚染とかされてそうで信用できないですね^^;
ロシアとかからも治療に来日する富裕層は多いそうです。
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2011/02/26 09:34
おはようございます。
私は薬学部の学生で、実は葛根湯の主要材料でもあるマオウについて現在卒論に取り組んでいる真っ最中です。
マオウの成分であるアルカロイド(エフェドリン)は、我々の先達が発見した成分であり、私はこれに非常に心惹かれております。
漢方薬は成分の相互作用により効能を発揮しますが、それはまた思わぬ副作用をも秘めた諸刃の剣であることは言うまでもないことです。
けれど、現在我々がまだ見出していない可能性も様々隠し持っている筈であり、それを思うと私は胸躍る思いです。
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2011/02/25 23:06
昔、狂人日記を読みました。
そういった背景を全く知らずに読んでいたのですが、なるほど、そういうことだったんですか。
勉強になります。
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2011/02/25 22:11
魯迅のような指導者が中国に大勢いてくれたら、もう少しはまともになったのでしょうか。
漢方薬を買いあさるだけならいいのですがね・・・
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2011/02/25 21:50
中国、、、、三千年とも四千年ともいわれる歴史が、、、泣いているような気がする。。。





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