Nicotto Town



フクシマ・モデルの確立を

福島県郡山市役所が、放射性物質で汚染された学校や保育園の表土を除去するという独自の行動に出た。
そんな土の上で子供を遊ばせたり、運動させたりして大丈夫か?という声は前々から上がっていたから、ここまでは英断と言える。

だが、その取り除いた土を一般のゴミ処分場に運ぼうとして地元の住民から猛抗議を受けて、土は市内に積まれたままである。
アイディアは良かったのだが、取り除いた土が「放射性廃棄物」である事を忘れていたわけだ。

だが、福島県の各地で遅かれ早かれ同じ難問に直面する事だろう。
放射性物質で汚染された土壌をどうやって浄化するか、今のうちからあらゆる可能性を検討しておくべきだろう。

チェルノブイリでは汚染地域に菜種を植えるという方法が取られている。
原発からまき散らされた放射性元素のうちやっかいなのはセシウムとストロンチウムだ。
共に半減期が約30年と長く、かつ化学的性質がカリウムやカルシウムに似ているので、体内に入ると深刻な健康被害を引き起こす。

が、カリウムは化学肥料の主成分の一つでもある。
つまり、放射性セシウムは植物に吸収されやすいという事だ。
だからチェルノブイリの近くでは、菜種を栽培して土中にしみ込んだ放射性セシウムを取り除こうとしているわけだ。

ひまわりでも同じ効果があるとして、日本の科学者の有志グループが福島県の汚染された地域にひまわりを植えようと呼びかけている。

さて、土壌の浄化だが、ゼオライトという物質を使う方法がある。
ネコのトイレ砂に使われている白っぽい鉱物で、福島第一原発内部では汚染水の処理に既に使われ始めている。

ゼオライトはミクロのレベルで穴が多い、軽石のような構造をしていて、その隙間に放射性セシウムなどが吸着されるらしい。
ネコのトイレ砂に使われるぐらいだから、高価な物ではあるまい。

汚染された土とゼオライトの小さな塊を水で混ぜ、攪拌する。
すると放射性セシウムが水に溶けてゼオライトに吸着される。
荒い目のザルでゼオライトを濾してやれば、土の粒子だけが分離される。

その土を乾かせば、放射性物質の濃度が低くなった土になる。
これを数回繰り返せば、ゼロには出来なくとも、安全と言えるレベルの土に戻せるだろう。
使ったゼオライトは高濃度放射性廃棄物になるが、サイズはぐんと小さくなるから、鉛のケースに入れて六ヶ所村の核廃棄物処理場で引き取ってもらえばいい。

一か所の土を取り除き、どこかの指定の処理場に運んでゼオライトで放射性元素を除去する。
別の場所の汚染土を取り除いたら、そこへこの浄化した土を表土として運び入れる。
これを順繰りに繰り返せば、表土を除去して放射線の危険を失くし、その土の捨て場所に困る事もなくなる。

しかし、こんな大規模な工事を市町村単位でやるのは無理だ。
最低でも県庁、できれば国が音頭を取って進めるべきだろう。
東京電力もゼオライトを使う技術の提供ぐらいはするべきだろう。

チェルノブイリ原発は実は半分軍事用で、あそこに原発が存在する事自体が国家機密だった。
さらに当時はソ連の領土だったため、徹底した情報隠ぺいが行われ、気づいた時はほとんどの問題が手遅れになっていた。

その点福島第一原発の事故は世界中の衆人環視の下で進行している。
ならば、原発事故、放射能汚染が起きてしまった後、何をするべきか、何が必要か、どんな方法が有効か、そういった情報やノウハウを堂々と蓄積できる。

世界にはまだ多くの原発があるし、中国は早くも原発増設の方針は変えないと明言している。
他の新興国でも原発は建設され続ける可能性の方が高い。

そしてそれは、福島原発のような事故が起きる可能性もまた、将来にわたって存在し続ける事を意味する。
原発事故や放射能汚染が起きてはならない、というのは反論の余地はない。
しかし、その事と、「起きてしまった時の対処法」を確立しておく必要性は別の話だ。

旧ソ連と違って隠しようのない状況で起きた最悪の放射能汚染事故であればこそ、後世に残すべき事故対処のノウハウをありったけ獲得しておく。
そしてそれを原子力災害対処の「フクシマ・モデル」として世界に売り込めばいい。

広島、長崎は被爆の悲劇の地であるがゆえに、放射線障害の治療研究では世界最高水準の地になった。
「フクシマ」という名前を「悲劇の地」「原発事故の地」としてではなく、原子力災害の救助、対処のノウハウの発祥の地として歴史に残すのが、現代の日本人の使命である。

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2011/04/29 18:38
逆境をバネに、勉強になりました。福島の復興を願ってひまわりを植えよう。
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2011/04/29 06:27
福島県でも避難地以外で汚染濃度が高いと有名になってしまった
飯舘村の村長が、それと同じ路線のことを訴えています。
計画的避難対象にされたけれど、
村全体で移動しろと言われたら、村は消滅する。
そうではなく、放射能をどうしたら除去できるか、
どうやったら汚染された地域で暮らしていけるようになるか、
将来ふたたび世界のどこかで原発事故が起きたときに
対応の指針にできるような
そんな「実験地」に飯舘村をすればよい、と。

私も福島県に住みながら、そんなふうに思っています。
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2011/04/29 00:30
いつもすごくためになるブログ拝見させていただいております
今回のブログは大いに興味があります
放射能に植物は想像もできませんでした
すごく勉強されているのですね
これからもブログ楽しみに読ませていただきます^^
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2011/04/28 23:22
表土を削り取るってニュースを聞いた段階で「どう処分するんだろう」とは思ってましたが、やっぱりストップがかかったようですね。
見えないものに対する警戒心というのは大丈夫といわれたからなくなるという類のものではありませんから。

おっしゃるように、今回のケースは後世に起きるかもしれない事故に対する提言ともなるでしょうね。
ただ、現在のように関係機関が情報の秘匿・責任回避に終始しているようでは難しい。
東北電力の女川原発の事例と併せて、「何をしていれば事故は防げるのか、事故が起きてしまったらどういった対応が望ましいのか」というセットで記録できるよう情報の公開と必要な対策の導入を。

細かい検証は後にするとして、優先順位に応じた対応を続けることが後のケースへの貢献と被害拡大の阻止につながるのだろうと思います。
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2011/04/28 22:18
放射性廃棄物処理の、ノウハウを他国に売り込めるレベルにまで、早くなると良いですね。
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2011/04/28 21:54
全くその通りですね。。

発電に関する事も、、どんどんやってほしいですね。

海上風力、、波を使った発電、、各家庭での太陽光など、、どんどん進めて欲しいです。




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