原発事故の詳細が明らかになってきたが、当時の首相・菅直人氏の暴走ぶりが露わになっている。
そもそもなぜ福島第一原発に首相が直々に行ったのか？が不思議がられていた。
今回の政府の中間報告が細部まで正しいなら、やはり民主党を政権につけたのは間違いだったと言わざるを得ない。

最初の水素爆発の後、福島第一原発所長の吉田昌郎氏が「事故収束作業に不可欠でない所員の退去」を東電本店に要請したのだが、菅首相がこれを「全員退去」だと思い込んで「原発から逃げようとしている」と勝手に信じ込んだ。

そこでわざわざヘリで原発に乗り込み、吉田所長を含む現場関係者に「逃げられると思うな！」とまくし立てて来た。
それだけのためにわざわざ原発まで行った事になる。
その後東電の技術者を一切信用しなくなり、出身の東工大のOBをかき集めるという事をしていたので、政府内部の連携が麻痺したわけだ。

１号機への海水注入も誰が最初に吉田所長に開始を命じたのかが謎だったが、何の事はない、菅政権の経済産業大臣だった海江田氏であった。
とっくに海水注入が始まっていたのに、それを海江田氏が菅首相に伝える事ができず、海水は是か非かという不毛な論議をしていた。

ついでに最近聞いた話なのだが、菅氏が小沢一郎氏を敵視するようになった原因は、鳩山政権発足直後の予算編成が原因だったらしい。
九月に発足した政権なので、１２月末までに編成を終えなければならない翌年度の予算案が間に合うかどうか心配されていた。

案の定年末までに間に合わない危険が高くなり、小沢氏が民主党内部で予算要求の優先順位をつけた書面を作り、それを持って首相官邸に乗り込んだ。
そして当時の鳩山首相にそれを突き付けて、かろうじて予算編成を間に合わせた。

だから小沢氏のやった事は、あてつけだったとしても、鳩山氏に対するあてつけだったはずだ。
だが、副首相兼国家戦略担当大臣であった菅氏は、これを自分に対する攻撃だと思い込んでしまったらしい。

以後菅氏は小沢氏を徹底的に敵視するようになったそうだ。
自分が首相になって以後は、小沢氏が自分を失脚させて総理の椅子を狙っているとでも思いこんでいたのだろう。
だが、小沢氏は周りの民主党のベテランからは「自分は首相になろうとしない」事を批判されていた人物で、菅氏の独り相撲だった可能性が高い。

政治家というのは確かに結果責任だが、結果の良しあしを割り引いても、菅氏を首相にするべきではなかった。
菅氏は常に頭の中で「戦うべき敵」をでっち上げ、その妄想に基づいて自分の「味方と敵」に周りを二分し、「味方」の言う事は検証もせずに鵜呑みにする。そして一度敵だと思い込んだ人物の言う事は一切耳を貸さないし信じない。

原発に乗り込んだ時の言動にもろにそれが表れている。
リーダーの最も重要な資質は「信頼できる人物を見抜いて、任せるべき所は任せる」という事だ。
ありもしない「敵」や「権力闘争」を妄想ででっち上げて、そのシナリオに基づいて全てを進める。
これが菅政権の迷走の最大の原因だったのではないか？

だから、やはり民主党に政権を取らせたのは間違いであったと思う。
前回の総選挙で民主党に投票した国民にもその結果責任はある。
しかし、「やってみて失敗して学ぶ」というのが、民主主義の避けられないコストであり、あのまま自民党を政権につけていたらマシだったか？はこれも疑問だ。

多くの有権者は「一度試しに民主党にやらせてみるか」と考えて民主党に投票したのだろうが、結果的にそれは間違いだったと思うなら、次の選挙でまた政権を交代させればいい。
長い時間はかかるが、それが民主主義という物である。