Nicotto Town



新修正資本主義を目指す時代

野田首相は松下政経塾の出身という事で期待していたのだが、これまでの言動を見る限りでは、経済オンチとしか見えない。
世界情勢、歴史観に関しても時代感覚がずれているように見える。
言っている事自体は正しいのだが、「どうやって?」が抜けていて、このままでは絵に描いた餅で終わってしまいかねない。

首相の持論に「分厚い中間層」の復活というのがある。
日本は1950年代に敗戦後の経済復活が始まり、60年代に黄金期を迎え、その後成長率は大幅に低下したが1990年代初頭に「バブル経済」が崩壊するまでおおむね順調に経済成長を続けた。
この時期は所得水準が中ぐらいの国民が多く、かつそれなりの豊かさを享受していた。

かつては日本のそういう状況を「一億総中流」などと言った。
首相の言う「分厚い中間層」というのはこの時期の、主にサラリーマン世帯の事である。

バブル崩壊後深刻な不況になったが、これは行き過ぎたブームの是正という側面が強く、ある意味当然の結果だった。
だが1997年、経済の回復状況を見誤った自民党政権が消費税を3%から5%に上げた。
これが「不況下の増税」という最悪のシナリオになってしまい、これ以降日本はいつ終わるとも知れない泥沼の長期不況に突入し未だに抜け出せないでいる。

この時期企業は大量リストラ、新卒採用の抑制、非正規雇用の増加に走り、日本の中間層は一部の勝ち組と大多数の低所得層に二極分解した。
首相は日本を1990年以前の状態に戻そうと言っているわけだが、これは不可能である。

そもそも一億総中流という現象は、企業が社会保障のかなりの部分を肩代わりしたから可能だった。
そして企業にそうさせたのは政府の政策ではない。
それは「共産主義の脅威」だった。

戦後からバブル崩壊までの時期は冷戦時代と一致し、庶民をあまりにも困窮させると社会主義革命が起こり日本が共産主義国家になってしまうという可能性があった。
現実に起こり得たかどうかはともかく、終身雇用、手厚い社会保障で庶民を保護しないとそうなる危険性を特に企業は考えざるを得なかった。

マルクスの理論では資本主義は弱肉強食が本質であり、資本主義国家では国民は一部の富裕層と大多数の貧困階級に二極分解するとされていた。
そこで日本や西欧諸国では社会保障を手厚くする事で、国民の共産主義への傾倒を防ごうとした。
その金銭的負担を企業も積極的に受け入れた。

これを当時の左翼勢力は「修正資本主義」と呼んだ。
この場合の「修正」は「うわべを取り繕った」という悪い意味だが、結果的には多くの資本主義先進国では、マルクスの言うような貧困層の増大は避けられた。

だがソ連が1991年に崩壊し、共産主義陣営が解体されるともう「共産主義の脅威」は存在しなくなった。少なくとも無視出来る程度になった。
そうなると企業は社会保障の肩代わりを引き受ける理由がなくなる。

皮肉な事だが、共産主義の脅威が去った後になって、マルクスが言っていた資本主義の弱肉強食の本質が露呈し始めたわけだ。
日本も例外ではなく、2000年代に小泉政権が「新自由主義」を採用し、ある程度企業の弱肉強食性、経済格差の容認を行った。
いわゆる「小泉改革」である。

野田首相の言う「ぶ厚い中間層」は、だから修正資本主義という歴史的社会状況の中でこそ可能だったのであり、資本主義に対する「対立勢力」が存在しない今の時代には、企業をいくら儲けさせても実現しない。

企業にしてみれば、人を雇うなら正社員としてが当然、手厚い社会保障のコストも肩代わりして当然、というのは共産主義の脅威から自らを守るためであった。
その脅威が存在しなくなった時代に、そんなコストを負担する理由はない。
必然的に労働者の待遇は低下する。
あるいは正社員の既得権を守るため、非正規雇用の割合を増やして使い捨てにする、という方向に走る。

だが企業の論理からすれば、これは当然の行動なのであり、日本政府が法律や政策で冷戦時代並みのコスト負担を強制するなら、海外へ移転してしまえばいい。
この場合日本の産業の空洞化はますます進む。

野田首相がTPP参加に熱心なのは、貿易自由化で製造業を儲けさせてやれば再び企業が修正資本主義のスタンスに戻ってくれると期待しているからだろうか?
もしそうだとしたら、それは楽観的過ぎる。

日本が再び「ぶ厚い中間層」の国に戻るためには、資本主義の弱肉強食性を適度に抑制できる何らかの「対立概念」が必要だ。
社会主義、共産主義がその対立概念たり得ないのはもう明らかだ。

それに代わる新しい時代の「対立概念」に何を持ってきて、具体的にどういう政策を以って修正資本主義の時代の状況を再現するのか?
それを明示しないまま、「ぶ厚い中間層の復活」をいくら声高に叫んだところで、それは絵に描いた餅で終わってしまうだろう。

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2011/10/20 12:54
小泉氏がどうしてあれだけの支持率を維持できたのか 不思議でしょうがない
アメリカからはじまった格差社会反対運動 世界にひろがっているけど
日本ではどうなのかなあ
日本は飼いならされた羊の群れみたいだから
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2011/10/20 10:04
日韓金融スワップ問題、野田総理、一挙に3倍以上にしてしまった。
昨日、ネットでは、速報まであたが、テレビでは一言も触れてない
被災地支援の為の資金作りに税金を上げる画策をしてるのに
その半分を韓国へ出してしまって、本当に大丈夫なのか? 
心配です。
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2011/10/18 08:10
経済の立て直しができるかが問題ですな。
赤字国債ばかり発行していたんでは、経済破綻なりかねない。
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2011/10/17 20:05
そもそもTPPに参加したからといって輸出産業が期待通り売り上げられる保障はどこにもないわけで。
下手したら日本の需要を食い物にされて終わりということになりかねません。

韓国がどうのという意見もありますが、韓国は仮に輸出が倍になったとしても利益が大多数の国民に還元されない仕組みになっているし、部品を日本に依存しているため、日本が間接的に利益を享受するという関係になっている。
甘く見てはいけないが、必要以上に脅威を感じて「韓国に続け」という必要はないのかも。

中間層が多いというのは一種の社会主義状態。
つまり、共産主義を唱えながら超特権階級を作り出していた共産主義国家よりよほど共産主義に近いという矛盾が生じていたわけで。
日本が資本主義を捨てましょうというなら別ですが、そうでないなら実質共産主義へと誘導する政策に「持てる者たち」が従わないのは当然ではなかろうかと。

物騒な話ですが、戦争か革命でもない限り今の既得権を手放すなんてことはないんじゃないですかね。
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2011/10/17 16:56
ですね、、
TPP はあんまりいいことないようにおもいます。。

止めたほうが、いいと思いますよ。




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