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放射性元素無害化の可能性

放射性物質を「無害化」できる商品とやらが出回っているらしいが、ほぼ100%インチキだと思った方がいい。
放射線を出しているのは原子核なので化学的に放射能を止める事は不可能である。
ゼオライトなども放射性元素を例えば水の中から移動させるだけであって、放射性セシウムなどを消滅させられるわけではない。

ただ、日本でも放射性元素を文字通り「無害化」する研究は行われている。
放射性元素の原子核の中に、陽子、中性子、光子などを人為的に叩きこんで別な元素に変える事によってである。
これを「核種変換」と言う。

独立行政法人・日本原子力研究開発機構では、中性子を放射性廃棄物の原子核内に打ち込む事で、原子核崩壊を早めて安全な別の元素に変える研究をしている。

http://nsed.jaea.go.jp/ndre/ndre3/trans/src/main.html

独立行政法人・理化学研究所では粒子加速器を使って放射性元素を、放射線を出さない安定した元素に変換する事を研究している。

http://www.riken.jp/r-world/info/release/news/2009/nov/frol_02.html

そもそも放射性元素はなぜ存在するのか?
原発事故の直後、放射性ヨウ素が騒ぎになったが、同時に放射性でないヨウ素を飲んでおけば大丈夫とも言われた。
同じヨウ素なのになぜ放射性とそうでない安全な物があるのか?

ヨウ素は原子番号53の元素である。
自然界に普通に存在して人間にとって必須栄養素であるヨウ素は「質量数」が127の物だ。
これに対して原発事故で騒ぎを起こした放射性ヨウ素は質量数が131の物である。だが原子番号は同じく53である。

どちらもヨウ素には違いなく、化学的な性質は全く同じ。では何が違うのかと言うと、原子核の中の陽子と中性子のバランスが違うのだ。
原子番号は原子核の中にある陽子の数。質量数というのは原子核の中の陽子と中性子の合計の数。

だから放射性でないヨウ素の原子核は53個の陽子と74個の中性子から出来ている。
放射性ヨウ素は中性子の数が78個。
つまり中性子の数が多すぎるわけだ。
自然というのはよく出来ているもので、原子核の中の陽子か中性子の数が多すぎてバランスが悪い原子は、自分でその数を調整しようとする。

放射性ヨウ素の場合、原子核内部の中性子が一個、電子とニュートリノという素粒子を吐き出して陽子に変身する。
この結果原子番号が一つ上がってキセノンという元素に変身する。質量数は131のままだが、最終的にはキセノン131はもう放射線を出さない安定元素になる。
この過程で放射性ヨウ素から吐き出される電子を別名ベータ線と呼び、これは放射線の一種である。これが当たると人体に害があるのだ。

今騒ぎになっている放射性のセシウム137も放射線を吐き出して原子番号が一つ上のバリウムに変身して安定する。
放射性のストロンチウム90も同じような過程を経て原子番号が一つ上のイットリウムという元素に変わって安定する。

ウランより原子番号が小さく、かつ原子核内の陽子の数が多すぎる場合は陽子2個中性子2個を1セットで吐き出す。これはヘリウムの原子核で、これを放射線としては「アルファ線」と呼ぶ。
ウランより原子番号が大きな物が原子核内部の陽子、中性子の数のバランスが悪いと、もっと大きな塊を吐き出して安定になろうとする。
これがいわゆる「核分裂」であり、この時発生する膨大な熱を利用するのが原子力発電だ。

さて放射性廃棄物は放射性元素の塊だ。だがなぜ放射線を出すのかと言えば、原子核内部に陽子か中性子が過剰なので、これを吐き出して自分からもっと安定した元素に変身したがっている、という事だ。

ならば人工的に、陽子なり中性子なりをその原子核の中に叩きこんでやれば、無害な元素に変身させてやれる、という理屈が成り立つ。
上記の研究機関が目指しているのは、これを何とか実現出来ないか?というわけなのである。

粒子加速器は電荷を持つ素粒子を超電導リニアと同じ原理でスピードを上げてやり、標的である原子核の中に叩きこむ装置だ。
もし中性子過剰だから放射性である元素なら陽子を打ち込んでやれば安全な、あるいはより放射能が弱い元素に変身させられるかもしれない。

中性子は電荷がないので粒子加速器では加速できない。そこで「高速炉」と呼ばれる原子炉を照射源に使って中性子を原子核の中に打ち込んでやるという方法が研究されている。
今は「もんじゅ」の評判は悪いが、あれは「高速炉」と「増殖炉」の機能を併せ持つ原子炉なので、プルサーマルを止めても、こういう利用法もあり得る。

ただしこれらはまだ、あくまで「理論的研究」の段階であり、実用化出来るとしても数十年は先の事だろう。
また多くの粒子加速器をもっと安いコストで動かせるように出来なければならないなど課題も多い。

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2011/07/24 07:25
インチキ商法は本当に多いです。
科学的根拠のない民間療法に至っては、かぞえきれません。
なってしまったことは、元には戻らない。
ならば、せめて先へ進んでいく試金石になってくれれば、と思ってます。
実際、土壌から放射性物質を取り除く方法はさまざま試されていますが、
それも、実験機や試作品を福島に持ってくれば、簡単に実用性を検証できるから
有効なものから、どんどん現場に取り入れられてます。
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2011/07/24 00:41
今回の福島の事故を機に、世界規模で研究が進むのでしょうし、
放射性物質が人体に与える影響も、より詳細に解明されていくのでしょう。
知識を深めた未来世代には、このような悪徳商品が笑いの種になるでしょう。
やりきれない思いも強いですが、科学はこうして進歩して行くのですよね。
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2011/07/23 23:53
この理屈を突き詰めて核兵器を無害化できたら世界地図が変わりそうですけどね。
まあ、実験室と開放空間を一緒にしても仕方ないのですが。

「不安定な物質は安定した状態になろうとする」というのは昔授業で聞いたことがあったはずですが、今回のご説明の方がわかりやすかったです。

オレオレ詐欺といい、弱者の不安につけ込む人たちが多いのは残念なことです。
「だまされるほうが悪い」と言ってしまえばそれまでですが、潜在的な不安感というのは時として理屈を飛び越えますからね。
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2011/07/23 22:38
勉強になります。。^^;

とりあえずそういう事ができるようになるまで、我慢できなかったんでしょうかな??

酷すぎます、、電気と原発を巡る亡者が、、、、
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2011/07/23 22:03
今回も興味深い話題を感謝^w^

放射性物質無害化商品……騙される人も悪い気がしますけどねぇ……
なんというか、何某さんの言葉で「無知は罪なり」ってあるじゃないですか^^;
そんな気がしますね。。。
やはり情報の選択能力というものは大切だと思います(´・ω・`)




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