Nicotto Town



貿易摩擦の歴史

TPPが日本の農業を滅ぼすとか喧伝している人が多い。
また「アメリカに食い物にされる事は確実」という理由で反対する人も多い。
そこでAPECでハワイに出発する前の野田総理の言い方が「交渉参加に向けて参加国との協議に入る」という禅問答のような言い方になり、民主党内ですら「参加の表明だ」「いや参加しないという事だ」と180度逆の解釈が可能になっている。

馬鹿馬鹿しいにも程がある。
参加する気がないならTPP参加国と「協議」などする必要もないわけで、オバマ大統領にもTPPに関しては何も言わないで帰ってくればいいだけだ。
アメリカ大統領との会談でTPPに言及した事自体、野田総理は参加したがっている事の証拠で、言葉の解釈なんて何の意味もない。

そもそも日本は貿易黒字国なのだから、貿易交渉に参加を誘われるという事自体が「おまえんとこの市場を少しよこせよ」と言う話のはずだ。
くれてやれる物はくれてやり、日本の方の見返りは何か?
こういう議論を政府や国会議員が出来ないから、食い物にされるのだ。

第二次世界大戦後、米国と初めて貿易摩擦を経験したのは多分、新潟県燕市ではないかと思う。
今でも金属洋食器の日本最大の産地だが、戦後まもなくアメリカに大量に洋食器を輸出して栄えた。
が、自国の洋食器メーカーが大打撃を受けたアメリカ政府が輸入差し止めをちらつかせ、燕市からも陳情団が訪米した結果、「輸出の自主規制」という事に落ち着いた。

当時はまだ日本は占領下か経済援助を受けている時代で、アメリカの言う事は絶対だった。
だから「陳情」つまり頭を下げて「お願い」に行かなければならなかった。

その後1950年代から60年代にかけて繊維製品、70年代には鉄鋼、テレビ、80年代には自動車、90年代には金融サービスの分野でアメリカが日本に対して大幅な貿易赤字になった事が問題となり、その都度日本とアメリカの間で「貿易摩擦」「通商摩擦」と呼ばれる深刻ないざこざが起きた。

1980年代後半から1996年にかけて起きた日米のスパコンを巡る貿易摩擦は、アメリカからの完全な言い掛かりであって、この結果NEC以外はスパコン事業からの撤退に追い込まれた。

1996年頃からはアメリカが「アメリカの金融会社が日本に進出出来ないのは日本の金融市場が閉鎖的なせいだ。非関税障壁だ」と言いだした。
そこで日本は2001年にかけていわゆる「金融ビッグバン」と呼ばれる国内金融市場の大改造を行い、銀行、証券、投資信託などの事業を自由化した。

他にも1991年、アメリカの圧力で日本は牛肉とオレンジの輸入を自由化した。
だが現在日本で売れている輸入牛肉の半分近くはオーストラリア産である。
アメリカ産牛肉が不振なのは近年は狂牛病の問題のせいだが、アメリカの圧力で市場を開放したからと言って、アメリカの産品が日本を席巻するとは限らない。

このように、日本は戦後一貫してアメリカから「アンフェア・トレード・パートナー」、つまりあの手この手で自国の市場を閉ざして一方的に貿易で儲けているずるい国、という言い掛かりをつけられては自由化に応じてきた長い歴史がある。

TPPでこれがまた繰り返されるのではないか、というのが反対派の論拠だが、これは「日本人はそんなに情けない国民ですから」と自分で言っているのに等しい。

アメリカのそういう強引なやり方には他の国も業を煮やしていて、世界貿易機関(WTO)の前身であるGATTという国際機関の下でほぼ世界中の国が参加して「多国間」での貿易自由化協定を作った。
1986年から95年までのマラソン交渉で、「ウルグァイ・ラウンド」と呼ばれる。
世界共通ルールを作ってアメリカを牽制する狙いがあったわけだ。

だが、世界最大の貿易黒字国であった日本が農産物の自由化を骨抜きにしてしまい、WTOに改組した後に仕切り直しで始まった「ドーハ・ラウンド」という交渉は事実上決裂してしまった。

ちなみに日本はウルグァイ・ラウンドでそれまでの米の輸入の「法律での原則禁止」をやめる事を約束した。
その代り現在700%を優に超える関税をかける事を認めさせた。
これがいわゆる「米の関税化」で、事実上日本に米を輸出する事は不可能にした。

この結果、日本国内の農業改革が掛け声だけで全然進まなくなり、現在日本全国の耕作放棄地の面積を合計すると、埼玉県全土の面積に匹敵するという有様になっている。
そしてWTO主導による貿易自由化がとん挫しているため。アメリカが目をつけたのがTPPだったわけである。

TPPが日本農業を滅ぼすとしても、それは日本の自業自得である。
金融ビッグバンにしても、日本でのガン保険などの疾病保険や投資信託などの運営市場は軒並み欧米系の外資にかっさらわれたが、それは日本の金融サービス企業がだらしがなかっただけだ。

日本人全体の「子分体質」を自ら変える方が先決ではないのか?

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2011/11/19 18:07
それは、そうは思うんですが、
全て「アメリカルール」てのは、不利すぎます。
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2011/11/19 11:29
深いですねぇ・・・
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2011/11/17 23:55
政治家も官僚も自分達が直接ダメージを受けない限り
アメリカ追従の姿勢は変わりませんね。
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2011/11/16 12:21
戦後と呼ばれる時代は長いこと 貿易赤字だったけど 日本政府はなにも言わなかった
黒字になると アメリカは 脅迫に近い言葉でせまってきた
日本政府は アメリカの言いなり
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2011/11/16 07:51
力なき者は国際社会では沈黙を強いられる。
ということですかね。

防衛を他国に任せて、その国との交渉を優位にというのはどだい無理な話です。
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2011/11/15 20:26
江戸時代と変わってないってことですかね?

不平等条約、、ばかりですね




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