福島第１原発はもう廃炉にするしかないようである。
５，６号機は無事のようだが、あの惨状を見せつけられた後では、再稼働すると言ったら福島県民が許してはくれまい。

福島第１原発の総発電量は約４７０万キロワット。東京電力は被災地に他にも火力発電所を複数持っており、こちらも被災している。
今回の震災で関東が失った電力供給源の総量は１千万キロワット近く。

さらに新潟県の柏崎刈羽原子力発電所（これも首都圏に電気を送るための東京電力の発電所である）が新潟中越地震の後遺症で、原子炉の３分の２が止まったままだ。
だから今首都圏は最低でも１千５百万キロワットの電力供給を失っている事になる。

夏に入れば解決不能の電力不足に陥る事は避けられない。
現在の計画停電では対応できないのは目に見えている。

さて先日、地震で我輩の家の電子レンジがご臨終になって秋葉原へ買いに行った。
その時ついでにLED照明器具を見て来たのだが、アキバの量販店ではさっそくLEDのキャンペーンをやっていた。

LEDとは light-emitting diode の略で、直訳すれば「光を出す半導体素子」。
今ある電球、蛍光灯とは光を出すメカニズムが全く違う。
電球や蛍光灯は基本的には内部に「燃焼」を発生させて光を出す。
LEDは電気を直接光に変換する。

だから同じ大きさの器具で同じ明るさを出すなら、LEDの方が電力消費量が従来の電球の半分以下で済む。
だから首都圏の全ての電球をLEDに取りかえるだけで、相当電力消費量を減らせる。

LED電球や照明器具は既に市販されている。
ただ、居間などの部屋の照明に使うには、蛍光灯を取りつける器具そのものを丸ごと取り換えなければならない。
この器具が一個２万円以上して、ちょっと手が出ない。

東京都心では信号機、駅の電光掲示板などの光源はかなりLEDに置き換えられている。
だが関東全体ではまだまだ膨大な数の従来型の電球が使われているはずだ。
これを全てLEDに取りかえるのだ。

LED照明は電球の寿命が４万時間と長いからお得、という宣伝文句だが、今の関東では寿命はどうでもいい。
今ある照明器具より消費する電力が少ない事が一番大事である。

最大の課題は蛍光灯との比較だ。
LEDと蛍光灯、どっちが消費電力が少ないかはメーカーによってだいぶ差があるようだ。
ここは政府が後押しして電器メーカーに蛍光灯より電力消費が少なく、かつ明るさに遜色のないLED電灯を開発させるべきだ。

既にアキバでは棒状の蛍光灯と置き換えられるLED電灯を売っている。
ただ、蛍光灯より暗く、取りつけられる器具本体の型が限られている。

まだまだそういう欠点があるのだが、民間企業が本気を出せば技術的な事は解決できるはずだ。
政府はまず電器メーカーに開発、量産を促し、そのために支援をする。

そして量産の目処がついたら、まず首都圏、次に関東全域で従来の電球、蛍光灯の新規販売を禁止し、LED電灯に強制的に取り換えさせる。
LED電灯は高いのだが、量産が始まれば値下がりするだろうし、たとえばLED照明器具に限って３年間は消費税をゼロにするとか、そういう手は政府の決断次第でいつでも可能だ。

もし関東全域の全ての照明器具、信号機、街灯、ネオンサインなどの光源がLEDに置き換わったら、かなり電力消費を減らせる。

そしてこれを法律で強制すれば、関東で莫大な買い替え需要が発生する。
関東で完了したら、次は関西、次は中京という風に、順次日本全国に拡大していく。
電器メーカーは向こう２０年ぐらい安泰になるのでは？

またそれだけのLED電灯を生産するとなると、大規模な工場がたくさん必要になる。
その工場を被災した東北地方に建てる。

どのみち壊滅した地域は一から再建しなければならないのだから、そこにLED電灯の大工場ができれば、地元の一大産業になる。
また職場そのものが消滅したという被災者も多いだろうから、その人たちに雇用を創出できる。

関東でまだ使える電球、蛍光灯が大量に廃棄物として出るが、それは政府が集めて無料で被災地に寄付する。
仮設住宅にだって電灯ぐらい必要だし、街が本格的に再建され始めたら、大量の照明器具が必要になる。
当面は関東のお古で、しかしただで手に入る電球、電灯で急場をしのいでもらえば、復興のコストが小さくなる。

関東の、ひいては日本全体の電力消費を削減し、東北の被災地に新産業を生み出す、一石二鳥の方法ではないかと思うのだが、どうだろうか？