Nicotto Town



十代のための外為歴史

震災で日本経済が大被害を受けたにも関わらず円高傾向が止まらない。
政府も企業も大騒ぎしているが、若い人には正直何の話だかよく分からないのではないだろうか。

ある国が他の国と貿易をすると、それぞれのお金の価値の交換比率をどう決めるかという問題が必ず起きる。
日本とアメリカでお金をやり取りする場合、1ドルが何円になるか、これが「外国為替相場」であり、例えば1ドル=80円となる数字を「外為レート」などと呼ぶ。
どこの国とでも同じことが言えるのだが、ここは米ドルと日本円に話を限定しておく。

戦後、敗戦国になった日本やドイツはもちろん戦勝国である西ヨーロッパ諸国も経済力が低下し、ブレトン・ウッズ協定という国際的なルールの下で、米ドルを西側諸国の基軸通貨にする事で国際貿易を安定させた。

金1オンスが米ドルで35ドルに決められ、他の国は自国の保有する金の量に応じて自国通貨と米ドルの外為レートを決定した。
この計算方法で日本は1ドル=360円に固定した。
だからこの時代には1米ドルは常に360円であり、今のようにこの数字が毎日変わったりはしなかった。

だがブレトン・ウッズ体制は、どこかの国が米ドルを持ってきて「金に換えてくれ」と言ったらアメリカが無条件でそれに応じる事を前提にしていた。
1960年代はかつての西側経済大国が軒並み疲弊していて、アメリカのライバルであるソ連は別の経済圏を構成していたから、アメリカはいくらでも金との交換に応じる事が出来た。

しかしアメリカ一国で西側諸国全部のお金の面倒を見るというやり方は、やはりいつまでもは続かない。
特に日本とドイツが奇跡的な経済成長を遂げてアメリカへの輸出が増えてくると、アメリカもその負担に耐え切れなくなった。

ついに1971年、アメリカの大統領ニクソンが「もうドルと金の交換には応じない」と宣言してしまい、ブレトン・ウッズ体制は崩壊してしまう。
それじゃどうするのか?と話し合った結果、1973年から「変動相場制」というのが始まった。

これは例えば米ドルと日本円の場合、お互いに必要としている金額の比率で交換レートを決める事にしようという事だ。
だから1ドルを日本円に交換するといくらになるかが毎日変わるようになる。
現在でも基本的にはこの仕組みが続けられていて、だから1ドルが何円になるかが毎日変わるわけだ。

さてこの変更、当時の日本企業にとっては一大事だった。1ドル=360円というレートは多分にアメリカが貧しい敗戦国日本を助けてやるため、という意味合いがあった。
変動相場制に変わった結果、日米の外為レートは1ドル=260円から300円になった。
この右側の数字が小さくなるほど「円高」になるわけだ。

当時の日本経済はアメリカへの輸出で成り立っていた。
ニクソン・ショック以前は、日本企業がアメリカで何かを売って1ドル受け取って、それを日本に持ってきて円に交換すると360円の収入になる。
しかし変動相場制で例えば1ドル=260円で同じことをやると、円での収入は100円減ってしまう。全く同じ製品を同じ1ドルで、アメリカで売ったとしてもである。

さらに日本の経済力が高くなるにつれてこの1ドル=何円の右側の数字はどんどん小さくなっていく。つまり日本が豊かになればなるほど「円高」が進んでいく。
これが変動相場制の特徴である。
1980年代まで日本経済は成長を続けたので、1985年ごろには1ドル=200円から250円まで円高が進んだ。

だがアメリカにとってはこれでも負担だった。アメリカにとって一番頭が痛かったのは戦後復活した日本とドイツからの輸入の急増だった。
この当時はまだソ連が健在で世界は「冷戦時代」であった。アメリカはその軍事力で日本や西ヨーロッパを共産主義の脅威から守っていたので、アメリカ国内では不公平感が強くなっていた。

「アメリカのおかげでソ連に侵略される心配しなくて済んでいるのに、そのアメリカで大儲けしてアメリカの会社を苦しめているとは何だ」という意見を抑えきれなくなり、当時の先進国がアメリカのプラザ・ホテルという所に集まって話合った結果、日本を含む西側先進国の対米ドルレートを高くしようという事になった。
これを「プラザ合意」と呼ぶが、当時は秘密協定だった。

この結果1ドル=250円ぐらいだったレートがわずか1年ぐらいで1ドル=150円前後にまでなった。つまりさらに「円高」になったわけだ。
日本の輸出企業はアメリカで物を売って得るお金が円ベースではさらに減る。
さらにこの頃には、アメリカ以外のどこの国との貿易でも支払いは米ドルで、というのが国際的な慣行になっていて、日本はどこの国と貿易してもこの円高に影響される事になった。

この円高がさらに進んで今1ドル=80円を切るまでになっていて、輸出で儲けてきた企業は真っ青になっている、というわけである。

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2011/08/07 04:07
最近の円高が止まりませんね。日銀が介入して、何とか77円で食い止めてる感じですね。

ホントアメリカがくしゃみをしたら、日本は、風邪をひくですよ。
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2011/07/28 00:51
輸出で、純粋に、日本は儲けているのか?
と言われると、意外とそうでもないんだね。
企業が儲けるのは、本当だけど、大体の場合、ドル減らしと言って、アメリカに国家がカネを返す場合が多い。
だから、ドルが上がると、国の借金が増えるんだね。
得してるつもりで、実は損してるんだ・・・
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2011/07/27 21:45
輸入と海外旅行には強くなるということでもあるのでしょうけど。
どちらかの国がバンザイしてしまうと、また大きく変わるかもしれません。
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2011/07/27 07:06
これ、アメリカの「わざと」…自演ですよね?
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2011/07/27 00:15
円高を逆手にとってなんとかならないものなんでしょうか。
経済には本当に疎いので、ちんぷんかんぷんです。
強い円って言いますが、自国の首を絞めてますよね。
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2011/07/26 23:14
円高困りますよね~……
なんかおばちゃんたちが、それを利用して海外旅行に行っているのを見ると
複雑な思いというか……

管さんも頼りになりそうにありませんし、これから日本は、
どうやってこの震災や不況という転換期に向かい合っていくのでしょうか……?
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2011/07/26 18:35
 恐慌がおき、ただでさえ大変な中、震災が起きなんとか財源を確保したい日本やその企業。
なのに円高で輸出は不調。
しかも、原発の影響で日本の製品はさらに敬遠され…。
 本当に悪いことが重なっていますね。(後半は人災ですが。)
これからは日本国内の需要と供給でどう経済を回していくかを考えなくてはいけないのでしょうね。
 それでこの危機を脱せるかどうかはそれこそ十代の私にはわかりませんが、
不知詠人さんのこのブログを見てそう思いました。

 偉そうに失礼しましたm(__)m




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