石原東京都知事が２０２０年夏季オリンピックの開催地に立候補する事が確実になったようだ。「まだ懲りないのか？」という声もあるようだが、ここまで来たら素直に応援したい気分になる。
だが、招致は絶望的だろう。

震災復興が先とか、放射能汚染の問題が、とか、それを別にしても深刻な障害がある事が判明してしまった。
それは何かと言うと、電力不足である。

夏季五輪と言う通り、期間は大体８月の真ん中の１７日間である。
東京ではまさに電力消費の最大ピーク時だ。
開催は９年後だが、開催地の決定は２０１３年、つまり再来年のIOC総会での投票で決まる。
IOC委員が開催地決定の参考として見る各候補地の状況はそれまでの間の事である。

今月１日から電力使用制限が始まって東京のみならず日本中の都市がどんな有様になっているか、これは日本人が一番その深刻さを分かっただろう。
IOC委員もまた報道などを通じてそれを見ている。
いくら「９年後には何とかなっています」と言っても、さあ、納得してくれるかどうか？

大規模蓄電施設などの「電力需給平準化」を怠ってきた事が、今回の五輪招致では完全に致命的になったと考えるべきだろう。
７月に入ったばかりで通常の経済活動にすら深刻な支障が起きているのだから、オリンピックを開催するとなったら、電力が致命的に不足する。

電力供給は実は足りている、東京電力の陰謀だ、などという話はあるが、ここでは東電の言う事を素直に信じるとしよう。
すると２０２０年にオリンピックを開催できるだけの電力供給を確保するには、原発のフル稼働しかない。

しかし、開催地決定が行われるのは２０１３年だから、まだ福島原発事故は進行中か、落ち着いているとしても記憶が生々しい。
原発の電気で東京五輪を、という事になったら拒否反応がかなり強いのではないだろうか？
仮に東京に招致できたとしても、脱原発、反原発の国も増えているからボイコットされかねない。
ましてその電力が福島第二原発から送られているとしたら、なおさらだ。

原発が再稼働できないまま五輪を開催したら、全世界からやって来る選手はもちろん、観客、報道関係者にまで、冷房も照明も不十分な環境で我慢してやって下さい、という事になってしまう。
もし競技の最中に大規模停電でも起きたら、五輪史上に残る恥だ。

少なくともIOCの投票が行われる２０１３年の時点では今とたいして改善されないはずだ。
もしIOCで、「いやあ、原発が動きますから大丈夫ですよ」なんて言ったら、かえって印象を悪くするのではないだろうか。
たとえ、その通りになっているだろうとしても、である。

「蒸し風呂のような気候の真夏の東京で冷房も照明も満足に使えませんが、我慢してオリンピックやって下さい」と言えるのか？
原発が動くから大丈夫と言ったら外国の人たちから「日本人はもうフクシマを忘れたのか？」と批判されかねない。

立候補する事に今さら反対はしないが、成功する可能性は非常に低いのではないだろうか？
開催地決定のIOC総会の時点で電力不足が解消されている、そういう状況になるまで五輪招致は待つ方がいいのではないだろうか？